一章 十一話 出てしまった言葉
十一話目です。
今回は少し長めかもしれません。
それではよろしくお願いいたします。
「ハァ……ハァ……」
アランは苦しんでいた。
特訓が始まってから今まで、フレアの攻撃が続く中アランは攻撃を躱し続けてはいるが・・・それだけだった。
躱すだけでフレアに近づくことが全くできていない。本来この特訓は魔法攻撃を躱して接近戦に持ち込むためのものだ。ただ躱しているだけでは特訓の意味がない。
集中しすぎてアランは気づいていないが、特訓開始から既に3時間以上が経過している。それだけの間、魔法を使い続けているフレアもそうだが、動きを止めずに攻撃を躱し続けているアランも大概だ。しかしそれに気づいているのはアランと相対しているフレアだけだ。
(こんなんじゃダメだ……もっと集中しろ!こうなったら無理にでも近づいていくしかない)
火球が飛び交う中、アランが無理やりフレアに近づいていく、今まで躱すことができていた火球がアランに当たり始める。
「ぐぅ・・・うぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょっ……アラン!?」
今まで躱すことで精一杯だった火球だ。一つの火球が命中すると連鎖的に火球がアランに命中し、アランは後方に思いっきり吹っ飛ばされた。フレアは悲鳴に似た声を出しながら駆け寄ってくる。
「いきなりどうしたの?いままでうまく火球を躱せていたのに、急に連続で被弾したわよ?」
「・・・魔法を躱し続けているだけじゃダメなんだ・・・近づいて接近戦に持ち込まないと・・・」
「それはそうかもしれないけど……今の攻撃の当たり方、威力を抑えていなければ大怪我していたわよ?」
差し伸べられた手を取って立ち上がりながらアランが答えるが、今のフレアの言葉を聞いて耳を疑った。
(・・・威力を抑えていた?フレアのあの火球は手加減されていたものなのか?じゃあ俺は・・・手を抜いた攻撃を躱すことで精一杯だったっていうことかよ・・・)
アランはフレアが自分を気遣ってくれていたことは分かってはいた。もちろんアランに怪我をさせないために威力を抑えて魔法を使っていたことも頭では分かっている……分かってはいるのだ。
しかし今のアランにとってフレアの発した言葉は、今の今まで手加減された攻撃を躱すことしか出来なかったという事実を突きつけられたようで絶望に近いものを感じた。
「アラン……?」
動きを止めたアランを心配そうにフレアが覗き込む。そんなフレアの顔を見ていたアランの心に黒いものがこみ上げてくる。それを抑え込もうとアランはしたが、出来ずに黒いものは急速に心を支配していく。
そしてそれが・・・その感情がアランの口から言葉としてででしまった。
「何で手を抜いたりしたんだ!!!」
・・・それは一生懸命協力してくれているフレアに対して決して言ってはいけない言葉だった。
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