第25話
いよいよ次回で最終回です。
登場人物紹介
青山 輝樹 平凡な人生を歩んでいた社会人だったが
痴漢冤罪により人生が崩壊し、少年院の特殊な教育施設の教師になる。
進藤 傑 警察の人間で本人曰く上層部の人間らしい。
見捨てられたプロジェクトの後片付けとして施設の責任者になった。
鮎川 茉莉 施設の生徒、未成年にして国内最強のハッカーにして重度のオタク。
堅剛エリカと仲が良い。
堅剛エリカ 施設の問題児、ヤクザの組長の娘で母の罪を自分で被り警察に捕まった。
学力が低く単純だが根は優しい、鮎川茉莉と仲が良い。
山本 椎 施設の生徒だが体調不良でほとんど休んでいた。罪状は毒物による大量殺人。
しかしそれは冤罪である事が判明した。
料理が得意で怖がりな性格
NO.7080 施設の生徒、自分の身元に関する情報を日本人である事と
(ユエ) とある組織にいた番号と愛称の「ユエ」しか分かっていない。
進藤由絵 組織では殺し屋として数百人の人間を殺害したと思われる。
施設では他人と距離を置いている様子である。
本名は進藤由絵で進藤傑の実の娘である。
青山輝樹に関する事件の登場人物
鰆田 桜 青山輝樹を痴漢の罪で告訴した人物で、豊鏡女子高の3年生。
バイト感覚で援助交際や痴漢の冤罪を着せる仕事もしており、月守聖とは敬遠の仲。
青山 美代子 青山の妻であったが痴漢の罪で逮捕をされた事で離婚。
大学のバトミントンサークルで知り合う。
現在古山と結婚して古山美代子となった。
古山 竜 青山と同僚で美代子と共謀して青山を痴漢の罪に陥れた。
山本椎に関する事件の登場人物
好村 香苗 椎と同じバイト先で働き、椎とは仲が良かった。
椎が冤罪を受けた事件の真犯人で
現在は行方不明。
鮎川茉莉に関する事件の登場人物
鮎川 憲吾 鮎川茉莉の父親、ある会社のデータを娘のウィルスを使い初期化し
その技術を海外に売ろうとした所国によって殺害される。
大木 保則 そこそこ名の知れた探偵で今年に入って大木探偵事務所を開業。
茉莉には恩があり父親の行方に関して無料で調査を行った。
堅剛エリカに関する事件の登場人物
堅剛 芳香 堅剛組の組長、堅剛虎鬼門の妻。
虎鬼門が行方不明のため現在彼女が組を仕切っているが
その事実は組全体にしか知られていない。
堅剛 虎鬼門 堅剛組の組長、十数年前から姿を消し今も行方不明。
月守 聖 堅剛組の事務所の隣の麻雀店で働いている、鰆田とは敬遠の仲。
作者の前作「The Reverse Side」の登場人物。
進藤由絵に関する事件の登場人物
進藤 梨花 進藤傑の妻、由絵の母親である。
夫の無愛想な態度に嫌気が差して娘を連れてフリーターの男の元に逃げた。
進藤が23歳の時ミハイルにより射殺された。
野木 大祐 フリーターで中卒の典型的な駄目な男だが女を口説く事の天才。
最終的にミハイルに殺害される。
妹は倒産したニノミ屋の社員だったが真宿で風俗嬢になったらしい。(The Reverse Sideネタ)
ミハイル アリャドフ トラベリンの教官で由絵の担当官を勤めた人物
ロリコンであるが故に実力はあるのに周りから尊敬されない人物
ジョージ トラベリンの幹部、ミハイルの任務の護衛対象。
ゲルヴァエ トラベリンの幹部だがかなり臆病、ユエの任務の護衛対象。
第25話
彼女は今まで黒い殺意をまとっていたが
今まとっているのは悲しみだけの様に見えた。
そして彼女は自分の過去を言う最中で僕や進藤さんが疑問に思った
重役の消失について答えてくれたのだ。
まさか脱出口がもう一つあったとは......もしかすると進藤さんが一度調べた時は
まだその出口はなかったのかもしれない。
「君の過去にあった事は分かった
確かに僕には君の気持ちをすべて理解することはできないかもしれない....
