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15話

 生体情報だのなんだのと、やたらと近代的な単語ばかり使うな。今までのこいつの言動から察してはいたけど、こいつもこの世界の存在ではないらしい。



 今の赤毛の姿は、端的に言うと女だ。浅黒い肌に赤髪、服もただのローブじゃなくてその下に妙にぴったりと身体の線にフィットしたものを着ている。


「久しぶりにこの姿になったのぅ。どうじゃ? そそるかの」


「久しぶりにってどういうことだ?」


 赤毛の問いはさらっとスルー。


「わしに個体名のあった頃は女の器に入っておったからの。こうして異世界に出入りする時は先ほどのように男の器に入るのがわしらの世代の流行りじゃった。まあ分かりやすく言うとネナベという奴じゃ」


 はは、ますますこいつの存在が謎になったぜ。なに、ネナベ? なんでそんな単語をファンタジック血みどろ(主に俺が)異世界で聞かなければならないのか。雰囲気ぶち壊しだ。


「ほんとお前は何者なんだ……」


「今知ったところでお前さんに出来ることはなにもないからの。気にするなとしか言えんよ」


 まあそこら辺は気になるのも確かだが、どうでもいいっちゃどうでもいい。


「そうかい。なら早く遺物とやらを寄越せ」


「お前さん、態度ってものがあるんじゃないの?」


 口元をヒクヒク痙攣させながら赤毛が言った。それでもちゃんと籠手を渡してくるあたりいい奴なのかも知れない。……いや、それはないな。いい奴は人が死ぬかどうかって時に弱みにつけ込んで契約を強制したりしない。


「で、この遺物とやらは何がすごいんだ」


 ボロボロになった自分の籠手とたった今自分のものとなった籠手を付け替えながら質問する。赤毛は行儀悪くあぐらをかき、自分の足に腕をついてその上に形のいい顎を乗せながら答えた。


「壊れない」


 ……。


「は?」


 思わずサーベルを抜いて突きつけてしまった。


「や、やめろ今の状態で切られたらわし消滅しちゃう! 大丈夫壊れないだけじゃないから!」


 当たり前だ。その程度で神代級遺物名乗られてもこの世界に対するムカつきが増すだけだし。


「あとあれ、基礎的な体力の向上とか! あとなんか、殴ったらビームみたいなのも出る!」


 なんかってなんだ。というかビームとか物騒過ぎる。ある意味ファンタジーだ。

 呆れて何も言えない俺を尻目に、赤毛は地面に下手くそな絵を書き出した。


 これは……拳か。その先に、Uの底が折り曲げた指に接するような図が書かれている。ちなみにこれだけを描くのに三分以上かけたこいつはポンコツなのだろうか。


「一定以上の力で殴るとガントレットの先から衝撃が放射状に発生する。ちょっとした岩なら砕けるくらいの威力はあるはずじゃ。……あと、絶対にそれ外せない」


 最後に小声で聞き捨てならないことを口走るポンコツ。聞こえてないとでも思ったか?


「先に言え馬鹿野郎殺してやる!」


 慌ててガントレットを外そうとするも、ピッタリと腕に同化してしまったようでびくともしない。


「ま、待て! 大丈夫、今の形状も含めて三つまで形状を記憶させて任意に変えられる仕様になっておる! だからサーベルを下ろすのじゃ!」


 ばっと後ろに飛んで距離を取りながらポンコツが喚いた。

 ふん、大事な事を言い忘れてるのかなんなのか、やたらと情報を隠したがるポンコツにうんざりさせられながらサーベルを鞘に戻してやった。

 言われた通りの手順を四回繰り返し、形状を記憶させる。


 まず右手の方は日常生活用に指輪とメリケンサック。左手はブレスレットとメリケンサック。日常生活にメリケンサックが必要かは分からないと思うだろうが、ちょっとした殴り合いの度に大仰なガントレットに変えてたら俺が笑っちまう。

 にしてもさすがは神代級といったところか。かなり便利じゃないか。試しに壁を軽く殴ってみたら簡単に抉れてしまった。確かに腕力は上がってるようだし、これなら確かにあのトカゲ野郎にぶちかますには十分だ。外せないと聞いた時は不良品をつかまされたかと思ったが。


「あ、先に言っておくが、お前さんが強化されているのは基礎的な体力、というか身体能力のわずかな向上であって耐久力の向上ではないからの。ほ、ほら、先に言ったんだから切ろうとはするな?」


 ビビりながら距離を取るポンコツ。はっきり言ってこいつが何を言いたいのからわからないが、こいつの態度から俺が思わず切りかかってしまいそうな情報って事は分かった。


「どういうことだ?」


 とりあえずで抜いたサーベルで右肩をとんとん叩きながら弁解の機会を与えてやることにした。


「なんというか、あれじゃ。例えばお前さんが強化された腕力の全開で殴ったら腕の関節が耐えきれなくて砕け散ると言うかなんというか……」


 全力で振り下ろしたサーベルは避けられてしまった。



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