下手したら無限ループ
街に戻ってきてしまったナオヤ達は急いで迷宮に戻る。
道中のモンスターなどお構いなしである。
それでもしつこいモンスターはナオヤが鬼の形相で斬りかかる。
急がねば先を越されてしまう!
足を極限まで動かして走る。
その成果もあってか数分でジャゴブ火山までたどり着いた。
しかしまだ迷宮に入っていない。
「あと少しですよナオヤさん!」
「ああ!」
気を引き締めて加速する。
人間頑張ればできないことなんてないとゲーム内で知ったナオヤだった。
しばらくして第八迷宮の入口が見えてくる。
そして人影も見える。それも知っているプレイヤー達だった。
ハイレーンは他のメンバーを一望すると声をかける。
「さっきはヘマをしたけど今度は慎重に行くわよ」
「うっす」
「はい」
メンバーが頷く。
「ん?」
ハイレーンが前方から迫り来る集団に気が付く。
最初は小さくて分からなかったが直ぐにその正体に気が付く。
「あっ!」
しかし時すでに遅し、そしてタイミングが悪かった。
迫り来る集団は門の前にいるのがハイレーンとわかると武器を構えて迫る。
「え、ちょっ、まっ!」
「邪魔!」
ハイレーンの呼びかけも何処へやら。
ナオヤ達の攻撃が炸裂する。
流石に一発で倒せるほど弱くない。
なので迷宮と火口の隙間ギリギリに突っ込んだ。
そのまま落ちていくハイレーン達。
「お、覚えてなさいよ~!!」
ハイレーンは断末魔を上げながらマグマへと消えていった。
ナオヤ達は何事もなかったかのように迷宮に入っていく。
最初の部屋はトラップがあるので一気に走る。
二階層に到着。
走る。休憩する。走る。を繰り返しながら最短で遅れを取り戻す。
最早モンスターは眼中にない。
エンカウントしても本気で逃げる。
道中で他のプレイヤーを見かけるようになった。
もうここの迷宮も名前がサイトに載っているに違いない。
そんな余計な事を考えるほどには落ち着いてきたナオヤは一度現状を確認することにした。
現在四人がいるのは三十八階層だ。
「もうすぐそこだな」
「ああ、一気に行こう」
そして戻ってきた四十階層折り返し地点。
再び三つの階段と対峙する。
今一度問題の描かれた紙を見る。
三つの円に蛇の絵、三つの円がこの三つの階段を示しているのは分かる。
問題は蛇の絵だ、これがヒントなのはわかるがなんなのかがさっぱりとわからない。
「思ったんだけど蛇はリザードマンを示しているとかは?リザードマンと一緒に入ると…あ、無理か」
紫鬼が提案を言って途中でやめる。
それもそうだリザードマンが必要ならもう二人もいるのだ。
「一ついいか?」
クロウが手を挙げた。
なにか思い当たったようだ。
「こんな単純でいいのかはわからないけど、ここって円環の迷宮だろ?」
「そうだな」
「円環、蛇…ならその紙はウロボロスを表してるんじゃないのか?」
「ウロボロスってあの自分の尻尾を噛んでるドラゴンの?」
「ああ、確かに…」
クロウの助言に三人ともなるほどという顔をする。
「その線であってるかもな、ただどの階段を行くかだが…」
「そこは真ん中だと思う」
「なぜそう思うんだいクロウ?」
再びナオヤがクロウに聞く。
すると紫鬼が気がついたようだ。
「あっ、なんて言いたいかわかった」
「多分紫鬼が思いついたことであってると思うよ」
「真ん中だろ?」
「正解、そのはずだよ。理由としてはさっきも言ったウロボロス、ウロボロスは無限を司るドラゴンなんだ。無限のマークって分かる?」
「ああ、そのぐらいは」
ナオヤは空中に無限のマークを描く。
見ようによってはメビウスの輪にも見えなくはないが今はどうでもいい。
「そこでなんだけど、紙には円が三つなんだこれで無限を作ろうとすると一つ溢れる」
「その余った円が正解っすか?」
「だったら答えは右だな。なにせ左がダメだったんだから」
ナオヤがそう言って進もうとするのをクロウが止める。
疑問を浮かべるナオヤ。
「待って欲しい。確かにそうも取れるが行く前に聞いて欲しいことがある」
ナオヤは立ち止まりクロウに向き直る。
「まあ、これも安直なんだけど此処は円環の迷宮だろ?それでこの三つの円でちょっと強引だけど無限を描くと真ん中の円でクロスする。そこで思ったんだ、左右の円は円環、つまりは繰り返しを意味してるんじゃないのかってね」
紫鬼がうんうんと大きく頷いている。
ジャーフルはまあなんとなくわかったかも的な顔になっている。
要は曖昧な感じだ。
クロウが続ける。
「だから右に行っても左に行ってもまた一階層からやり直し、つまり初めからってわけ、つまり正解は真ん中」
クロウの説明にナオヤもジャーフルもなるほどと頷く。
ナオヤ達は真ん中の階段に足を踏み入れたのだった。




