浅はかでした
倒すと決めたが現状では不可能である。
まず個々のレベルの低さ、このゲームでの動きの慣れが不十分である。
しかしあちらは50レベルという化物っぷり、この差を埋めるのはかなり厳しい。
ナオヤはふと思い出したことがある。
先ほどの遭遇戦でのことだ、ライジオが放ったマジックショットでオーガロード・リッチは1のダメージを受けていたのだ。
マジックショットは敵に30の固定ダメージを与えることができる魔法だ。
つまり単純に考えてオーガロード・リッチの耐久値は29なのだ。
しかしながら疑問である。レベル50であるオーガロード・リッチが耐久29しかないのは違和感を覚える。
腐ってもオーガなのだ。骨だけど。
「ライジオ、急所鑑定の事を聞いてもいいか?」
「あ?急所鑑定?あれは学徒のスキルだ、相手の急所を確率で見つけることができる…って、なるほどな、てめぇの考えがわかったぜ。レベル50のバケモンが耐久29ポッチじゃおかしいってことだろ?」
ナオヤは頷く。
それを聞いていた紫鬼も何かを悟ったらしく。
先程までの怯えとは違い真剣な表情に変わる。
「それについては説明可能だ。他のモンスターでも試したからな」
「それって?」
「いいか、このゲームでもクリティカルはある。それとモンスターは部位によって弱点が設定されている。しかも弱点を突けば耐久値は4分の1だ」
弱点、つまりそこなのだ。
オーガロード・リッチがどの程度の耐久なのかはわからない。しかし弱点をつけば攻撃が通る。
そしてクリティカルで更に通すのだ。
「水を差すようで悪いが言っとく、俺のマジックショットだけで奴に1食らわせたわけじゃない。それに途方も無いしな」
「と言うと?」
紫鬼が聞き返す。
確かにそうである。いくらクリティカルが入ったとしても2倍ぐらいだろう。
まだ何かあるのだ。
「学徒のアビリティに威力小上昇がある」
「さっき見た時にはそんなものはなかったと思うが?」
これはどういうことだろう。
バグかなにかか?バグというのなら既にヤバいバグが街の入口に出ているが。
「そんなはずはない、どれ、もう一度可視化してみよう」
ライジオは再びメニューを開きステータスを見る。
そこには確かに4つのアビリティが存在する。
「やはり4つあるな、見せてやる」
可視モードに切り替えてウィンドウをこちらに向ける。
ナオヤと紫鬼は再び疑問を顔に現す。
やはり3つしか表示がない。
「ライジオ、見てみろ」
ライジオは言われたとおり自分にウィンドウをこちらに戻す。
そこには先程まで表示されていた4つ目が消えていた。
そこでやっと理解した。
ライジオは二人を見る。両者とも理解したようだ。
「なるほどな、他人に見せられるアビリティは3つまでか…」
再び腕を組むライジオ。
何か考えているのだろうか?
「まあ、疑問は解消できたので先ほどの続きだ、威力小上昇は10~50の間でプラス補正が付く、貴様らを助けた時には43だった。しかもクリティカルも出ていたから単純に計算して103の威力があった訳だ。奴の耐久は102でその4倍…408から411ってところだな」
ナオヤは考える。
決定的なレベル差、これはこちらも上げれば問題はない。ただ50はまず無理だ、せいぜい25前後だろう。
耐久値が約400ならば他はどの程度だろうか、魔力はその3倍はありそうだ。
種族的にしてみても魔力が群を抜いているはずだ、だからと言って筋力がないわけではない。
相手はオーガロード、さしずめ大鬼の支配者だろう。ならばリッチということも踏まえても次に高いのは筋力ではないだろうか?
…いや、待て待て、筋力に魔力が高い?
普通どっちかでしょ?あれ?これ勝てるのかな?
少し補足です。
種族で手に入るのがスキル、職業で手に入るのがアビリティです。
ステータスのスキルスロットには両方表示されます。
紛らわしくてわかりづらくてすいません(笑)




