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INVADER  作者: 青髭
三大迷宮編
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死へ進む迷宮

ナオヤ達の視界が開いた瞬間、映った光景、それは初めて見る光景だった。

そして同時に恐怖が沸いた。

今までの、二層から四十層は至る所が岩肌でゴツゴツとしていて赤茶色もしくは溶岩の出ている所が赤黒くなっていて比較的に明るいイメージがあった。

しかし四十一層は全く違っていた。

従来の迷宮(ダンジョン)に設置されている照明器具も無く真っ暗なのだ。

音も無く、ひんやりとした空気だけが漂っている。


例えるなら地獄…というほどでもないか、どちらかというのなら真っ暗な洞窟だろう。

ん?そのまんまだな、まあいいか。


「紫鬼、一回だけファイアショットを撃ってみてくれ」


「光だな、ファイアショット!」


紫鬼の頭上に火の玉が現れて一時的に辺りを照らし出す。

明かりが無いから真っ暗だと思っていたがどうやら違ったようだ。

床も壁も天井も全て漆黒の石材で整えられ作られている。


普通に鑑賞するだけなら結構綺麗だ。

そんな事を考えていると四人に同時にメールが届いた。

差出人は我らが運営様である。


『四十層突破おめでとう。今後、この迷宮(ダンジョン)が攻略されるまでの間、到着した階層からスタートできる権利を獲得しました。そして効率よく進むためにアイテム、カンテラをプレゼントします。こちらは手に持つことも持たないこともできる優れ物です。どうぞお使いください。それでは引き続き迷宮攻略をお楽しみください』


とりあえずプレゼントされたカンテラを使ってみることに。

オブジェクト化すると長方形の銀色のカンテラが現れた。

ダイヤルのようなところがあったのでひねってみる。

するとカンテラに明かりが灯り範囲は小さいが周りを照らし始めた。


紫鬼は出しっぱなしにしたファイアショットを消す。

向こう側に放っても良かったのだがここで何が起きるのかわからないのにそんなヘマをする訳にはいかない。

何事も慎重であるべきだ。

まあ、たまのドジはご愛嬌。


全員がカンテラをつけるとそこそこの明かりになった。

自分達の回りぐらいはわかるようにはなった。

配置としては四人を囲むように宙に浮かせることにした。これでちゃんとついてくるらしいので便利である。

準備はできたのでナオヤが剣を構えて先頭に立ち進んでいく。

カンテラがあるがナオヤの視界の先には暗闇が広がっている。


…しばらく歩き回り探索をして不可解なことがある。

それはモンスターと一向に会わないのだ。

前までの階層では波はあったものの少なからず出てきた。

それがここでは静寂を保っている。

聴こえてくるのはナオヤ達の足音ぐらいなものだ。


「みんな、もう少し探索をして階段が見つからなかったら一度休憩がてら状況を整理しよう」


ナオヤのこの提案に反対する者など居らず、三人とも頷く。

そしてしばらく歩き、案の定階段を見つけたのだった。

当然次の階へ行く四人。


更に進んで行き現在は四十四階層に到着した。

ここでもただひたすら歩いていくことしかしなかった。

モンスターが出なければ必然、迷宮(ダンジョン)とは宝箱を探して奥へ進む作業が残るだけだ。

後はたまにあるトラップを回避することだろう。


と、ナオヤも流石に剣を鞘に戻して歩いていた時だった。

ジャーフルが大声を上げたのだった。


「あっ!?」


静寂の中の突然の大声とモンスターの出ない油断からジャーフルを除く三人は驚きのあまり各々武器を構えて最後列で歩くジャーフルの方を向いた。

そこには特にモンスターが出た訳でもなく、真っ直ぐに前を向いたジャーフルが驚いた顔をして固まっているだけだった。


「ジャーフル?」


心配半分驚き半分でナオヤが声をかけるとジャーフルは右人差し指で自身から見て左横手前辺りを指差している。

三人共指を指す方向を見る。

そこには何もなく、強いて言うならば指が指した延長線に迷宮(ダンジョン)の壁があるぐらいだ。


「何が言いたいんだ?」


今度は紫鬼がジャーフルに聞く。

要領を得ないジャーフル、何をそんなに驚いているのか。

未だにあんぐりとしているジャーフルに痺れを切らして紫鬼がアクアショットをお見舞いする。

当然弱く加減はしてある。


「ぷはっ!?」


「ジャーフルどうした?」


ナオヤが再び質問をする。

今度は大丈夫なようでジャーフルが口を開いた。


「な、なな、ナオヤさん」


「なんだ?」


「視界のパーティーを見てみてください」


言われたとおりに見てみる。

まさか一人増えてるとかホラーなことじゃないだろうなと見てみるがパーティーは四人と問題はない。

体力ゲージもオールグリーンと弱体化もされていない。


「ジャーフル特に変わった様子は無いぞ?何が言いたい…」


と、言いかけた時、ナオヤの視界で体力ゲージの最大値が減ったのを目撃した。

咄嗟に自身のステータスを確認してみる。

ナオヤは口をあんぐりと開けた。


「ナオヤ、何が起きたんだ?」


「二人共、自分のステータスを至急確認してみてくれ」


言われた通り紫鬼とクロウもステータスを確認する。

すると、なんということだろうか。

体力、魔力ゲージの最大値が少しずつではあるが減っているのだ。


つまり、この迷宮の上層エリアはモンスターが出ない代わりに居れば居るだけ体力と魔力の最大値が減って行くというなんとも恐ろしい場所だったのだ。


現在、四人の体力は四分の三ほどとなっていた。

前エリアでレベルは上がってはいるが既に四分の一が減っている。

四層上がる度にこれでは五十六層で全員お陀仏である。


「階層毎でスタートできるっていうのはそう言うカラクリか!」


「とにかく行ける所まで走るぞ!」


四人はダッシュで迷宮(ダンジョン)内を駆け出した。


「こんなことだったら定期的にステータス見とけば良かった!」


「仕方ないよ!なにせここへ入ってからモンスター出ないからレベルも上がらない!ステータス確認することなかったからね!」


紫鬼が後悔を口にする。

それをフォローするようにクロウが言った。

事実そうである。普通ステータスをいちいち確認することは無い。

レベルが上がったり装備を変えたりした時ぐらいなものだろう。


この迷宮(ダンジョン)はタチが悪い。

そう思った四人だった。

迷宮紹介その一

第八迷宮・円環の迷宮


「この迷宮はジャゴブ火山の火口に出現した塔状の迷宮である。主に二つのエリアに区切られており、一つ目は誕生を表すエリアで二階層から四十階層が該当する。ここでは床、壁、天井と言った四方八方からモンスターが出現するエリアとなっている。エリア形状はゴツゴツとした赤茶色の岩肌で所々から溶岩が吹き出し、流れ出ている。二つ目は死を表すエリアで四十一階層から七十九階層が該当する。ここでは一切モンスターが出ない代わりに少しずつではあるが体力、魔力の最大値が減っていくエリアとなっている。エリア形状は床、壁、天井が同じ漆黒の石で舗装された形状になっている。しかし明かりが一切無く明かりを灯すアイテムなどが無いと進むのを躊躇ってしまう」

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