いせかいらんにんぐ!
気が付けば、俺は草原に立っていた。あの人は街に行くようにと言われたのだが、辺りを見回しても森と草原があるだけで、特にそれといったものはない。仕方なく、ズボンの右ポケットを漁ってみる。
「お、っと……あったあった、これを頼りにしろというんですね」
いつの間にか入っていた四つ折りにされた地図を広げてみると、おそらく今いるであろう王国の全体地図が描かれていた。きちんと「バギルタ」とも書いてある。じゃあ早速街に向かいますか……
……ん? ちょっと待て! 現在位置が全く分からないじゃねえか!
「なんっなんだよ使えねえ地図寄越すなよ! 方角すら知らないのに周りは全部草原と森、どっちに行ったらいいのか分かんねえよ!」
ニューライフが始まったと思った瞬間、草原にて迷子になった男がここにいます、助けてください……と言ったところで助けてくれる人がいるわけないので、勘だけで街へと行くことにした。
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一時間後――
「……なんか、ヤバそうな馬がいるんですが」
歩きっぱなしで腹が減った俺は森に食材がないか探しに来たのだが、少し進んだところで二足歩行の筋肉質な馬を発見してしまった。とりあえず引き返した方がいいような気がするんだけど。
「ブモッモッモ……モ?」
「――ッ!!」
馬と目が合っていしまいました。ヤバい、絶対にヤバい……!
「ブモオォォォォォ!!!」
「ほら来たやっぱり! このままじゃマズい、逃げろ俺!!」
両者走り出したのは同時だろうか、馬のスピードは俺と同じくらいだ。なら、このまま走れば逃げ切れる!
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馬から逃げ出して十分が経過したのだけども、そろそろ息が切れる……!
一方の馬も少し疲れているようだが、それでもなお、距離の差は開かない。むしろ縮まってきている気がするんですけど。
「――ッ! コイツ、額の色がすっげぇ赤くなってるんですけど!!!!」
「ブモッ! ブモオオォォォォォォ!!」
「ちょっマジでどうすればいいんだよ! …………!!!」
絶体絶命のピンチだが、どうやら女神様とやらは俺に味方してくれたみたいだった。
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オレは今日もレベル上げのために街の外に出ている。順調に討伐できているのだが、今、向こうから人の声が聞こえてきた。
「すみませーん! そこの人ー! バギルタってどの方角にあるんですかー!!」
多分オレに聞いているんだろう、急いでるようなので手短に伝えた。
「バギルタなら俺の後ろをまっすぐ行けばあるぞ。距離もそれほど遠くないから歩いて10分ってところだな」
少し前にやってきたバギルタの街へと指をさして教えてあげた。でも、なぜあの人はあんなに急いでいるのだろうか?
「ありがとうございます! お礼にコイツあげます! どうかお元気で!」
「ああ、ありがとう。……って、ちょっと待て! どおりで急いでいるわけだ! こんなお礼があってたまるか!!」
最後の言葉を言った頃には、道案内してあげた人はすでにはるか後ろに走り去っていた。
「ブモオオォォォォォ!!!」
「チクショウ、覚えておけよあの外道! よりにもよってダッシュ中の爆弾馬なんかを押し付けやがって!」
「ブモォオオォォォ!!!!!」
「ああああああああああぁぁぁ!!!」
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たまたま出会った人に馬を押し付けた後、後ろで爆発音がしたのだが気にしない。それよりも今、俺は命の危機から脱出できたのだ。
「ようやく見えてきたぞ……あれがバギルタとやらですか……」
しばらく歩いていると、外壁に囲まれた街が見えてきた。
「まずギルドを探して登録、その後に腹を満たそう。いや、待てよ……さすがに金はいるよな? となると簡単なクエストを受けるのが先か……」
街に入ってからの計画を立て終えた俺は、街の入り口となっている大門をくぐり抜ける。