だけど......」
だけどと繋ごうとした瞬間ユエさんは今までにない血走った目をして
僕を威嚇するようにこう叫んだ
「だけど!?だけど何なのよ!
両親に売られ暗殺者として育てられそれにより様々な苦しみを味わい!
今こんな場所に閉じ込められてる私の気持ちなんて貴方には一部も理解することなんてできないわ!
貴方みたいに一人で生きず他人を信じて生きている人間は勝手に私の領域にずかずかと入り込み!
信じている!君は悪くないと言う言葉で私を励ましてくるんでしょうけど私にとってそれはただの嫌味な同情なの!
ここにいる他の人間はともかく私は何百と言う人間に手を掛けてきたの!今貴方の息の根を止める事だって簡単にできるのよ!
そしてずっと私は一人..今まで一人で生きてきたの...だから私はこれからも一人で生きていけるんだから.....
もう二度と関わらないで!私の前から消えてよ!疫病神が!!」
そう僕に叫ぶ彼女は暗殺者の仮面を被ったユエと言う人物ではなく。
ずっと一人で生きてきたと錯覚しこれからもそうやって生きていけると言い聞かせる
進藤由絵と言う一人の少女が初めて僕の前に姿を現していた。
そういえば進藤さんが前言っていた事........。
進藤さんはもしかしたらこうなる事を予期していたのかもしれない。
僕は彼女を真っ直ぐ見据え再び口を開いた。
「君がずっと誰からも思われずずっと一人で生きてきた!?
それは違う!何故なら君の事をずっと思い続けてきた人間がこの世にいるからだ
君はミハイルの話からダイスケと言う男が実の父親と思ったかもしれない。
けどそれは間違いだ!君の本当の父親は.......進藤傑.......。
そして君の本名は進藤由絵だ!」
突然突拍子もない事を話し始めた僕にユエは今まで見せた事がない困惑した顔を見せた。
最初はそんな嘘信じられるわけ......と言っていた彼女だが
すぐさま電流が走ったかのような何かに彼女がビクッと体を震わせると
彼女は黙り込みそのまま言葉を発した.......。
「思えばあの人は私に対してだけ特別な何か感情を隠しながら話している事には気づいてた。
まさかそれが自分が父親であることを隠していたなんて.....夢にも思わなかったけど。
この状況で貴方がこんなデタラメな嘘を言うのもおかしいもの....
あの人が私の父親だったのね....けどそれでもあの人は私が苦しんでいる時に助けてくれなかった!
本当に私を思っていたなら助けてくれるはずよ!
やっぱり私は一人で生きてきたわ!今更父親なんて必要ない!」
「それは違う!!
進藤さんはずっと君の事を思っていたんだ16年間ずっと!
でも進藤さんには力不足であの暗殺組織から君を助ける事がすぐにはできなかった
だからずっと機会を探していて君が捕まったあの事件で進藤さんは自分の娘を取り戻すことに成功したんだ!
そして君のお父さんは今この学校である程度自由な生活をさせ
最終的に君たちを脱獄させ本当の意味で自由な生活を手にいれさせようとしているんだ
確かに君は暗殺組織で死ぬような思いで生きてきたしかしそこでも君はミハイルに見守られてたんだから一人じゃない!
そして今も君は進藤さんに見守られここにいる決して君は一人で生きてきたわけじゃない!
それに.........」
「うるさい!!!」
僕が次の言葉を発しようとした瞬間僕の声を今まで聞いたことの彼女の大きな声で制止し
彼女にとっては凶器として使える鉛筆を取り出し僕に向かってこう言った。
「貴方はそうやって勝手に人の領域にずかずかと入り込んでくる!!
もううんざりなの!ほっといてよ!どうしてほっといてくれないの!!
私は一人で生きてきたの!これからも一人で生きていくの!!
