敵の体力がちょこっと残って全滅したパーティーを僕は忘れない
ひんやりと感じる漆黒の床を熱の篭った足が蹴りつける。
進めども進めども視界に映る風景は暗闇だが、ナオヤ達のスピードに合わせて飛行するカンテラのおかげで足元を崩すというような事はまだ起こっていなかった。
「はぁはぁ、い、今何階層だっけ!?」
息が乱れて苦しそうな紫鬼が聞いてくる。
このゲームではスタミナの概念が数値化されていないので現実の自分と大差がない、しかし中には自身の脳を騙してゲームをプレイできる猛者プレイヤーがいるらしい。
まあ、斯く言う自分も似たようなことができるのだが。
とりあえず紫鬼の質問に答えよう。
「えっと、今は五十層だね」
マップを見てそう告げるナオヤ。
既に刻限である五十六層に近づいているが、体力はまだ二分の一とかなり速いスピードで進んでいた。
流石にモンスターが出てこないエリアだけあってスムーズに進んでいた。
しかしこれでも遅いのだ。
死ぬにしてももっと上の階層を目指すべきなのだ。
そうナオヤのゲーマー魂が言っていた。
たどり着いた階層からのリトライに体力、魔力値の減少化。
流石に迷宮から出れば体力も魔力も元に戻るだろう。
ならばどの階層で死のうがまた入ればいいだけとなってしまう。
そんなバカな話があるわけがない。そうならば四十一層からのスタート固定の方がよりゲームらしい。
つまり考えられるのはペナルティだろう。
減少するエリア内で何度死んだかによってボスとの対決の時、もしくはこの迷宮内にいる間のステータス減少が起こってもおかしくはない。
そうならないためにも極力最上階で死ぬべきだ。
そしてナオヤ達は死ぬ気で走り、結果六十八層にて死亡した。
ナオヤ達は一度検証をすべきと思ったがキリのいい時間だったので後日となった。
次の日、街で消耗品の補給や武器の整備を終えて集まる。
今のところステータス、体力と魔力だがこちらに変化は無い。
やはり迷宮に入ることで何か起きるのだろう。
ナオヤ達は円環の迷宮に足を踏み入れる。
すると運営からの通知通り昨日の階層からのスタートとなった。
そしてその瞬間にダッシュする。
これは予め決めていたことである。
同じ場所に一秒でも留まる事は避けなければいけないから当然といえば当然である。
走りながら自身のステータスを確認する。
思ったとおりだった。
全ステータス5%減少という弱体化が四人にかけられている。
「これって死ぬ度に加算とかされないよな?」
紫鬼の不安も最もである。
もし加算されるのであるなら、加算が5刻みであるのなら、それはとてもではないが攻略しきれない。
四回死ねば20%、体力1000のプレイヤーなら800となってしまう。
この差は致命的である。
ゲームを本気でやった事のあるものならその数値が如何に超えがたいものであるかわかる人も多いだろう。
油断できないのがゲームである。
「まあ、そうなるだろう…せめて次は全ステータス8%減少辺りって祈ろうぜ」
ナオヤは紫鬼にフォローになっていないフォローをする。
なにはともあれ目指すしかないのだ。
「死ぬ気で走るっすよ!」
「そうだな!」
ジャーフルもクロウもやる気である。
「よし!目指すは最上階、八十階層だ!」
「おう!」
ナオヤの掛け声に三人の声が重なった。
こっちがラストの攻撃したのに敵のボスが12とか78とかライフ残ってやられるのって悔しいよね。
その小さな超えられない壁が本当に高く感じる゜(゜´Д`゜)゜




