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INVADER  作者: 青髭
大国戦争編
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進撃

「ゲッ、レオン王!」


バルバロスはレオンを見るなり苦い顔をした。

レオンはそんなこと全く気にしないかのようにバルバロスに近づいて挨拶をする。


「あらバルバロス王、お久しぶり。いつにもましていい筋肉ね」


レオンがバルバロスの胸板を人差し指でなぞろうとして咄嗟に避ける。

あの光景を見るだけでナオヤも寒気が走った。


「ええい、お前こそいつにもまして気色悪いな!」


「つれないわねぇ」


「そもそもなんだそのお面は?」


バルバロスがそう言って指をさした。

その指をレオンが掴もうとするので直ぐに引っ込める。


「今は化粧が上手くいかなかったのよ」


「オホン!」


しばらく見ていたシェイファードが咳払いをして二人の注目を集める。


「お二方、今は時間が足りない。速やかに打ち合わせをしたい」


それを聞いて二人の雰囲気から遊びが消える。

レオンは元々仮面を被っていてよくわからないがバルバロスの雰囲気はまるで賢者のように落ち着いていた。

シェイファードはその場にいるナオヤたちを引き連れて街の門の横に設置された仮拠点に赴く。

本来なら城内で話し合うべきだがその時間も惜しいのだ。


ナオヤはその仮拠点のテントに入る。

中は長テーブルと椅子が八脚と会議室として機能はするようにはなっていた。

中には既に騎士団長のガーソローが地図を見ていた。


「予測される戦地は?」


「森の手前から少し行った所かと、もしくは森とこの街の中間あたりになると思われます」


シェイファードに聞かれ素早く答える。

森の手前ということはナオヤも一度訪れたあの一帯となる。

あそこらへんとなると平原が広がっているので広範囲で攻撃されると痛い。

それは相手も同じだが純粋な力が相手の方が上である。

確かあそこらへんには川があったはずだがあまり関係はないだろう。


「で、今の俺らの戦力はどのくらいになるんだ?」


「私のところからは約五千よ」


バルバロスが約一万と百、レオンが五千。

後はセルピエンテがどの程度の兵を募れるかだが。


「ガーソロー、そこまで集まったのかね?」


「はい、まずは我々全騎士が計三百、一般の兵士が約七千です」


「つまり合わせて二万二千六百ってところか…敵の人数はわからないのか?」


「それが偵察に向かわせた者達が帰ってこず」


「じゃあ誰かエスクドの騎士団の人員の数を大体でいいから知っているものはいないか?」


ナオヤのその問に答えたのは今しがた現れたヤオだった。

ヤオは先程の装飾過多な姿とは違いきちんとした戦闘スタイルになっていた。

それはガーソローが今着ている鎧とほぼ同じものだろう。


「パルディオ聖騎士団の人員は約二百人だ、その下の騎士団はその倍の四百ほどで、動員される兵士も合わせるなら今回来る敵は約三千六百人だろう」


「なに?えらく少ないな」


バルバロスが呟く。

いや、つぶやかなくても少ないとは誰もが思っただろう。

二倍や三倍どころの戦力差ではない。


「だが相手はエスクドだ」


シェイファードが補足する。

普通ならこれで負けるのは余程の間抜けだろうと思ったが確か元の世界でも大軍が少人数に倒された話を聞いた気がする。

なんなら一人で敵軍を壊滅させたなんてのも聞いたことがあったはずだ。

それを成し遂げれば間違いなく英雄と呼ばれるに値するだろう。


しかし、今回は違う。

世界最強の騎士を相手にするのだ。

兵士一人一人が全て一騎当千と考えたほうが良いだろう。

その場合、その戦力は。


「三同盟の兵二万二千六百に対しエスクドの兵は三百六十万と考えるべきね」


その途方もない数値を聞いてその場にいる全員が妙に納得したといった表情をした。


「まあ流石に本当に三百六十万ってわけではないけど私たちの兵の十倍以上は戦力があると思って貰っていいわ…ま、こんなこと言わずもがなかしらね?」


「兵はわかった。次に部隊編成はどうする。流石に混合部隊にすると統率が無くなるぞ」


「それは最終手段かしらね」


「そうならないことを祈るばかりだ」


「それについては考えております」


バルバロスとレオンが話す中にガーソローが口を開く。


「一般兵は真ん中にバルバロス王の兵、その左右を挟む形でセルピエンテとレオン王の兵を配置。その前方にバルバロス王とその騎士と各国ごとの騎士を前に配置します」


「なにそれ、要は前ならえじゃない」


「はい、戦闘にあたってはまず最初にバルバロス王率いる部隊が前進し、そのまま左右へ兵を展開して敵軍を包んで頂きたい。そして…」


その後もガーソローによる説明が続いた。

そして、遂にその時は来た。


ナオヤは目の前に広がる大勢の兵を見て改めてその多さに驚く。

歴史の授業や講義でそういうものを数字では見ていたがいざ目の前にするとその圧倒的な迫力に飲まれそうになる。

ゲームでの死なない戦いでは味わえないスリルとでも言うべきだろうか。

いや、これはゲームじゃない。


この世界の(せい)だ。


そして、三同盟部隊は進軍を開始した。

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