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4話

人との会話があってもぼっちはぼっちです。まだこれからもぼっちが続きます。

 街道は意外にもしっかりと石畳が敷き詰められていた。コスプレ強盗の格好からして中世暗黒時代くらいの文明レベルかと思ったのだが、意外と進んでいるのかもしれない。

 日が昇る直前から歩き始めたので夕暮れまでには街(だと思う)には到着できるはずだ。まあ到着したところで言葉がわからないのだけれど、なんとかなる自信はある。というかなんとかできないと割とまずいので何とかしなければならない。



 途中途中休憩を入れるが、バカ正直に道の真ん中で休んだりしない。街道から少し外れたところにある藪に潜んで様子を伺うのだ。正直とても面倒だが、第一村人との邂逅が非友好的というか、殺気丸出しだったので警戒するのは当然だろう。ちなみに昨日の夜は単独じゃ不寝番も立てられないので諦めて寝た。なにかが起きた時は諦める。人生何事も諦めが肝心なんだ。



 夕暮れにはまだ早い時間に、街……というか村には着いた。

 なんというか、遠くから見ても、ボロいなあ、寂れてるなあ、とは思ったけど。

 以前読んだラノベじゃ、街と村との違いはボロくても市壁があるかどうか、とか書いてたけどここは市壁がない。間違いなく村だ。とは言っても文明レベルからして時代が違うだろうし、あまり参考にはならないか。



 街道から東に逸れて十分ほど歩く。歩いているのは道というよりも踏み固められた地面だ。建物の向きもバラバラに並んだ村の周囲を覆うように畑が広がっている。何が育てられているかは見ただけじゃわからなかった。

 村に入るまで、畑で働く村人にジロジロと見られた。当然よそ者に対して警戒してるんだろう。敵意があるわけではないが、あまりにも無防備にいると『村』という共同体に食われてしまうかもしれない。時折羽織った外套をはためかせて腰に差した短剣を見せつける。

 コスプレ強盗から奪ったこの短剣はこの時代の一般的な歩兵用の剣なのかもしれない。刃渡りは四十センチほどで刀身はサバイバルナイフの峰のギザギザをなくしてそのままでかくした感じの片刃だ。地球でのサクスと呼ばれる剣に近い。



 村の入口で一度立ち止まり、周囲を見渡してみる。道は村の中まで続いているが、申し訳程度に石が敷かれている。ここがこの村のメインストリートというわけか。五十メートルほど先で一旦道は終わり、この村の中心である広場が広がっていた。

 広場の向こうからさらに道は続いており、村から少し外れたところまで伸びていた。道の先に立っているのは村の建物よりは幾分立派な木造の平屋だ。平屋とは言ってもかなり天井は高そうで、扉も頑丈そうだ。もしかしたら領主の館か教会的な宗教関連の施設かもしれない。


 家といえお間では鶏っぽい鳥がコケコケ歩いてたり、子供が遊んだりしている。いかにも牧歌的な中世の農村といった感じだが、よく肥えたお母ちゃん的な外見の人は見えない。まあこんな田舎だし健康状態は抜群というわけにはいかないのだろう。

 道の両脇では屋台みたいのが出ていたみたいだが、ほとんどが店じまいをしているみたいだった。


 まだ閉まってない屋台の一つを見繕い、客と店主の動きを観察する。

 この店では串焼きと木樽のコップに入った飲み物を売っているらしい。なんの動物かはわからないが、店売りしているものに危険なものはないだろう。

 さらに近づいて今度は客の手元を確認。銅貨を二枚渡して串を二本と木樽を受け取っていた。その客は屋台の隣の飲食スペースと思われるところでおもむろに肉ぐしを食い始める。



 これで食物の値段と買い方がわかった。財布がわりの巾着を取り出し、中を確認する。金貨が一枚に銀貨が六枚、銅貨が四枚ある。これだけあれば十分だろう。

 俺もおっさんと同じように店まで行き、銅貨を渡す。

 何か声をかけられたけど、当然何言ってるかわからん。

「悪いけど言葉わからないよ。おっちゃんこれくれ」

 焼かれている串を指差す。言葉が通じなきゃ身振り手振りだ。確かに不便だがただものを買ったりする時は、ぼったくられるかもしれないが大体これで行ける。

 店主のおっちゃんも言葉が通じないとわかったみたいで、串を二本と木樽をくれた。



 他の客と同じように丸太を切っただけの簡単な椅子に座り、串にかぶりついた。

 ……固い。あんまうまくない。日本だったらクレーム入れるレベル。

 渋い顔をしていると、俺の前に肉を買ったおっちゃんが俺を見ていた。串を持った手で木樽を指差した。

 なんだあのおっさん。

 通じていないことがわかったのか、おっさんは見ていろとでも言うように自分を指差した。

 串に刺さった肉を噛み切り、飲み込む前に木樽を呷る。そしてドヤ顔で俺を見る。なんだあれ。

 ともかく、ただ食うだけじゃなくてこの木樽の中身と一緒に食べればいいわけか。日本にもあんなおっちゃんいたなあ。居酒屋とかで飲んでるとやたらと教えたがるの。今の状況みたいにそれが役に立つ知識のこともあれば、全く役に立たない知識なこともある。

 おっさんの方法を試す前に、俺は木樽の匂いを嗅いでみた。

 ……アルコールが若干入ってるようだけど。何系の飲み物なのかわからない。果物なのは確かみたいだけど。ワイン、て感じでもないしな。

 とにかくものは試しだ、一口すすってみた。

 ……お、おう。なんだこれ、めちゃくちゃアルコール強いじゃんか。ほんの少し飲んだだけなのにカーっと頭が熱くなる。薬草系の味が強いからハーブリキュール的なのかもしれない。

 あ、おっさんが俺を指差して笑ってる。なんだよちょっと驚いただけだよ。

 くそ、これだから田舎者は。上品な都会の飲み方を……いや、それはどうでもいいか。とにかくおっさんのやり方を真似て肉を食ってみた。

 あー。なるほどなあ。

 この酒にどんな効果があるのかわからないけど確かに肉は柔らかくなったし、味も濃厚になった気がする。だけど酒の薬っぽい味のおかげでしつこくならない

。確かにこれはうまい。仕事終わりに食うのがいいな。

 肉串を食べ終わり、木樽に少し残った酒を一気に飲み干した。木樽と串を店に返すと、今度は食料品を買い込むために大通りへ出た。

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