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INVADER  作者: 青髭
大国戦争編
85/90

龍酔い注意

それから数時間が経過し朝日が顔を覗かせ始めた頃になってようやくバルバロスが王の間に戻ってきた。


「待たせたな!」


そう言いながら入ってくるバルバロスは流石に退屈で近くに置いてあったソファで寝ていたナオヤを起こす。

シェイファードとヤオは眠れなかったのか寝なかったのか壁際に立ち尽くしていた。


「もう準備できたのか?」


ナオヤの言葉に「おう!」大きく頷くバルバロス。

ナオヤも窓から差し込む陽の光でおおよその時間を把握する。

どうやら今は早朝、大体六時を回ったところだ。

ナオヤは体を伸ばして柔軟する。


「では行きましょうナオヤ様」


三人はバルバロスに連れられてバルバートから少し離れたところにある広大な演習場に赴く。

そこには密集する人人人、本当に戦争でもするのかと疑いたくなるぐらいだ。

実際するわけではあるが。


「国中から集った兵士と民が合わせて約一万、そして我が聖獅子騎士団の百名だ」


「あ、意外と多い…」


弱音を吐くナオヤだが仕方がない。


「本当に大丈夫なのか?」


心配になったのかヤオが聞いてくる。


「だ、大丈夫だと思うよ」


多少の不安はあるがやるしかない。

と、集まっていた者達がこちらの存在に気がついたようで大歓声が響き渡る。


「さあ行くぞ、益荒雄達よ!あの大国、エスクードに喧嘩だ!」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


その雄叫びの中心は主に聖獅子騎士団の連中からである。

さすがバルバロス自ら鍛えただけあって血気盛んである。


「じゃあやるか!」


ナオヤはそう言うと目を閉じて意識を集中させる。

ゲームでも使ったのは数回程度で二桁も行っていない。

そう、ナオヤは自身の種族である無限界の厖黎龍オフィヨルム・ドラゴンの真の姿を顕にしようとしていたのだ。


以前見せたファンタジーに良くある翼に角といった黒いドラゴンの姿は本来の姿ではなくその途中経過のような姿だったのだ。

ゲーム時代に良く変身したのはそちらだ。

なぜかというと本来の姿はその性質上あまりにもでかくなってしまうのだ。


要は大きな的に成り下がってしまう。

まあ、少し動けば大抵のプレイヤーはそれだけで潰れてしまうが。

同種位ぐらいになるとそれも難しいのだ。

故にずっと封印してきた。


オフィヨルムとは造語だ。

前に一度ジャーフルと同じで二つの力を持っているとか持ってないとか言ったと思うがそれに関係する。

オフィスとヨルムンガンドを足して二で割ってオフィヨルム。

オフィス・ドラゴンは皆さんご存知無限を象徴するウロボロスである。

ヨルムンガンド・ドラゴンも皆さんご存知とにかくでかいドラゴンである。


普段封印していたのはヨルムンガンドの巨大さである。

それを今、ナオヤは解いた。

世界蛇、大地の杖と称されるほどのドラゴンである。


ナオヤは一度普段のドラゴンになってから更に膨れ上がり始める。

しかし大きくなりすぎてもダメだ。

細心の注意を以てコントロールする。

イメージするのはこの人数が落ちない程度だ。


そして遂に巨大化が終わる。

姿も西洋のドラゴンと言うよりかは東洋のドラゴンに近くなっていた。

東洋の龍に巨大な翼が生えた感じである。


その漆黒の鱗はまるで光さえも吸い込むかのようだった。

大きさなど蜷局(とぐろ)を巻けば山と言っても過言ではないだろう。


「こんなものだろうか?」


ナオヤは小さくなったシェイファード達を見下ろす。

どうやら言葉を失ってしまったようだ。

興奮に身を任せていた兵士達からも音一つ聞こえてこない。

が、それもバルバロスの雄叫びで終止符が打たれた。

その脳を揺さぶってくる雄叫びは次第に伝播していき兵士達も雄叫びをあげる。


「我々は今、神代(かみよ)を見ているのだ!」


「大げさだよ…」


興奮を抑えきれないバルバロスにナオヤは呟く。

もう諦めたのかナオヤは体を横に倒す。

彼らには胴の付近に乗ってもらおう。

東洋のドラゴンに近いといってもベースは背中の広い西洋のドラゴンを意識していたので体の一部、背のあたりに人が座れるよう平に近くなっている。

ナオヤも成功してホッとする。

普通に戻ったのでは人はあまり乗せられない、なので少しいじったのだ。

そこらへんはまた話す機会があれば説明しよう。


「では、乗り込みましょう」


シェイファードがバルバロスにそう促す。

バルバロスも我に返って頷いた。


「そうだな、で、どうやって乗るのだ?」


その言葉にシェイファード、そしてナオヤが凍りついた。

そこまで考えていなかったのだ。

シェイファードはともかくこれはナオヤが悪い。

困ったことになった。

ナオヤも手持ちの道具を閲覧するがハシゴなどあるはずもなく、良くてロープの類があるだけだ。

しかし登る最中に落ちて怪我でもしたらもう目も当てられない。

するとそこにヤオが画期的な提案を出してきた。


「ナオヤの腕を使えばいいじゃないか」


「あ、なるほど」


結果、スムーズに乗り込むことができた。

要はナオヤの両腕を地面に伸ばして坂道を作ったのだ。


「では行こうぞ!」


バルバロスの号令と共にナオヤは落とさないように意識して飛ぶ。

その姿はまるで空港の飛行機だ。

人が乗っている背を曲げないようにしているので更にそう見えただろう。


ナオヤは次第にスピードを上げていく。

その早さたるやいなやもうバルバートは見えなくなってしまった。


「ガハハハハハハハハハハ!」


バルバロスは仁王立ちで大口を開けて口に入ってくる風を楽しんいる。

しかし他の面々はバルバロスの様に楽しめているわけではなかった。

皆、吹き飛ばされないように、落とされないように必死だった。

一応鱗に掴まっていられるようにはしてあるし、そもそも戦闘に特化した連中だ。

大丈夫だろう。


そして飛行してあれから五時間ほどでセルピエンテに到着した。

流石のバルバロスもぐったりしており、セルピエンテの郊外に急遽野営地を作ってテンや地面に皆を寝かせた。

不幸中の幸いなのがこいつらが脳筋だったことだと自分に言い訳して龍人に戻る。

バルバロスも真っ青な顔で寝れば治ると言っていたので大丈夫だろう。


「レディスクの時はもうちょっと気を付けよ…」


ナオヤは後方にいるシェイファードとヤオを見る。

二人共とても気分が悪そうだったがナオヤが回復する木の実を渡すとたちまち治った。

残念ながらそんなに持っていないので彼らには渡せなかった。

ナオヤぐらいになるともうあんまり効かないので買っていなかったのだ。


復活した二人の肩を掴んでナオヤはレディスクに飛ぶのであった。

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