3話
「トルニに、この鐘楼の上に上がるよう伝えろ。それが終わったら銃を加工しているドベル族の工房行って作業が終わるまで待機。終わったら銃と弾薬を受領してここまで運べ。いいか、俺の銃とヘルネの銃、それと弾薬だぞ」
「了解です!」
ユレルミは初めて指示らしい指示を受け取ったのが嬉しかったのか、意気揚々と走って行った。ああいうやる気に満ちているのは見ていて羨ましくなってくるな。
さてと、俺は鐘楼に登ってのんびりしてようか。鐘楼は高さおよそ三十メートル、城壁までの距離はおよそ四十メートル。城壁は八メートル程度だから十分に戦場全体が射程内だ。
反乱軍は態勢を立て直し攻撃の機を窺っているようだ。城壁の上にはえげつない防御兵器が設置されているから迂闊に近づけないみたい。あっちの攻城兵器は……っと。うん、やっぱり大掛かりな物は持ち込めてないみたいだ。 破城槌が一機と分解式の梯子が……十六か。城壁の近くには反乱軍の死体と一緒に梯子の残骸が転がっている。それも含めれば二十とちょっとってところかな。
軍勢の奥に白銀の鎧を着た集団がいた。数は……四人か。端っこの方でタバコを吸っているのはシェネルだろう。いかにもやる気なさそうで大変よろしい。鎧の上から黒いマントを羽織っているのは八極中学生かな。で、その隣にいるチビはあの新しく召喚されっていう奴か。すぐに頭に血が上る奴だったな。こいつは殺してもいいか。現に今も散々喚いてるようだ。言ってる内容まではわからないけど。
そのさらに奥、頭に包帯巻いて木箱に座ってるのは消去法でクラウディアだろう。こいつも殺していいかな。
にしても、撃たれる心配のない観測任務ってのは実にいいね。しかも向こうは銃を持ってないからいくらでも撃ち放題ってわけだ。まあ流れ矢は来るかもしれないからそれだけ注意しとけば十分かな。
俺が以前勤めていた会社じゃ、警備といえば正規軍の輸送車列の護衛がメインだった。時には正規軍に雇われた輸送会社の車列を護衛することもあったんだけど。
まあそういう時に襲撃されるのは大抵狙撃される事がほとんどだったから本職ではないにしろ多少の自信はある。おまけに今回は交戦距離も百メートルと少し、野外ではないから横風の影響を受けることもない。唯一の不安材料は銃の性能だけど、それはドベル族の腕を信じることにした。
トルニはまだ来ない。あまりにも暇なので一服することにした。
うん、やっぱり手巻きはまだ慣れないな。なんとか巻き終え火を付けたところで、城壁の向こうから喚声が上がるのが聞こえてきた。
攻撃が再開されたみたいだ。うん、ここからだと様子がよく見える。城壁のへりに取り付けられた防御兵器が作動する。防御兵器は全部で三つ、それぞれ違う効果があるようだ。今作動しているのは中央の一つ。どういう原理かはわからないが、丸い石をすごい勢いで飛ばして居た。どれくらいの威力かというと、命中したら上半身がなくなるくらい。すごい。
城壁の上のドベル族も弓やらクロスボウやらで攻撃しているが、なにせ相手の方が数が多い。あっという間に梯子がかけられる。同時に破城槌も移動を開始したようだ。
破城槌とは言ってもただの丸太を運んでいるわけじゃない。車輪付きの屋根の下に先を尖らせた丸太が吊ってあった。屋根の下にはそれなりの人員が隠れているようだ。
屋根には鉄板と革が張ってある。簡単には落とせそうもない。
ドベル族達は破城槌を優先して攻撃している。が、多少の損害は気にせず前進し続けた破城槌はついに城門まで辿り着いた。その頃には城壁の上にもいくらかの反乱軍が展開していた。血みどろの白兵戦が繰り広げられている。
「隊長、こんなところに!」
「おう、来たか。お前は城壁の上に展開した敵兵を狙撃。喚いてる士官か下士官を集中して狙撃。反対側の塔にいとけ」
「え、あ、了解!」
トルニは慌ただしく等を降りて行った。しばらくすると八十メートルほど離れたところに建つ塔の上に辿り着いたようだ。
ユレルミはまだ来ない。俺にできることはまだ何もなかった。




