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世界で2番目の強者  作者: 麗奈@Word
霊山の国=ファランディオ=
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第四十七話


封印の解かれたウィルは雄叫びを上げながら暴れる。

それを黒龍の大きな手が押さえつけて動きを封じ、

その間に海砡がウィルの頭に小さな蛇の姿で巻きついて精神の中に潜り込む。

傍らでは子犬姿の炎砡がウィルの頬に少しだけ触れて魔力が尽きないように補充し続けていた。


俺はただ見守る事しか出来ない。

ただ周りの気配に気を配り、人の接近が無いか警戒するだけ。


そんな状態が何時間も続き、

明るかったはずの空も段々と赤くなり、そして暗くなる。


「ロドリー。」


ウィルに魔力を補充し続ける炎砡がポツリと俺の名を呼んだ。


「あたりの死臭が強くて正確な事は言えぬ。

だが、我の耳には何かがこちらに近づいている音が聞こえる。」


俺は黙って頷いて刀を鞘から抜いた。

すらりと美しい刀身は月明かりに照らされて妖艶に輝く。


辺りに響くウィルの雄たけび。

風に吹かれて転がる枯葉。


それらを全て意識の外へ投げ捨て、

眼に見える物、かき消されそうになっている微かな音、

それらに全神経を集中させる。


ザリッ


僅かに聞こえた土を踏みしめる音に俺は即座に反応した。

足の魔石に流した魔力で一瞬で音の方向に移動する。

移動した先で俺は躊躇なく刀を振り下ろす。


何故、躊躇なく刀を振り下ろしたか。

答えは簡単。


クァバリだからだ。


本来、霊山であるファランディオは登山口より先にクァバリは出ない。

だがそれは登山口が国によって管理され、

申請しなくては先に進めないように厳重に壁などで守られていたから。

それが今では先の戦いで破壊され機能していない。

故にファランディオ国内のクァバリは登山したい放題になっている。


「クァバリ相手は面倒だが所謂ゾンビみたいなもん。

本当に怖いのは意思のある人間の方だ。」


いまはクァバリの存在に多少助けられている。

王族が生んだ元人間と思うと心は痛くなるが、

彼らの存在がある限り、各国は夜間に人を移動させる事は無い。


夜明けまでが勝負。


俺は自分に言い聞かせてまた地を蹴って刀を振り下ろした。



**********************************



変な手紙が届いた。


その手紙を運んだクルールは手紙を私の足元に置いて窓から飛び立って行った。

拾い上げると久しぶりに見る刻印。

中に書いてある内容は些か信じ難いもの。


「あいつ、頭でも打ったのか?」


傲慢で我が儘で、けれど能力だけが高いクイーン。

そんな彼女が寄越した手紙。


※※※

フォードに現れた三人組の内、二人が龍化の力を持っていた。

捕獲しようとしたが、同じ龍化の力を持たせていたルークが殺され国外へ逃がしてしまった。

龍化の力を持っていない1人はプラルの現ナイトである。


彼らはプラルから来たと聞いている。

私はこれよりプラルへ視察として数名を送り込み現状を確認させる。


三人がフォードを出た後に向かった方角はファランディオである。

同じ内容の手紙が既にファランディオのキングへ届けてある。


万が一の事を考え、そちらにもお伝えしておく。

※※※


この手紙が来る少し前、私の元に届いた情報。


プラルのキング逝去。

第一王位継承権を持っていたリックも逝去。

第二王位継承権を持っていたリアンが即位。


タイミング的に偶然だと判断するのは難しい。

プラルで何かが起こったというのは事実であろう。


「さて、どうしたものか。」


私は蝋燭の火を手紙にうつし灰皿に捨てた。

1度だけ、見た事のあるプラルの親子を思い出す。

上位種である火龍のキング。

まだ儀を終えたばかりのリック、儀をまだ迎えても居ないリアン。


あまり能力が高いとは言えない親から生まれた子など期待は出来ない。

身内に足元をすくわれたとみるのが自然なのだろうが…。


「それでは彼らの出現が謎のままか。」


ならばなんらかの理由で現れた王族外からの能力者2名が、

プラルの王族と交戦し勝利をおさめ、

リアンがその隙をついて王座を継承。

キングとなったリアンが2名の能力者と何らかの協定を結び、助力している。

そうすればプラルのナイトが同行しているのが頷ける。


フォードのルーク。

彼もまた能力が最も低い下位の龍種。

儀を終えねばその能力が何処まで高くなるかは不明であるが故に、

人の姿で強くとも龍の姿でも強いとは限らない。

フォードのクイーンは忠誠心と武力でルークに儀を執り行ったがまさに例の如く弱い龍であった。

龍同士の戦いともなれば、負ける確率は低くは無い。

ましてや、火龍であったプラルのキングを倒した可能性のある龍なのだ…勝つ確率の方が高い。


コンコン


「入れ。」


「失礼いたします。」


扉を開けて入ってきたのは執事長のマルク。

あいも変わらず清潔感のある身なりとかっちり整えられたグレーの髪。


「ご昼食の準備が出来ました。

それと、ナイトよりお話しがあるとの事で応接間でお待ちです。

どちらをお先になされますか?」


「…。応接間に食事を運んでくれ。」


「かしこまりました。」


私は少し足早に自室を出て応接間に向かう。

扉を開ければ青みがかった暗いグレーの長髪が眼に入った。


「お待ちしておりました。キング。」


柔らかい微笑みの裏には鋭く研がれた刃のような鋭さを感じる男は、

若くして最近ナイトになった新参者。


ふと思う。


私の回りは何故かグレーの髪色をした者が多い。

私もグレー寄りの髪だが。


「食事をおとりになりながらでよろしいのですか?

あまり急ぎの要件ではありませんが…。」


「よい。話せ。」


私は紅茶に口付けてナイトの話を聞いた。




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