カット成功⁉︎
切りそろえた触手を見つめて、その女性…?は前を見たまま固まっていた。
その女性の横に立ち、ジロジロと女性の身体つきをみつめる、端からみればただの変態の俺に気づきその触手と俺は目があった。
目があってしまった。
死の予感から逃れられない俺は、もうどうにか許してもらいたいのに、恐怖で足も口も頭すら動かなく、ロング片手に完全に止まってしまった。
「…す、すごい…」
「え?」
女性の呟きに俺は耳を疑う。
この人今なんて言った?
てか人なの?
違うでしょ?
え?
そんな場違いな考えが頭の中を支配してる中、女性は続けた
「全く痛くありませんでした!初めて切ってもらったのに痛くないです!やっぱり噂通りのカリスマなんですね!」
語尾にハートでも付きそうな上機嫌な触手の女性。
俺はよくわからんが上機嫌な女性を見て、とりあえず上手くいったことに安堵する。
「ではこのままボブ調にカットさせてもらいますね?」
「はいっ!」
元気な返事が聞こえ、なんとなくホッとした俺は、とりあえずカットを終わらせようとロングナイフを手にし、先ほどと同じように勢いよく切りつける。
両サイドが同じ長さにカットされた。
これは何故だかわからないが、切りつける度に刃が薄緑に輝きを帯び、一振りすれば思ったところが思ったように切れるようだ。
さすがにこのままパッツンではまずいかと思い、セニングを使い髪(触手)を梳いていこうとする。
そしてまたも驚愕する。
セニング、一般的にスキバサミと言われる鋏なのだが、これもまたロングと同じようにどう見ても鋏では無い。
なんといえばいいのか、歯の荒い銀のノコギリのような物になっている。
少し短い刃渡り40センチ程のその元スキバサミ、元いノコギリはこれまた綺麗な銀色だ。
これで…すけるのか?
だが、ロングの例もある様に、もしかしたら上手くいくかもしれない、そう思いとりあえず振ってしまおうと決めた。
何故か謎の自信があった俺は、そのままその女性の触手の先を左手の人差し指と中指で挟むとスキバサミ(ノコギリ)で触手先をかすめるように振り下ろす。
また不思議な薄緑の光がスキバサミに帯びる。
…やはりセニングのように触手先が自然にすくことができた。
そのままの勢いで触手先を綺麗に梳き、少し毛量?を調整し仕上げた。
「…どうでしょうかお客様…?」
恐る恐る聞く俺に、触手の美人は
「感動です!こんなに綺麗にしてもらえるなんて!もう絞め殺したい位に感動しました!ありがとうございます!」
…いま不穏な発言が聞こえたのだが。
うん。何も聞こえなかった。
うん…どうしようか…。
俺の死はどうやらそろそろらしい。