一先ずの安息
ナオヤはジャーフルの体と共にセルピエンテの王の間へ転移していた。
咄嗟に思いついた誰にも見られない広いスペースが此処しかなかったからだ。
当然王の間であるから人がいると思ったが幸いにも無人だった。
しかししばらくして異変を聞きつけた兵士が入ってくる。
ジャーフルに腰を抜かす兵士にナオヤは王を呼ぶように伝える。
混乱しているのかナオヤが以前此処に居た時の姿ではないからか戸惑っている兵士をナオヤがひと睨みする。
すると兵士は逃げるようにして飛び出していく。
しばらくして他の兵士や騎士を護衛として王であるシェイファードが現れた。
シェイファードも最初はナオヤの姿に驚いてはいたが直ぐに落ち着いた。
シェイファードは現状を宜しくないものと悟る。
「ナオヤ様、思い出されたのですね」
「ああ、後ろに横たわっているのは仲間のジャーフルだ、エスクドの聖騎士団から救い出した。今は動けないからしばらくは此処を借りるぞ」
「それは構いません。それでヤオは?」
ヤオと名前を聞いて置いてきてしまったことを思い出した。
ナオヤは再び転移を試みる。
場所はあの屋敷だ。
すると視界が切り替わる。
屋敷の玄関だ。
「ヤオ!居るか!?」
大声で叫ぶと玄関の扉を開きながらヤオが現れた。
少し息を切らしている。
「ナオヤか!」
どうやらヤオ達は直ぐにセルピエンテへ帰ろうとしていたところに屋敷からナオヤの声がしたので走ってきたとのことだ。
後ろにはデクスとフォルーダもいる。
二人共先程は自分の前にいたので今の姿を知らなかったのだ。
驚きの表情である。
「話をしている暇はない、三人とも自分に掴まれ」
反論などさせる暇もなく掴ませるというか掴んで転移する。
あっという間に王の間に転移したことに驚く三人。
「おおヤオ!」
シェイファードが安堵かヤオを強く抱きしめる。
「それでナオヤ様、一体何が、いや…何が起こるというのですか?」
流石は国を統べる王というべきか。
その目には既に想定しゆる色々な事柄が見えているのだろう。
「わからん、エスクドの連中がこっちに攻めて来るかもしれない」
「そうなっては戦争になってしまう。この国の戦力では…いや、我々にはナオヤ様が付いている!」
「無理だな」
ナオヤはシェイファードの希望を打ち砕く。
実際問題エスクドには正体不明のプレイヤーが存在する。
それも一人とは限らない。
そして聖騎士団の異常な強さ、種位だけによる強さではない。
「シェイファード、パルディオ聖騎士団の強さの秘密とかは知らないのか?」
「はい、全くもって存じませぬ。紀元前までは普通の小国だったと聞いておりますが…」
「紀元前?」
「はい、今の暦は彼の勇者、エスクード・パルディオが魔王をノシディオ・ロコミエド・フトゥロタールを打倒した日を記念した者なのです。それまではネセス王国と名乗っていたと」
「いや話を脱線させて悪かった。それで力の正体は知らないんだな?」
話が逸れてきそうだったので強引に戻すナオヤ。
シェイファードが頷く。
「騎士団長のジェイドって奴は最上位種だったがこの世界の種位ってのはどうなってるんだ?」
「最上位種…それは最早超常で御座います。今の世には下位種、中位種、上位種が殆どです。その更に上の種位となると確か勇者もそのぐらいと聞き及んでおります」
ジェイドが勇者の末裔かなにかなのか真に強者なのか。
しかしだからといって自分に勝つことは不可能だ、何かからくりが…。
そこでナオヤは決定的な事を思い出した。




