表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/111

21話

「無事だったか」


 通された部屋で食事をとっていると、アンドレイが入ってきた。


「そっちも大変だったんじゃないのか」


「城内に篭っている限りでは火力に勝る我々の方が有利だ。敵魔術師の攻撃には苦労したが主力を潰してしまえば問題はない」


「損害は?」


「歩兵が少し。城門を破られた時に少しばかり死んだがまだまだ許容範囲内だ。主力は志願してきた民兵達だったからな、損害もそちらの方が圧倒的に多い。あの街は放棄する事になりそうだ」


 本隊が無事なら別にいいや。というか俺の仕事が増えなければ誰が死のうと構わない。


「あれ、そう言えば殿下はどうしたんだ? 捕まってた間に聞いた話じゃ逃げ切ったみたいだけど」


「それも心配ない。一昨日帝都に向かって出発した。私の軍団も預けたから安全面でも問題はないだろう。ああ、用意できる限り、望むものを褒美に渡すと言っていたぞ」


 ほう、ユレルミはきちんと仕事をしたみたいだな。あとで褒めてやらないと。


「そいつは楽しみだな。にしてもそんな簡単に手駒渡していいのか?」


 半笑いで尋ねてみる。


「銃兵は全員ここに残している。他の連中はまあ、銃が揃うまでの繋ぎだな。それに私を含めて帝都に召集がかかっている。旅をするなら私一人でも指揮できる数に抑えておきたかったということもあるが」


「召集って、ばりばり侵略されてる最中の今? いくらもうすぐ冬になるからって大丈夫かよ」


「私の軍団と入れ替わりで第一軍団が来ることになっている。それに命令なら逆らえないさ」


「へえ。軍人ってのも大変なんだなあ」


「お前も一応軍人なんだがね……」


 呆れたようにアンドレイは言うが、いまいち実感がないんだよね。俺がイメージする軍人と違ってこの世界の軍人は自由度が高い気がするし。


「さて、次は君が話す番だ。事の次第を報告してもらわねばならん」


 任務の一番最初から捕まるまでの事をかいつまんで話す。食いながらだからだいぶ時間がかかった。


「それでは君は古巣に戻るつもりかね?」


「まさか。あっちはだいぶ人遣い荒そうだから戻るつもりなんてないよ。それに古巣っていうほど向こうにいたわけじゃないし、気に食わない人間が多すぎる」


「それはこちらも手間が省けて良かった」


 ここも人遣い荒そうだけどきちんと給料払ってくれそうだし。それに殿下から褒美を貰えるって話だからしばらくはこっち側にいることにしよう。



 話はそれで終わりだった。アンドレイが出て行ってからしばらくして食事を終える。


 にしてもアンドレイ、ちょっと不自然だったな。捕虜になった人間が無傷で帰ってきたってのにあっさりしすぎだ。もし俺があいつの立場だったら拘禁くらいはしてる。立場は圧倒的に俺の方が弱いんだし、何かを隠してるとも思えない。


「なんじゃ、元気そうじゃの」


 食後の一服を楽しんでいると、不愉快な声が聞こえてきた。


「ちっ、生きてやがったか」


「いきなりご挨拶じゃのう。少しはわしにも感謝して欲しいものじゃが」


 いきなり出てきて何言ってんだこいつ。


「お前に感謝する事なんざねえよ。なに、お前俺の役に立った覚えあるの?」


「あ、あるじゃろういろいろ! ほら、帝国語喋れるようにしたりとか! お前さんのその神代級遺物とかもやったじゃろ!」


「全部取引じゃねえか! 感謝して欲しかったら俺から取ったもん全部返せ!」


「なんじゃと!? わしはお前さんみたいなむさいチビの理性なんざ欲しくなかったところをお前がどうしてもって言うから取引してやったんじゃぞ! その事に感謝せんか!」


 チビって言ったな殺す。


 わざわざ剣を抜く必要もない素手でくびり殺してやるぁあああああ!!


「待て待て待たぬか! 落ち着いて話し合おう、な、な!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