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7話

 おっさんはテーブルの上にいろいろな剣やら防具やらを次々に置いていく。なに、俺にどうしろと?


 次におっさんは灰色の服を手渡してきた。広げてみると、裾が腿の途中くらいまであるシャツだった。えっと、こういうのなんて言ったっけ。ローマって海外ドラマとかに出てくるの。テルマエ・ロマエに出てくるローマ人が着てる服……ああ、トゥニカだ。日本で女の人がよく着てるような色鮮やかなものではなく地味な暗い灰色、生地もなんかゴワゴワしてる。


 え、なに、これ着るの……? どうやらそうみたいなのでとりあえず森で奪った服を脱ぐ。屋内にいても夜の空気は冷たく感じられる。


 頭からトゥニカを被り、腰のところを革紐で縛る。胸とか背中とかすっげーチクチクする。正直最初に来てたTシャツに着替えたい。ちなみにジーンズはそのままだ。



「エル・ショル・デン・リュプブリカ。セレ・アンペラミア・コンスティカ」


 いやだから何言ってるかわからないって。だが俺だって言葉わからないまま五年も海外生活してたんだ。多少のことなら身振り手振りでなんとかしてみせる。


「あれか、この服じゃダメな理由でもあるのか」


 その理由ってのはわからないけど、わざわざ着替えさせるんだからそうなんだろう。で、このおっさんは俺にいろいろ親切にしてくれてるわけだけど、その理由はわからない。おっさんもあの強盗もヨーロッパ系の顔立ちだし、まるっきり東洋人な顔立ちの俺を見て逃亡奴隷かなにかだと思ったのかもしれない。

 まあいろいろ援助してくれるなら状況を受け入れようか。もらえるものはいるものだけもらっておく主義だし。


 次におっさんはテーブルの上に並べられたいろいろな剣を指差した。なんだよ、なに、選べばいいの?


 気になったのはさっきの、絡まった蛇が柄に彫られた剣だ。刃渡りはざっと一メートル……いや、九十センチくらいか。柄は大体三十センチ。手にとって重さを確かめる。大体二キロくらいかな。両手で持つには軽すぎるし、片手で振り回せないこともないけど身体がなまってる今じゃ少し重すぎる。

 刀身の幅は鍔のところで大体五センチ、刃先に向かうにつれてだんだん細くなっていく。切先は完全に刺突用に尖っていた。刃は鍔から拳二つ分は付いていない。戦闘中にこの部分を掴んだりするんだろう。イタリア語でなんか名前ついてたけど忘れた。


 というか戦争に行くわけじゃないし護身用程度でいいんだけど。素人の真似事だけど、ちょっとは剣術をやってたこともあるし。


 というわけで俺が選んだのはサーベルです。柄が約二十センチ、刀身は六十センチってところか。刀身は真ん中あたりから峰側に反っている。柄には柄頭の辺りが刃がついている側に僅かに曲がっている。剣を握る手を保護する枠状のヒルトがついている。刀身の幅は大体三センチくらいか。手に持った感じ、ちょうどいい重さだしこれしようか。これだったら俺が独学で練習していた剣術モドキに使えるだろう。


 もっとも、これを使うような状況に追い込まれたらわりと絶体絶命な気がするんだけど。そうならないことを祈っておこう。

 補助用にソードブレイカーと呼ばれる類のナイフを選ぶ。軍用のサバイバルナイフを少し大きくして、背のギザギザ部分を深くしたもの。このギザギザに敵の剣を引っ掛けて折る。もちろん切ることもできるし。



 テーブルの方でガシャガシャ音がする。顔を上げるとおっさんが今度は鎖帷子やらなにやらの防具類をテーブルに乗せていた。

 正直鎖帷子なんてもらっても重いから着ないし。。普通一見旅人風の不審者に鎖帷子は渡さないだろう。迷わずに鉄で補強した革鎧を手にとった。これならさほど重くないし。防弾仕様のケブラーアーマーより軽ければそれでいい。


 鎧は前側がV字に開いていて、縁に空いた穴に紐が通されている。紐は交差していて、ようするに靴紐みたいな感じになってる。頭を通して紐を引っ張り、ちょうどいい圧迫感を感じるくらいまで締める。


 次に渡されたのは茶色い革製の篭手だ。肘の下辺りから手の甲までを覆うもので、どうやら薄い鉄板を二枚の革の間にはさんであるらしい。それなりの耐久度はあるみたい。



 最後におっさんがくれたのは、裏表で色が違うケープ付きのマントだ。スーパーマンが着けてるような背中だけを覆うものじゃなくて、身体の前面まで覆えるタイプ。左の鎖骨あたりでマントを留める。そのためのブローチもくれた。


 ブローチは五センチくらいの大きさで、なにか動物の牙を象っている。


 マントの表は深緑色、裏は薄い茶色だ。ケープも取り外して裏返すと同じようにリバーシブルになっていた。森の中でこれを着てフードでもかぶってじっとしてればかなりいいところまで隠れられるんじゃないかと思う。


 最後にマントを羽織り、冲野優一・ver異世界が完成。いよいよあのコスプレ強盗のことをとやかく言えるような立場じゃなくなってしまった。

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