それを邪魔するなら私は貴方を殺す!!
絶対に殺してやるんだから!!私の邪魔をする者は誰であっても殺してやる!!
殺してやる!!殺してやる!!!」
突如机に飛び乗り僕の胸に向かって一直線に突っ込んできた。
確かに僕は彼女の事は分からない事も多いそして彼女はプロの暗殺者。
でも僕には少なくとも今の彼女の心境は手に取るように分かり
その鉛筆が僕の胸を貫くことはないと確信していたので
僕は黙って彼女を見据え続けた。
前にも椎の料理を食べるってなった時命の覚悟をしたっけ。
僕はあの時と同じ人を信じて死ねるなら本望だそう心に思い彼女が僕の胸の目の前に来た時目を瞑った。
ちくりと僕の胸に痛みが走る。
しかしその痛みはすぐに消え彼女が鉛筆を落とすと
今度は僕の腕には血ではなく涙がぽたぽたと垂れ濡れて行く事に気づいた。
「そうよ.....分かってた私は命令がなければ人が殺せない欠陥品.....
自分の都合で人を殺したらあの苦しみが来る事が分かっていてそれが怖くて殺せないの......
それを知られるのが怖くて私は人を遠ざけてた......
だからあの時エリカに喧嘩を仕掛けられた時本当は私怖かった......
あの時貴方が止めてくれなかったら私はどうなってたか分からないし
その後私が椎を攻撃するような事を言ったのは皆を私から遠ざけ恐怖の対象にするため.......
そしたら誰も近づいてこないと思ったから......」
ユエさんが初めて僕に見せた涙と本音。
彼女自身が本当は今殺人ができないのではないかと思ったのは
彼女が過去で話していた
私は上から出された任務は絶対と教育されていたので自分は考える必要はないただ任務どおりに人を殺せば良い
と言う発言と執拗に僕を近づけまいとする態度。
もしかすると彼女は人が殺せなくなっていてそれがバレてしまう事を恐れていたのではないか。
鉛筆が胸に少し刺さった時は冷や冷やしたが僕の想像したとおりだった。
そして彼女は今までに見せた事がない顔を僕に見せ始める。
「それに私学校に来てどうすればいいのか分からなかった.......
そこに命令は授業には毎回出る事しかなく
人を殺す命令もないしそこには組織も教官もいない......
いるのは私を気にしてくるのが逆に怖い教師と前科を持ったクラスメイト.....
私これからどうすれば良いの...人にすがり付くのは怖いし....
かと言って一人で生きていくにもどうすれば良いのか分からない.....
私は一体どうすればいいの........」
今まで溜め込んでいた不安が一気に拡散し
彼女は何時の間にか僕に抱きつくような姿勢になりながら泣いてこれからの人生の不安を語っていた。
確かに僕には彼女の言う様に彼女の今までの人生を全て分かってあげる事はできない
けどこれからの人生を切り開いてあげる事はできる......。
僕は彼女をしっかり抱きしめこう言った。
「もう誰も殺さなくて良いんだよ.......
ここにいる皆は君が人を殺せないと知って何かしてくる人間はいない
怖がらなくたって大丈夫、本当の君を知ったら皆君を受け入れてくれるはずだ」
「でも.....でも....私は......私は.....」
「なら僕が命令するよ
君の任務はこれから皆と仲良くなる事、そんな気負わなく大丈夫
君から話しかけていけばきっと仲間に入れてくれる......
そしてこれからしばらくは僕について来ること.........
そしてこれが一番難しい事かもしれないけど、
最終的に君が本当にやりたい事をこれから探すこと
必要があれば僕も協力するさ!だから僕や皆と一緒に生きていこう!
君はもう自分の殻に篭っている必要はないんだ!
これからも君は......一人じゃない!」
僕がそういうと彼女はしばらく泣きながら僕の胸に顔を埋めて
顔を上げたとき赤い目をしながらしっかりと僕を見据えてこう言った。
「はい........青山先生......」
僕は再び彼女を抱きしめ彼女を安心させると
扉に誰かの気配があった事に気づいたがすぐに逃げ出してしまった。
一瞬見えた影からしてきっとあれは..........
