番外・だれかの手記その二
漂流二日目
現れたのは敵では無かった。
巨人種の男だった。
風貌は体中に重装備を着た状態だった。
鎧に付いたギルド紋章を見ると彼、バウワウがどこの所属か判明した。
彼は十傑ギルドの第二位である広大なる山脈のメンバーのようだ。
彼も自分と同じく気がついたら此処に居たという。
つまりはここがどこだかわからないのだ。
仕方なく辺りを探索していると森を抜けた。
そこには鋪装された道があった。
スキルでリザードマンになった自分は道なりに偵察に行くと言ってバウワウと別れた。
しばらくすると人がチラホラと見えてきた。
と言っても皆馬車や馬に乗っている。
やはり自分が珍しいのかジロジロと見られる。
何せ輝くリザードマンだからな。
更に歩いていくとドデカイ街に着いた。
本当にでかい。
かなりでかい。
門も大きい。とりあえず門のところに立っている門番に話しかけてみる。
ここはどこかと聞くと此処はエスクド王国の首都、シュナイデンというそうだ。
どうやら自分は旅人かなにかだと思われているようだった。
あれこれ聞いたあと快く入れてもらえた。
どうやら今はエスクド歴、1211年らしい。
気づいてはいたがここに来るまでに亜人種はほとんど見ていない。
理由としては此処がヒューマンの国だということだろうか。
それと九年前に二百年に及ぶ魔獣対戦が終結したようで今は平和なようだ。
既に残党も狩られているらしい。
良くは分からなかったが一つだけわかったことがある。
ここは!
異世界なんだ!!!
心臓は高鳴り興奮して足が早くなる。
門をくぐればそこは異世界の街並み、なるほどなるほど、実に好ましい中世風である。
もしかしてここから自分の活躍劇が始まるのかもと思うと体が熱くなる。
と、視界に路地裏へと引きずり込まれるボロ布を纏った老人の後ろ姿を目撃してしまった。
さっそく活躍する出番と思ってその路地裏へ入る。
思ったとおりガラの悪い男がか弱い老人を揺すっている。
それにしても妙な老人である。顔に白い髑髏の仮面をつけている。
ガラの悪い男もそれを指摘していた。
しかし弱々しいのは変わらず、揺すられている。
「やめとくれ~それはワシの唯一の財産なんじゃ~」といった具合で取られたものを取り返そうとすがりついている。
見てみるとどうやら西洋剣を取られたようだ。
ガラの悪い男は「ケッ、お前みたいな老害にはもったいないぜ!」などと言っている。
確かにそうかもしれないがどうせこいつは剣を売る気だろうと思った。
と、ガラの悪い男があることに気づいたようで剣を鞘から抜いた。
なんと剣の刃がなかったのだ。
これには男もびっくりしていた。
仮面の老人は「見ての通りじゃ、わかったら返しておくれ~」とすがりついている。
しかし剣の鞘や柄を見て装飾が良いことに気がつくと持っていこうとする。
自分はここだと思い出て行く。
「待て!」と言って格好良く。
しかし同じタイミングで出てきた男がいた。
こいつも頭に白い髑髏の仮面をつけている。しかも龍の髑髏だ。
しかも同じセリフを言った。
その場に静寂が漂ったのが印象深い。
ガラの悪い男も黄金のリザードマンと新たな髑髏面に言葉を失っているようだった。
仮面の男は「誰だねちみは~!」と自分に指を指してくる。
ガラの悪い男が「ハッ!まさかお前ら、最近噂になってる詐欺集団か!?冗談じゃねぇ、あ、あばよ!」と言って剣を放り捨てて逃げていった。
龍面の男は「あっ、カモが~!」とヘナヘナと崩れる。
髑髏の爺さんは「貴様~!なにしてくれとるんじゃ~!」と言って怒る。
いや、助けようとしただけなのに。
まあ助ける義理もないし助けなきゃよかったが。
「そうだそうだー」と女の子と思える声が突然下から響いてきた。
下を向くとまたまた髑髏面の少女、いや幼女がいた。こちらは山羊の髑髏面だ。
この集団怖すぎるだろ。
そう思っていると髑髏面と山羊面がお腹を鳴らしながらヘナヘナと崩れる。
三人は餓死するー!と言いながらお互いの名前を叫んでいた。
なんだかかわいそうになったのでアイテムにあった食料を分け与えた。
すると三人とも地面に頭をつけて感謝をする。
なんやかんやで仲良くなった。
因みに髑髏面のボロ布を纏っている白髪のおじいちゃんがペランサ、龍の髑髏面のエセ貴族風の衣服を着ている金色の長髪男性がマレンテン、山羊の髑髏面のボロ布を纏った赤髪ショートの幼女がノシディオと言うらしい。
バウワウのことをすっかり忘れていたが明日でいいだろうといういことで今日は彼らのアジトで寝ることにした。
P.S この詐欺集団は三人が全メンバーだそうです。
特殊な加工がしてあって保存状態が良い。




