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世界で2番目の強者  作者: 麗奈@Word
始まりの島国=プラル=
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第十九話


「そろそろ頃合いかと思って戻ってみれば、だいぶ人数が増えたな。」


ウィルの涙が収まり始めた頃、ディアスが浴場に戻ってきた。

その中に紫翠がいる事に気が付き、メイドたちに食事の手配を命じ人払いをする。


「さて、このように直接言葉を交わすのは初めてだな。

プラルのルークを任されているディアスだ。事情はロドリーから聞いている。

一国民として、この国の闇をさらけ出してくれた事、感謝する。

おかげで彼女達を保護する事が出来た。」


「…。」


紫翠は少し表情を曇らせた。

感謝を述べられても、自身はこの国の王を殺めてしまった。

本来ならとんでもない重罪人であろう。

しかも殺すつもりなど本来は無く、改心させる事が本来の目的だった。


「紫翠と言ったか…、君は人を殺めるのは初めてか?」


「いえ、何度か祖国が襲撃を受けた際に騎士として。」


「ならば何故、そんな顔をしている?」


ディアスの言葉に意味が分からぬと眉をしかめた紫翠。

その様子を見たディアスは口元に笑みを浮かべた。


「愚王を倒したのだ。それは戦争で敵国の王を倒すのと同じ。しかも、我々はそれに感謝をしている。

まぁ…その後、暴走してこの国が壊滅させられるのかと怯えもしたがな。」


クククッと笑ったディアスは紫翠の肩を軽く叩き、場の空気を変えようと別の話題を話し出す。


「それよりも、今はリアン様が見つからん。リアン様の部屋にも行ったが居なくてな。

俺に彼女達の事を任せたのは良いが、やる事があるとしか言われず場所を聞いていなくてな…。

この広い王宮内をしらみつぶしに探すのも時間がかかる。どうしたものか。」


それを聞いた3人がとある一点方向を指さす。

紫翠、ウィル、ルージュの3人だった。


「んん?」


「龍の力を持っている者は同族の場所が分かる便利機能を持ってるんだってさ。」


便利だよなーと説明するロドリーにディアスがなるほどと頷く。

会話している父子に遠慮しがちにルージュが話しかける。


「ディアス様、リアン様の事をよろしくお願いします。

私は彼女達と用意して頂いたお部屋に待機しておりますので…。」


深々と頭を下げたルージュは人形と化した彼女達を連れてメイドの去って行った方に消えていった。

それを見届けた一行は紫翠、ウィルの後に続いて歩きだす。

歩みを進めるにつれ、ウィルの心に上手く言葉に表すことの出来ない不安がよぎる。


(こういうの、なんていうんだっけ…?…虫の知らせだっけ?)


「ウィル様、心配事ですか?」


首元にくるりと巻き付いてジッとしていたシルフィーに小声で尋ねられる。

彼女の声は幼い少女のように澄んだ声で聞いていて気持ちが和む。


「大丈夫だよ。まだちょっと悲しい気持ちが残ってるだけだと思うから。」


自分に言い聞かせるように、

きっと大丈夫だと自己暗示をかけるように、

ウィルは不安を隠すように笑って見せた。

シルフィーは「何かあれば言ってくださいね」と一言伝えて、ウィルの首元にくるりと尾を巻き付け眼を閉じた。

ふわふわで手触りの良い毛、

少し高めの体温、

彼女のおかげで首がとても心地良い感触で癒される。


(お姉ちゃんを足止めしてくれていたからまだ疲れてるだろうな…)


これ以上負担になる事は少しでも避けたい。

それには気持ちをしっかりとしないといけない。


今は自分だけではなく、紫翠、ナイトのロドリー、ルークのディアス、この三人がいる。

何があろうときっと解決できる。

ウィルは心によぎる不安に打ち勝つように、眼をしっかりと開けて前を見据えた。


長い廊下をひたすらに歩き、ようやく紫翠の足は大きな扉の前で止まる。

煌びやかなその扉はこの国のトップであるキングの部屋である。

どうやらリアンはこの室内にいるようだ。


「この部屋にリアン様が?ここはキングの部屋だが…。」


「同族の感知は間違うはずがない。ここにリアンはいる。」


紫翠の断言にディアスは扉に手をかけるが、紫翠にそっと遮られる。

そして全員に音を立てないように口に指を当てて指示する。

その様子を静観していたウィルだが、一瞬ぞくりと背筋に悪寒が走る。

その瞬間、扉の隙間から赤い光が見えたように感じ目を凝らす。

チリッと小さな音を立てて消えたその光が火の粉だと気づいたのは扉の一番近くに立っていた紫翠とディアスだけだった。


ディアスはロドリーとランスを、

紫翠はウィルを抱きかかえ、二人は扉の左右に飛んだ。


次の瞬間、扉は爆風により壁から外れ逆側の壁に叩きつけられた。

扉を失った出入口からは黒い煙が出ており、今だ中で何かが燃えている様子だった。

一瞬、判断が遅ければ全員が無事である事は無かっただろう。


「今度はいったい何が…」


転んで軽く頭をぶつけたランスが頭を抑えながら起き上がる。

事態を把握したロドリーは刀を一振り抜き出入口の横に立つ。

ディアスも大剣を手に持ちランスを守るように構えた。


「何を警戒してらっしゃるのです?入ってきたら良いではありませんか。

もしかして、たったこれだけで消し飛んでしまったのですかぁ?」


部屋の中から、聞き覚えのある嫌らしい声が聞こえてきた。

その声は楽しそうに笑う。


「炎砡。」


紫翠の声に応じた炎砡が狼の姿となり部屋の中に入っていく。

それに続くように、ロドリー、ディアス、紫翠と続いて全員が室内に入ると、

ようやく消えてきた煙で室内にいる存在が明らかになった。


口元から小さく煙の出た赤鱗の陀龍と

黒の衣を羽纏い、口元に嫌らしい笑みを浮かべたビショップが立っていた。



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