迷宮攻略戦其の弐
ナオヤとライジオの目が合う。
正直逸らしたいが何故か逸らすことができなかった。
「貴様はこのゲームを何故やっている?」
ライジオがそんな一言を放った。
何故やっているのか。
さて、なぜだろうか?
たかがゲーム、されどゲーム。
ナオヤはこのゲームを見つけた時の事を思い出した。
何となく以前やっていたゲームを攻略し尽くしてしまい別のゲームを探していた時だ。
オンラインゲームの情報が多く載っているサイトの隅の隅にそれはあった。
良くありそうなそのゲームは最初は別段気になるわけでもなかった。
本当に気まぐれだったと思う、クリックしてページを開いてみた。
結果は残念だと言って良かっただろう。
まずゲームの画像が無い。テキストのみの紹介だったのだ。
他にも制作側が不鮮明。
これだけでも他の人たちはページを閉じたことだろう。
まあ、ログインしてみれば結構な人数が居たが。
テキストを読んでいると想像力が掻き立てられた。
ログインしてみればそれは想像以上で興奮を覚えた。
今でも興奮は残ってる。
人間とはなんとも簡単な生き物だ、そうだ、古参で最強を目指すのだ。
ならば、目の前の壁は高ければ高いほどいいのだ。
ナオヤは足に力を入れる。
膝を持ち上げて床の感触を感じる。
背筋を伸ばして前を見据える。
ライジオも立ち上がり横に並ぶ。
紫鬼も慌ててこちらに並んだ。
おかしな奴だ。
「このゲームを何故やってるかって?そんなの決まってるじゃないか」
「ほう?聞かせてみろ」
「楽しいから!これだけあれば人は遊べる!!」
ナオヤはそう言うと走った。
目指すは迷宮ボス、騎士王。
紫鬼もライジオもやれやれといった感じで援護を再開した。
ナオヤは考える。
騎士王の武器破壊に対抗するにはどうしたらいいか。
あれを喰らえばひとたまりもなく、武器に限らず武具も壊されるだろう。
十三連激に耐える装備は現時点では無い。
だったら残っているのは1つしかない。
ナオヤは拳を強く握り締める。
そのまま加速して騎士王に近づく。
「硬拳!!」
戦士のアビリティである『硬拳』を繰り出す。
今までは剣で戦っていたので使うことがなかった。
硬拳を使うと両拳が少し光りエフェクトがかかる。
「武器が壊されるなら体で来たか、確かにそれは正解だろう。だが拳程度でこの騎士王が負けるとでも!?」
騎士王が迫り来る拳を左に避けて剣を上げる。
ナオヤは隙だらけでこのまま振り下ろせばナオヤの負けである。
しかしそうはならなかった。
「ッ!?」
騎士王の動きが止まる。
足元を見ると魔法陣が展開してあり、そこから光の鎖が自身を縛っていた。
魔術師のマジックチェインだ。
騎士王は横目に紫鬼とライジオを見る。
紫鬼が杖を構えている。
ならライジオは!?
騎士王はライジオを見る。
ライジオも杖を構えておりどちらが仕掛けたかわからない。
てっきり魔法による攻撃が来ると思ったが違った。
「よそ見してんじゃねぇ!!」
「ッ!?」
「硬拳」
ナオヤの拳が騎士王の顔面を目掛けて迫ってくる。
目前に迫ったところでマジックチェインのタイムリミットが来るがもう遅い。
拳はもう来ているのだ。
ナオヤの拳は騎士王の顔面に直撃する。
「ぐはっ!」
クリティカルエフェクトが掛かったので普通より体力が減る。
ナオヤの硬拳が直撃して騎士王が後方に吹き飛んだ。
騎士王が立ち上がり態勢を整える。
「いくらクリティカルが出たところで所詮は硬拳、そこまで…ッ!?」
そこまでの減りは無いと言いかけて騎士王が驚きを顔に浮かべる。
レッドゾーン、騎士王の体力ゲージが赤色に変わり残りが少ないのを示している。
「なぜ!?」
おかしい、いくらクリティカルが出たとしても多すぎる。
「ッ!まさか!!」
騎士王が紫鬼とライジオの方を見た。
「紫鬼、どうやら騎士王が気づいたようだ」
「そうみたいだな、ライジオ」
2人は笑う。
騎士王は気づいた。
先程、紫鬼とライジオ両方が魔法を使っていたことに。
「マジックブーストか!」
「正解」
「だから余所見してんじゃねぇ!」
騎士の剣を装備したナオヤが突撃する。
騎士王も応戦する。
「舐めるなぁ!」
この一撃で勝負が決まるとライジオは思った。
互いに体力も残り少ない。
どちらが勝ってもおかしくはない。
ナオヤと騎士王の剣が交差し互いに後ろ向きになり動きが止まる。
「勝ったのはどっちだ!?」
紫鬼が叫ぶ。
紫鬼も叫んだつもりはなかったのだろう。
しかし声が出てしまったのだ。
2人はナオヤと騎士王の体力ゲージを見る。
減っているのは…。




