二つの国の特色
まず手始めとしてナオヤは国王シェイファードを連れてその二つの国、レディスクとバルバートに行くことにした。
しかし既に一日の転移回数五回を使ってしまったため今日は大人しく待っていることしかできない。
既に夕刻を過ぎて夜といってもいい時間であり、しばらくすればまた転移は可能である。
しかし深夜に出向くと不敬と言われ話す前に破談されてしまうかもしれないと懸念しているとシェイファードが問題はないと言ってくれた。
理由を聞くともしもこういう事態にになった場合、時間の有無は関係なく助力を求めても良いことになっているらしい。
それは良かった。
ならば問題はないだろう。
転移先もシェイファードが知っているので問題は無い。
では最初にどの国にしようか、距離の問題は無いので二つの国のうち、一番話が早い国を聞いてみる。
どうやら獣王国バルバートが一番話が通じるという。
参考までにバルバートについて聞いてみた。
まず今代の国王について、茶色混じりの真っ赤な鬣に黄色い瞳を持つライオン系の獣人だそうだ。
名前をバルバロス・ゼレーヴェ・バルバート。
武芸に秀でた人だそうだ。
というのもこの国は言わば脳筋の節があり、国王も力の強さで決まるそうだ。
バルバロス王もその例に漏れず、数十年前に開かれた国王を決める大会で王になったらしい。
そんな国なら大陸一のエスクドに反抗するのはどうしてなのか聞いてみる。
理由は至極単純だった。
いや、さすが脳筋王国だ。
バルバロス王は強者を倒すことが趣味らしい、かと言って頻繁にエスクドや他の国に戦いを挑んでいたらまず間違いなく滅ぼされると思い諦めていたらしい。
そこそこは頭を使っているようだ。
そこへシェイファード達が戦う理由と大義名分を背負ってきたのだ。
バルバロス王はそれはそれは丁寧に、まるで賢人のように持て成して話を聞いてくれたそうだ。
つまり例え夜中だろうと昼間だろうと時は来た、賽は投げられた。とバルバロス王に言えば飛んでくるということだ。
国の性質上大陸では上位の強さを誇る。
バルバロス王は来るべき日に備え少数精鋭の騎士団、聖獅子騎士団を手ずから指揮して鍛えているそうだ。
他にも血気盛んな兵士や荒くれ者も用意しているそうだ。
頼もしい限りである。
次に洗礼王国レディスクについて聞いてみる。
こちらは宗教国らしい、国民全員がその宗教の敬虔な信徒で、とても豊かな国らしい。
同性婚自由など、好きなものを好きという自分を偽らないことこそが神への感謝の意であると謳っているらしい。
そしてこの国の王は人種で、金の長髪をカールさせ、口紅やアイシャドウ等の化粧をし、長く伸ばされた睫毛やフリル付きの服を着る変態らしい。
名前をレオン・ビュート・レディスク。
その蒼い瞳は全てを見透かしているかのようと言われる程の頭の回る賢者らしい。
因みに好みのタイプは美少年か爽やかな青年とのこと。
種族問いません。
それを聞いてナオヤは正直行きたくなかった。
しかしシェイファードは首を振った。
レディスクの助力は絶対に必要というのだ。
訳を聞くと、なんとレディスクはこの大陸で二番目に強いとのことだ。
それ故にか国王であるレオンは最上位種であるとか噂されているらしい。
たしか今の時代で最上位種というと勇者かなにかと同等などと言われているらしいが実際は伝説の勇者の方が強いのだろう。
あのジェイドという騎士と同じ種位だったはずだ。
まあジェイド達は何かカラクリがあってあそこまで強いので例外だが。
シェイファードの話を聞くと、レオンは美少年を侍らせながら快く来るべき戦いの助力を約束してくれたという。
それだけ聞くと良い人らしいのだがどうも美少年を侍らせているのがシェイファードには毒のようで吐き気を抑えるのに相当努力したそうだ。
そういう理由からレディスクに夜中に訪れるのは絶対にアウトな現場を目にする確率があるため、レディスクには一度門番に話を通してから謁見するのがまだマシとのこと。
まあ、聞く限りシェイファードが酷いように思えるがそれを言うとあの場に居たらナオヤ様もそう思うでしょう。と言われた。
まあ、男が男を侍らせるなんて性癖がノーマルのナオヤもゾッとする話ではあるが。
その後も説明を聞いたり、各街の兵士や騎士、戦ってくれる民を集めたりして時間が過ぎた。
驚くことに、最初にとてもお世話になったリザードマンのシェオンが参列していた。
近づいて聞いてみるとナオヤの変わり果てた姿に驚きつつも、最後に国の役に立とうと思い参列したと言ってくれた。
久々に血が騒ぐわい等と笑っていたが老人には変わりないのでナオヤはシェオンに三回だけなら死んでも直ぐに蘇生してくれるマジックアイテム、釈迦金輪というシンプルだが真珠が三つはめ込まれた金でできた指輪を渡した。
これで生存率が伸びただろう。
そして深夜、が過ぎて日が変わりナオヤは転移可能となった。




