6話
久しぶりの更新。ちょっと短め。
一口飲んでみる。なんというか、香草の匂いが強いビール? かなりクセがある。好き嫌いが分かれそうだ。俺は結構好きなほうだけど。
食事中、顔役のおっさんがやたらと話しかけてきたけど、全部日本語で返した。適当に。いや、ここの言葉わからないしさ。食べ終わる頃にはおっさんも諦めたのかなにも言わなくなったけど。
ていうかほんとなんなんだこのおっさんは。よくわからないうちにいろいろご馳走になってるし、言葉もわからない一見して怪しい奴を家に入れるなんて、正気を疑う。
食事中、何度か使いっぱしりっぽい若い男がおっさんに耳打ちして、おっさんが指示っぽいことを出すことがあった。聞き取れた単語は「リュパブリカ」と「アンペラーム」。アンペラームはアンペラウムかもしれない。当然意味はわからない。この二つが一番会話の中に出てきた。とりあえず頭の片隅に単語を記憶しておく。
食事が終わり、ちびちびと酒を舐めていると、奥の部屋の入口でおっさんが手招きしてきた。
なんだろう、とりあえず警戒度MAXだけど。なに、俺絞められちゃうの?
さりげなく腰のナイフに手をかけながら近づく。
おっさんが部屋に入り、ランプに火をいれた。
灯りに照らされたのは、無数の武器と防具だった。
一番多いのは木製の槍で、次に剣が多い。剣はほとんどが両刃で刀身は八十センチくらいが一番多い。刀身の中心には溝が入っていて、柄は木製、柄頭はシンプルな円形がほとんどだ。鍔や柄頭にちょっとした彫刻っぽいものが彫られているのも僅かながらある。あとは片刃の斧か。柄はけっこう長い。一メートルくらいありそうだ。
防具はやはり盾が一番目立つ。縁を鉄で補強した木製の丸盾に全身がすっぽり隠れそうな長方形の盾、下が尖ってる涙滴型の盾もある。そのどれもが赤く塗られているのはなにか意味があるのだろうか。
あとは鎧か。よく想像するような全身を金属板で覆うフルプレートメイルはなく、足元までくまなく保護する鎖帷子が二、三着と、簡単な革製の鎧、胸元だけを保護する金属製の鎧なんてのもある。
あと目立つのは兜か。なんというか、説明しづらいな。あれだ、指輪物語のローハンの兵士が被ってる兜。あれが一番近い。北欧のヴァイキングの兜から角をとった感じ。
兜の中には目元を覆うアイガードの部分が可動するものもあり、そうした兜の多くが竜やらなにやらの意匠を施している。
中でも目を引いたのが柄全体が二匹の蛇が絡み合った意象に彫られている剣だ。刀身にも少しだけ文様が彫られている。刀身の鍔に近い部分には、切っ先の方をさした矢印を二つ重ねた記号が彫られていた。よく見てみると確認した全ての武器のどこかしらにこの記号が彫られている。
なんというか……とても、ルーン文字です。それも北欧のヴァイキングがよく武器に刻んだ戦神を表すルーン。異世界から来たかと思ったら地球上の文化に遭遇するとは。
ということはここは北欧? でもそれじゃラテン語系の言語は話されていないはずだ。古ノルド語はわからないけど、少なくとも現代の北欧の言語はラテン語から発展したロマンス語族には含まれていない……はず。たぶん。
考えたところで答えが用意されているわけでもないし、今直面している問題をどうにかしよう。
つまり、このおっさんはこの大量の武具を見せて俺にどうしろというのか。
戸惑っている感を前面に押し出しつつ、おっさんを見る。
俺の戸惑いが伝わったのか、おっさんはランプを部屋の中央のテーブルに置くと、なにやら武具を物色し始めた。