美人
意を決してロングを手に取る。
先ほど手にした時よりも何故かしっくりきた元鋏を、俺はなんとなく逆手で持つ。
理由はない。
なんかかっこいいからだ。
俺はもしかしたら案外余裕なのかもしれない、と自分の中で囁きながらそのロングナイフを触手に向かって勢いよく振り切った。
その瞬間ロングナイフに淡い薄緑の光が灯り、その輝きを帯びたまま触手をすんなりと切り取った。
血も出なく、切られた当人も特にリアクションがない。
人間で言うところの頭の半分ほどの部分を、俺は一振りで切り落とした。
そんなにまとめて切るつもりはなかったのだが、何故か半分切れていた。
今触手は半分長くて半分短くなっている。
短い半分部分に目をやると、今まで隠れた体も出てきた。
…あきらかにそれは俺の知っている身体つきだ。
女性の体だったのだ。
それも見えてはいけない部分は布で隠してあるだけの非常に露出が高い格好である。
…少し興奮した俺の頭をしばき倒したい。
顔も見えているが、どうやら触手が無ければ非常に美人な女性…女性といったいいのか?
だが性別上女であることは間違いない。
そしてそれと同時に不安が走った。
女性の髪型へのこだわり、大切さは痛いほどわかっていた。
それを勢いだけで頭の半分の部分を、人間でいう顎部分までいきなり切りそろえてしまった。
しかも痛みも感じたかもしれない…
「あ、死んだ…」
その瞬間に感じたのは確かな死の予感。
開始5ページで死ぬ話。
にはならないのだが。