作戦会議
ナオヤがマレンテン達と別れてからしばらくして急いで走ってくるヤオ達を発見した。
何かあったのだと気づいて駆け寄る。
「すまない、ダメだった」
ヤオは申し訳なさそうに一言そういった。
「エスクドはパルディオ聖騎士団を編成してセルピエンテを攻撃してくる気です!」
「攻撃なんて生易しいものじゃない、奴らは祖国を滅ぼす気だ!」
デクスとフォルーダは頭に血が上りすぎているのか興奮気味だった。
とりあえず深呼吸させて落ち着かせ、その場から一度離れて路地裏へ入る。
「一度この街にいるセルピエンテの商人や兵士、旅行客等をできる限り避難させたいと思う」
「ああ、そうしよう」
ヤオの提案に賛成し、各自街の中を駆け回る。
商業ギルドの大きな建物や酒場、市場などを探し、どうにか探し出した。
皆、第一王子の命と聞くと素直に行動してくれた。
と言っても最初に同行した人数に五人程しか増えてはいなかったが。
そして皆を馬車へ入れて準備は完了した。
馬車の数は十あるかないかだ。
ナオヤがそれを二台ずつ転移していく。
しかし回数制限のせいで数台が余ってしまった。
「仕方ないか…」
ナオヤはそうつぶやくと自身の変身を解いて龍人へ、龍人から龍の姿へと一気に変える。
突如現れたドラゴンにあちらこちらから悲鳴が聞こえるが構ってはいられない。
直ぐ様残った馬車を全て持ち翼を羽ばたかせる。
一気に加速してエスクドの街を出る。
馬車が壊れないようにするのが少し大変だったが直ぐに森の中腹辺りまでたどり着いた。
この調子ならあと数十分もすればセルピエンテが見えてくるだろう。
そしてセルピエンテに到着するとナオヤは街の中で馬車を下ろす。
ナオヤの姿に街の人が驚いているがこちらも今は構っていられない。
ナオヤは再び羽ばたいて城の上階を目指す。
この姿なのであっという間にたどり着く。
城の庭園が見えたのでそこに着陸できるように少し上あたりで龍人になる。
そのままゆっくりと翼を動かして静かに着陸する。
着陸するとナオヤは背中に生える翼を消す。
今更ながらここら辺もゲームと同じなんだなと思う。
ナオヤが着陸した庭園は白い石造りで綺麗に整えられた緑があった。
その向こうには城へ通じる扉があり、その扉が勢いよく開かれる。
現れたのはヤオとシェイファードだった。
「ナオヤ様、直ぐに来ていただきたい!」
血相を変えて現れたシェイファードはどうやらヤオから一連の事情を聞いたようだ。
ナオヤはシェイファード達に連れられてジャーフルが眠る王の間へ入る。
ジャーフルがここには横たわっているが奥の方にはまだスペースがあり、会議するのには十分だった。
久々に見た気がする面々を見渡しながらナオヤは円卓の席に座る。
「聞いていただきたい。先刻、私はガルド王と謁見を行った」
ヤオが説明を始める。
ナオヤ自身も説明自体はこれが初めてなので聞き漏らさないように集中する。
「ガルド王はそちらにいるナオヤとジャーフルを匿う国は人類の敵と…」
などなど、ヤオが説明を続ける。
それらを聞いてシェイファードは頭を抱える。
「もう既にパルディオ聖騎士団は出立したとみて間違いないだろう」
「これでは他国との共同を張るのは無理があるな。幾らか時間はあるが自国の兵士たちを他の街から集めるだけで敵が来てしまう」
聖龍騎士団団長のガーソローが言い、密偵や他国との密かな取引を担当しているワイドが他の国に助力が得られないと危惧する。
「シェイファード、実際の所、どういった手はずで他の国と同盟を組んでいたんだ?」
今となってはあまり意味はないが一応の為にナオヤが聞く。
「はい、洗礼王国レディスク、獣王国バルバートなどとは半年に一度の連絡をとっておりました。比較的近いのでそれなりに同盟は組めております。他の遠方の国々とも時期をみて使者を送るつもりではいたのですが…」
「そこはいい」
「レディスクとバルバートとで全勢力を出しあい、エスクドに宣戦布告する手はずでした」
成る程、質では遠く及ばないので量で攻めるつもりだったのか。
どうやら魔獣討伐も目には目をと、プレイヤーを使っていたので彼ら自身はナオヤよりも弱い。
ナオヤ自身が聖騎士団を相手取り、他の兵士や騎士がエスクドの兵士たちを相手にすればいい勝負なのではないだろうか。
しかし、それには少なくともその二カ国との共同戦線が必要だ。
スクロールを使うという手もあるが無限にあるわけではない。できればこれは最後の手段にしたい。
時間も既に限られている。
普通に進行すればセルピエンテとエスクドは一週間程であるが聖騎士団ならばもっと早く進むと考え、こちらの準備も考慮すると…。
「三日、ですかなナオヤ様?」
そう言ったのは緑の鱗、長い髭と睫毛が生え、丸縁メガネを掛け後ろへ伸びた二本の角が特徴的な初老のドラゴニュートにしてこの国の宰相、ケイオーン・ペルガルモンドだ。
ケイオーンの言葉に同意するナオヤ。
一刻、一分一秒も無駄にはできない。
ナオヤは行動すると決めた。




