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9話

「んな……! 何故です!? そもそもあなた達はこの為に召喚されたようなものなのですよ!?」


「ようなもの、なんでしょ? というか召喚だのなんだのって言ってもあんたらが勝手に召喚したんだ。従う義理はないね」


 他の理由としてはクレモンの態度が気に食わないってのもある。ついでに指揮権の移譲に関する問題もいかにもそれっぽく教えてやる。


「指揮権の移譲については既に諸侯の同意は得ています。とはいえあなた方の言うことも道理、私の方からも軍に掛け合ってみます。なるべく直接戦闘に関わらない形で協力して頂くことになりますがよろしいですか?」


 中川は納得したようだ。小さく頷いている。取り巻きの女どもも異存はないのか黙っている。


「いろいろ言いはしたが、俺の雇い主はそこの嬢ちゃんだ。然るべき待遇と報酬を必ず支払うのならどんな仕事だって受けるよ」


「じゃあ今までのやりとりはなんだったんだよ……」


「命張る仕事なんだからあれくらい言うのは当然だろ」


 それに軍権云々や戦術がどうたらは必要な予防線を張ったに過ぎない。確かに自分を売り込むのも大事だがこんなとこで無茶な期待させて無茶な命令出されても困るし。


 俺の仕事内容は雇用主のエリュシアに任せるとして待遇を決めなくちゃな。


「逃げ出さない銃を扱える兵隊を四十。もちろん諸侯の私兵なんざ論外だからそれ以外で。それと現在最新式の銃を五十。弾薬を一挺につき二百。とりあえずこんなとこかな」


 逃げ出さない、というのは案外厳しい条件だ。この国の軍は常備軍ではなく傭兵が主体だろう。常備軍てのは金が掛かるからな、地球でもいわゆる「国の」軍隊ってのは近代に入るまでほとんど無かったはずだ。

 で、傭兵ってのは戦況が厳しくなると逃げ出すのが当たり前。この城にいるような権力者の私兵はそうでもないんだろうけど、諸侯の兵力はあてにならない。この国を統べる国王陛下とやらの直属の兵隊が妥当なとこだろうか。


 わざわざこれを条件として名言したのは、足元見られて傭兵なんかを充てがわれないようにする為だ。


「兵士についてはなんとかなると思うが魔銃四十挺は無理だ。我が王国でも極少数の貴族しか配備していないのだから」


「そこはなんとかして欲しいんだけどね。ま、いいでしょ。とにかく銃を集められるだけと信頼のおける逃げ出さない兵士、これが俺が仕事をする最低限の条件だ。特に兵士に関してなんだが、下手な傭兵なんか用意しやがったら帝国に寝返ってやるからな。

 あんたもそれでいいだろ?」


 最後にエリュシアに許可を求めた。


「私戦争とか興味ないんでどうでもいいですよー。そっちの助手先輩と違ってこの国に仕えてるわけでもないし、貴方を召喚したのも要請を受けたからで協力してあげてる立場ですしー。研究さえできればそれで」


 つまらなそうにリンゴをかじりながら彼女は答えた。ほんとやる気ねえな雇い主。


「だそうだ。あ、そうそう、俺の報酬についてなんだけどね」


「ま、まだあるのか」


「なに、簡単な事だよ。王都で商売やる許可が欲しい。護衛だのなんだのを専門にやる『警備会社』を作りたいんだ」


「その程度でいいのか?」


遠慮しようかと思ったけど、ここはさらに要求するべきだな。


「あ、あとちょっとした屋敷と使用人と会社の設立資金、王立図書館の年パスもな。確約してくれんなら帝王の暗殺だろうと捨て駒だろうとなんでもやってやる」


というか捨て駒にされるような状況には陥らせない。

ベラベラと要求を出し始めた俺にクレモンはドン引きしながらも了承してくれた。


「わかった。その程度の報酬なら確約できる。指示はエリュシアを通して出す、しばらくはこの城に滞在していてくれ」

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