プロローグ
「やっとここまできたな…」
多くの犠牲、多くの援助を受けて俺、メディカルは魔王城に進行し玉座の間まできた。
俺のパーティーメンバー達はそれぞれ因縁の好敵手の相手をしていることだろう。だが不安は一片もない。各々が最高位の戦士・魔法使い・レンジャー…それに類する者たちだ。さらに言えば俺と共に数多くの苦難を乗り越えてきた戦友だ。心配することはなにもない。
「だから俺は…お前を討ち滅ぼし世界に平和をもたらそう!」
俺は身の丈を優に越える玉座の間の扉を開けてそう宣言した。
『勇者よ…よく来たな。この日が来ることをどんなに待ち望んでいたことか!』
玉座の間…その階段状の最高部に位置する玉座から魔王…マモンが俺に向かい話しかけてくる。
『勇者よ!人族の中で最高の武勇を誇るメディカルよ!我と遊ぼうではないか!!』
猛烈な魔力を可視化させながら最凶・最悪の魔王は俺にニタニタした笑いをかけてくる。
(あぁ…だりぃ…)
(こいつなら俺の相手に相応しいかと思っていたのに…とんだ期待外れだ)
……
………
俺はメディカル。なんでもない、どうと言うこともない、特別でもない農民の二男としてこの世に生を受けた。
両親は代々農民として田畑を耕し、秋には収穫祭、冬には次期の豊作を祈る神官や巫女の真似事として村の祭事に顔を出す程度のどこにでもいる人間だ。
(まぁ、その役職だって持ち回りで担当するだけなんだが…)
そう言う俺は特に優れた才能を持つわけでもない兄貴の弟して生まれた。
(はずだったんだけどなぁ…)
俺は代々農民の家系だ。武勇に優れた勇者の家系でもないし、魔術に優れた賢者の家系でもない。
(はずだったんだけどなぁ…)
なにをどう間違ったのか、俺は英雄として産まれたらしい。
5歳の時、親父の手伝いをしようと鍬を振り下ろした畑は真っ二つに割れてしまったし、兄貴が森で怪我をして帰ってきたから
「痛いの痛いの飛んでいけー!」
なんて言いながら傷口を押さえたら完治してしまった。
…いや、流石に傷口から白いモノが見えている所を押さえたもんだから兄貴は泣き叫んでいたけど…
8歳の時に村がゴブリンの大群に襲われた。
「あっちいって!」
適当に子供が言った言葉だぞ。なにをどう間違ったのか世界はそれを実行してしまって…あとに残ったのは無傷のゴブリン達の死骸の山だった。
あとは想像に難なくないだろ?俺は「村の守護神だ!」とか「バケモノ!」だとか…まぁ、普通にある話で村に居られなくなった。
そりゃ8歳の子供が死骸の山作るんだからあたりまえだろ。
だが、俺はそれでもいいと思ったんだ。
家族の危ないところが救えたんだからな。
そんなこともあって10歳の春に俺は村を出ることになった。
俺の村では10歳で半人前と認められるんだが、俺の場合は前科もあって一人前扱いの例外になったんだ。
…で、それから10年。いろんなアクシデントとフラグを回収しつつ、経験を積んで…。
「今から魔王!お前を討ち滅ぼす!!」