日常→非日常へ
「うわああぁぁぁいだっ!…なんだ…夢か…」ベッドから跳ね起きた衝撃で肘を強打した。痛い。
今日は2045年5月18日木曜日。天気は晴れ。
いつも通り、ひとりで朝飯を食べ、シャワーを浴び、準備をして高校に通う。両親が8年前に離婚し、さらには一緒に住んでいた母親が5年前から海外に転勤になって年に2,3回しか帰って来れないらしい。なので5年間、俺はほぼ一人で暮らしてきたことになる。アパートの家賃などは母親が毎月口座に送ってくれるので特に生活がギリギリなわけでもなく普通に過ごせていた。今日も変な夢と肘の痛み以外はいつも通りだ。「さて、そろそろ行きますか!」と、玄関を開けて外へ出る。戸締りをして歩いて高校に通う。ちなみに成績は良くもなく悪くもなくで、留年はせずに済んでいる。
その日はいつも通り授業を受け、昼飯を食べ、いつも通りのありふれた一日を過ごしていた。ただただあの夢が心に引っかかっていた。「なーにしょぼくれてんの!命らしくないぞ!」「あーもう分かったから!うっさいうっさい!」俺の同級生かつ幼馴染の有倉 水咲も、いつも通り、うるさい。こいつだけだ。いつも通りが鬱陶しいのは。こいつは毎日俺の帰る道を追尾してくる。幼馴染といえど行動には限度があるという事をそろそろ知って欲しい。
授業が全て終わり、俺は家に帰る。もちろん背後にストーカー(みさき)を連れて。そして家の前の曲がり角を曲がった時、にわかには信じ難い事が起きた。彼女だ。夢に出てきた彼女と全く同じ人が俺の目の前にいる。これは偶然なんかじゃない。彼女は正真正銘、夢の中の彼女だった。「天影 命さんですね?昨日夢の中でお会いしましたよね?少し来てもらいたい場所があるのですが…。」どうやら水咲が話を盗み聞きしてたらしく、近づいてきて、「命あの人だれ?知り合い?」といつものトーンで聞いてきた。俺はなんて不運なんだろう。「昨日の夢で会った」なんてもんじゃ信用してもらえないし、そもそもこんなめんどくさい存在に挟まれること自体、不運というべきだ。「そこの女の子…今の話聞いちゃいました?」夢の中の彼女が水咲に聞いた。当然バカ正直な水咲が嘘をつくはずもなく、「うん、聞いたよ?まずかったかな?」と答えた。彼女は少し動揺したように思えたがすぐに冷静になって、「ではそこの女の子も一緒にきてもらいましょうか。」と、独特な優しい声で言い放った。
それが俺と水咲の日常の終わりであり、非日常の始まりだった。
to be continued
1話、もとい2話です。プロローグと連投です。