ギルド会議
ギルド会議では長机に序列ごとに座るのが決まりである。
長机には背もたれの長い椅子が十七脚あり左右に八脚ずつと全席が見渡せる一番奥の左右に挟まれた所に一脚置いてある。
序列ごとに真ん中から一、扉の方から見て右左と二、三と交互になっている。
つまり右の席は二、四、六、八、十、十二、十四、十六となり左の席が三、五、七、九、十一、十三、十五となるのだ。
ここで序列の紹介と共に各ギルドリーダーも紹介しておこう。
まずは七天ギルドからだ。
序列第一位、ギルド『新世界』のリーダー、種族・神位種『原初の一』、ロイド。
見た目の変化はあまりなくこいつを見ると少し安心する。今は純白に金糸の刺繍の入ったローブ姿である。
見た目の変化を強いて言うならば身長が伸びたぐらいだろうか。
原初の一とはこのゲームを最初にクリアという条件があるためこの種族だけはロイド唯一の種族となっている。今だその全容は不明で戦闘時には皆一番注意している。
序列第二位、ギルド『楽園騎士団』のリーダー、種族・神位種『癒水と殺戮の軍神』、ライジオ。
右腕全体が銀の銀腕となっているのが最も特徴的だろう。他の変化は特にない、ヒューマン種は基本種族が変わってもあまり変化はしない。
種族としての特徴はアタックヒーラーという方が早いだろう。
攻撃と回復を瞬時にこなす姿は頼もしいの一言に限る。
序列第三位、ギルド『豚鼻組合』のリーダー、種族・神位種『穿つ鋭牙の五神猪』、オルガン。
猪型の獣人プレイヤーだ、このギルドは主にアイテム等の流通を取り仕切る商業ギルドである。
金色の毛並みが只者では無い感を漂わせている。
右目の傷や至る所に傷があるので怖いが今は簡単な革装備で身を包んでいて軽減されている。
序列第四位、ギルド『乙女の会』のリーダー、種族・神位種『財穣と栄功の福神』、プリステラ。
こいつも得には変わっていない、女物の衣装に装飾に化粧とオカマに磨きが掛かっている。
因みにこいつのギルドメンバーは強制的にこうされる恐ろしいギルドだ。
序列第五位、ギルド『神の一槌』のリーダー、種族・神位種『巨神王の小人』、カドモス。
ゲーム内一番の鍛冶ギルドだ。
ドワーフ種であるために小柄だが巨人種の力を有しているために筋骨隆々で力強く、彼のギルドで作られる武器や武具は質が良く高値で取引されている。
因みに今は短パンだけだ。
序列第六位、ギルド『魔導要塞』のリーダー、種族・神位種『死告妖精女王』、ハイレーン。
ご存知の方もいるだろう。第八迷宮で出会したあいつだ。
ゲーム内一番の魔術ギルドだ。
見た目も以前と変わり、死神のような風貌をしている。
色素の薄い肌や唇、黒い髪に瞳、化粧も紫を基調としている。
今は真青なドレス姿だ。
序列第七位、ギルド『道化の嘲笑』のリーダー、種族・神位種『創世と終焉の魔神』、トリッピー。
相変わらずな様子で他のギルドメンバーにはピエロの格好をさせているようだ。
変わったアビリティを使うので戦う際は細心の注意を必要とする。
今も普段と変わらない宮廷道化師のような格好に化粧をしている。
ここまでが七天ギルド、最も権力、力のあるメンバーだ。
次からが十傑ギルドのメンバーだ、七天ギルドの次に権力、力のあるメンバーだ。
序列第八位、ギルド『龍国の大樹』のリーダー、種族・神位種『無限界の厖黎龍』、ナオヤ。
龍種のギルドです。
みんなのナオヤです。
以外に序列が下だと思ったあなた、別に下ではないです。
十傑ギルドでは一位です。ただギルド順位を決める戦いにてこの順位に落ち着いただけです。
いかんせんギルド順位は戦闘力だけでは決まらず総合面での評価なのだ。
これでもすごいんです。本当です。一応二種類の神位種の力を持っているんです。
