情報の差は命取り
敵のケットシーとクーシーをジャーフルとクロウが応戦する。
同じ職業でレベルも相手より高いクロウは問題なく戦っているがジャーフルは少し手こずっているらしい。
レベル自体は相手より高いのだが敏捷寄りの職業なので中々相手の体力を削りきれていない。
削ってもヒューマンの男が回復をしてしまう。
どうやら彼は僧侶のようだ。
それを阻止しようとナオヤと紫鬼が動く。
勿論ハイレーンはナオヤを狙ってくるが紫鬼が邪魔をする。
「大人しく引き下がりなさい!マジックショット!」
「マジックバースト!」
ハイレーンのアビリティを紫鬼が強化版で吹き飛ばす。
職業のいくつかはレベルを50上回ることで既存のアビリティを強化するものがある。
魔術師がそのひとつである。
「チィッ!」
「へっ、どうした!」
「後ろは任せたぞ紫鬼!」
「いつもどおりだな!」
紫鬼は足って一直線にハイレーンの元へ向かう。
そして杖をおもいっきり振り上げると一気に振り下ろす。
「そい!」
「ちょっと!」
ハイレーンも黙っているわけではない。
こちらも杖を盾にして攻撃を防ぐ。
「離れなさいよ。魔法が撃てないじゃない!」
「撃たなくていいよ!」
ハイレーンが離れようと後退するが紫鬼がそのまま前進する。
痺れを切らしてハイレーンが蹴りをかます。
紫鬼がそれを回避しそびれて床を転がる。
「喰らいなさい!最大出力よ!マジックアロー!!」
「ッ!仲間を巻き添えに!」
咄嗟に紫鬼がクロウを庇う。
ナオヤはヒューマンの男を後一歩だったが後退してジャーフルの盾になる。
「ナオヤさん何を!?」
「まあ見てな」
「血迷ったな攻略者!」
ハイレーンの最大級のマジックアローが辺りを襲う。
あまりの多さに光で目がくらむ。
マジックアローの光が収まるとハイレーンの勝ち誇った顔が曇る。
「なん…だと…!」
ハイレーンの仲間は今ので消えた。
しかしナオヤ達四人はゆっくりと立ち上がる。
「紋を知ってたのは良かったけれど少し詰めが甘かったね」
ナオヤと紫鬼が自身の胸を曝け出す。
ナオヤは胸全体。紫鬼は左胸。
そこには紋が刻まれていた。
「これは対魔の紋って言って魔法攻撃に対する耐性を持つことができるんだ」
「そんな…」
ハイレーンの顔がさらに曇る。
紋は知っていても何があるか知らなかったようだ。
左足を後ろにずらしながら後退しようとする。
「さて、じゃあさようならだ」
ナオヤが剣を構える。
ハイレーンは諦めたのか棒立ちになってナオヤの攻撃を待っている。
「気合の一撃!」
そのままナオヤは直進してハイレーンを切り裂いた。
ハイレーンは霧散して消えていった。
これは後で聞いた話だがハイレーン達は迷宮を潜る相手を狙うプレイヤーキラーだったようだ。
ああ言う風に敵を煽って戦闘に持っていくようだ。
しかもレベルの高い相手を狙うようで迷宮攻略者はうってつけだったのだろう。
と、余分なことはあったが無事に二十層を抜け出して遂に四十層に着いたのだった。
四人とも疲労が貯まっているので休憩を挟むことにした。
丁度お腹も空いて来ていたので一度ログアウトして飯にすることにした。
交代で休憩を取らないとアバターを狙われてしまうので二人ずつ。
最初はナオヤとジャーフルと決まった。
理由はレベルが一番高いナオヤと一番低いジャーフルとバランスを考えての事だ、それに戦闘職と魔法職が残っていたほうがモンスターが来ても対処できるだろうといいうこともある。
「それじゃまた後でな」
「後でっす!」
さて飯は何を食べようか。
そんなことを考えてナオヤはログアウトした。