序列第九位、ギルド『高大なる山脈』のリーダー、種族・神位種『界力と百拳の巨人』、ドルギメス。
巨人種のギルドで、ドルギメス本人は無口で彫りが深くてスキンヘッドに紋が刻まれているので見つめられるとちょっと怖い。
身長250ほどの大きさだ。
一応交友関係あります。
序列第十位、ギルド『隻眼の太陽』のリーダー、種族・神位種『陽月天の神王鳥』、ファルラ。
褐色の肌に露出の高い衣装と金やラピスラズリの装飾とエジプトのファラオ的な特徴の鳥人種の男だ。
身なりが身なりなので王のようにふてぶてしい態度を良くとっている。
序列第十一位、ギルド『白鬼衆』のリーダー、種族・神位種『毘沙捌刀門天夜叉』、アスハ。
鬼種の暗殺ギルドでメンバー全員が白髪に白い肌と赤眼である。
紫鬼のギルドとはライバル関係。
今は和服に身を包んでいる胸元はサラシを巻いている出で立ちだ。
序列第十二位、ギルド『赤鬼衆』のリーダー、種族・神位種『毘沙兜跋門天夜叉』、紫鬼。
鬼種のギルドでアスハとはライバル。
上半身裸でズボンだけという格好だ。
序列第十三位、ギルド『百獣の拳』のリーダー、種族・神位種『天地支配する魔豹』、キルルカ。
猫の獣人種ギルド。
黄色を基調とした派手なアステカ風の民族衣装を着ている女性。
金髪碧眼で鋭い目つきが特徴的でとても好戦的だ。
序列第十四位、ギルド『煉獄の番犬』のリーダー、種族・神位種『神滅杖の災狼』、楼牙。
犬の獣人ギルド。
漆黒に紅、鎖がジャラジャラついた衣装とちょっと中二病っぽい格好の女だ。
これでも防御だけなら上の部類に入る鉄壁のギルドだ。
序列第十五位、ギルド『森奥の秘境』のリーダー、種族・神位種『光輝と高潔の森穣神』、エル。
最初の頃に門番と戦っていたエルフの二人組の一人だ。
忍者風暗殺ギルドでその名が通っている。
今も変わらず忍び装束を着ている。
以前とは違い顔も隠れているので今は目元しか見れない。
序列第十六位、ギルド『資源調査団』のリーダー、種族・神位種『小鬼神帝』、ガボック。
採取や採掘を生業としているギルドだ。
見た目はゴブリンと変わらない出で立ちだが甘く見ていると痛い目をみるだろう。
種族の純粋たる進化はハイ、グランド、キング、エンペラー、グレートとなるらしく最終系がゴッドである。
故に見た目はほとんど変わらず力だけつく。
序列こそ下だがその有用性は上である。それなのになぜ序列が下かというとガボック以外に強いプレイヤーが在籍していないのが要因である。
今は作業着のような格好をしている。
序列第十七位、ギルド『弱者友の会』のリーダー、種族・神位種『金毛の文明龍』、ツツリ。
新規プレイヤーやまだまだ強くないプレイヤーが最初に入るギルドだ。
彼女もキルルカと同じで黄色を基調とした派手なアステカ風の民族衣装を着ている。
見分け方は簡単で緑髪金眼でいつもニコニコした女性である。
教え方も丁寧で人気がある。
とまあこんな感じだろうか。
ではロイドの話を聴くことにしよう。
「まずはみんなに報告がある」
椅子から立ち上がりロイドは顔を少し赤くしながら言った。
それだけでも彼が興奮しているのがわかるだろう。
「とうとう最後の一柱を見つけることができたのだ!」
両手を左右に伸ばし笑顔を見せるロイド。
口を開け口角が上がり視線は天井を見ている。
もしやと思いナオヤは挙手する。
「なんだいナオヤ?」
ロイドがこちらを向いて指をさす。
「ひとつ確認だけど、それって自慢話?」
「いかにも!」
それを聞いたナオヤ達十六人は一斉に立ち上がる。
みな忙しい中での御足労だ。
自慢話ならフルボッコである。
「まて待ちたまえ諸君!何も自慢話だけとは言っていないだろう!落ち着いてくれ!」
ロイドは中腰にお尻を後ろに突き出して両手を前にして皆を止める。
ライジオ、オルガン、プリステラ、カドモス、ハイレーン、ナオヤ、ドルギメス、ファルラ、アスハ、紫鬼、キルルカ、楼牙、エル、ガボックが拳をバキボキと鳴らし、トリッピーはニヤニヤとし、ツツリはニコニコとロイドを見ている。
実に皆好戦的で頼もしい。
一様自慢話だけではないようなので全員着席をして話を続けさせる。
「では、改めて、みんなも僕があるシークレットスキルを集めていたのは知っているだろう。その最後が遂に見つかったのだ。長かった、実に長かった。ああもう本当に長かったと思うね!いや言うね!約三年だ、必死にいろんな迷宮に率先して潜ったしこのシークレットスキルを持っているプレイヤーの搜索も頑張った。もうもしかしてこのゲームでいちばん頑張ってるのって僕だけでは?と思うほどだ。そして遂に先日、全てのシークレットスキルを発見、確保したのだ!」
「しつもーん!」
机に両肘をついて退屈そうに聞いていたキルルカが手を挙げて質問する。
ロイドは指をさして聞く。
「何かなキルルカ?」
「そもそも私、ロイドがなんで集めてるとか何を集めてるとか知らないんだけど?」
「いや、理由なら大昔に言ったはずだぞ?」
「えっまじ?」
キルルカは周りを見渡す。
すると他のメンバーは一様揃って数回頷く。
どうやらキルルカはとっくに忘れているようだ。
「ならば今一度簡単に説明しよう。まずみんなも持っているシークレットスキルには種族や職業のように七段階に分けられたアビリティがあるはずだ」
それは周知の事実だ。
下位技、中位技、上位技、最上位技、超位技、極位技、神位技となっていて上に上がるほどもうバカみたいとしか言いようのない笑えてくるような威力になっている。
そしてとうとう二年前ほどにシークレットスキル持ち同士の戦闘は極力避けるようにと暗黙の了解が出来上がるほどだ。
そして当時の話だとどうやらロイドの神位技はかなり特殊な条件下出なければ発言しないらしく今だお目にかかってはいなかったのだ。
つまりはとうとう神位技を使えるとなったということだろう。
なんとなく集められた理由がわかってきたぞ。
ロイドが話を続ける。
「そして僕の神位技はとある条件、それは特定のシークレットスキルを持つプレイヤーを集めることだ。それが遂に成ったのだ!故に此処にイベント、ギルド戦争を行いたいと思う」
ロイドは強く拳を握り全員の目を一人一人見ていく。
とても真剣な表情である。
「確かに貴公の言う通り、永久の眠りから解き放たれし力を振るいたいという欲求は痛いほどわかる。斯く言う私も実は最近これと言った冒険もなく燻っていた所であるからな!」
勢いよく立ち上がり椅子を後ろに倒しながら右手を顔に、左手の甲を右肘にそっと添えてマントをなびかせる楼牙。
ジャラジャラとぶつかって音を鳴らす鎖をどうにかしないものだろうか…。
流石中二病、ロイドと通じる所があるのだろう。
「わかってくれるか楼牙!」
「嗚呼、勿論だとも原罪の盟友よ」
「そうかそうか、実は既にゲームマスターには実費でイベントの申請をしていたのでそろそろ返事が来ると思う!」
「おいおい、また勝手に…」
ロイドは返事のメールを直ぐに開けるようにウィンドウを開く。
紫鬼が背もたれに体重をかけながら沈む。
ずるずると下がっていき終いには椅子の手すり部分まで頭が下がる。
そしてバランスが取れずに落ちる。
「いてっ」
頭を打ったようだ。
「ぷっバカみたい」
アスハが口に手を当てて笑う。
喧嘩になりそうだったのでガボックが二人を睨みつける。
すると二人共姿勢を正して元に戻る。
「えーと、そろそろかな?」
それから数分後にプレイヤー全員にギルド戦争のイベント通知が送られてきたのだった。
まだ異世界ではない。