僕はあの人に結果を報告する事はしなくて良いと判断したのだった。
その次の日早速ユエは他の皆と交流を持とうとして話しかけた。
最初は椎からは怯えられ、茉莉からは警戒され、エリカからは怒鳴られていたが
放課後僕が皆を入れてトランプをすると提案すると
他の皆もしぶしぶユエを入れることを受け入れたが.......。
「くっそーーーまけたぁああああああ!!」
「やった....勝ったのよね私」
ババ抜きでエリカとユエが最後まで残り初戦は負け続きのエリカが勝利をしたが。
次の試合でも同じことが起こり今度はユエがエリカに勝利をした。
ユエは自分が勝った事を物凄く喜んだ表情で僕に報告した。
こんな嬉しそうな表情をしているユエを見たのは初めてかもしれない。
するとエリカがユエに対して肩を掴んで
「おまえ..........」
まさかエリカが勝負に負けたからと言って喧嘩を始める気か.......。
確かに彼女たちの仲はあの時の事もあって最悪だろう。
ユエもエリカを睨みつけているが次の瞬間。
「なかなかやるじゃねーか!!
もう一回勝負しようぜ!今度は俺が勝つからな!」
「エリカが弱いだけでしょ.......
けどユエさんもそんなトランプとか強いわけじゃないのね
何でも自分でできます(キリッ
みたいなイメージだったからちょっと親近感沸いちゃった」
「エリカもユエさんも頑張ってくださいね!」
「はっ!?椎てめーなんでそんなえらそうなんだよてめーも参加してんのによぉ
ちょっとユエ今度のゲームは二人で椎をビリにしてやろうぜ!」
とユエの肩を叩くとユエはちょっと困惑したまま
「えっ?そうね......椎の割りに調子に乗ってるし二人でやっつけちゃいましょう!」
と二人で同盟を結び椎は茉莉に助けを求めようとするが茉莉に突き放されてしまった。
最初はすぐ仲良くなれるのか不安だったが仮にも全員1年近く同じ教室で授業を受けてきたクラスメイトだ。
困惑していたのもすぐ解決し何時の間にか仲良くなっていった。
そして二人は大富豪の時椎がカードを出そうとしている手前で8切りをしたり
椎が有利な状況で革命を起こすと言う謎のコンビネーションを見せ
茉莉が大富豪、僕が富豪、エリカが平民、ユエが貧民で椎を見事大貧民にしてしまった。
ちょっと椎が可愛そうな気もするけれど.......。
2ゲーム目の始まりで何時もなら茉莉はエリカに対して搾取、搾取と連呼しながら
カードを奪っていってその度にうわー俺の切りふだがぁと嘆くエリカが見られるのだが
今回は珍しく椎が大貧民なので茉莉も何時もは搾取できない人間に対してドSな目をして椎のカードをニヤニヤしながら見ていた。
そして僕は貧民であるユエからカードを奪うことになるのだが
あまり良い札を奪っても可愛そうなので僕は2やAは外して他に自分が有利になりそうなカードを探して貰う事にした。
そして僕がカードを貰った時彼女は小さな声で僕に一言こう言った
......ありがとう
最もシンプルで最も心に伝わる最高の一言だった。
「それじゃあこれから脱獄を始めるよ!
最後に確認するけど皆はこれから僕と一緒に新天地で生活を始める
そうすると長い間もしかしたら一生僕に人生を預ける事になるかもしれない
今なら間に合うからもしそれが嫌だって人がいたら言ってくれ」
その言葉に誰も答える人はいなかった。
ただ僕の顔をまっすぐ見据えて僕に自分の覚悟の重さを示していた。
皆僕の話を半月前に聞き最初は皆驚いてたが
エリカは面白そうだとか椎は青山先生がいるならどこでもと
茉莉はPCとお父さんがいるならユエは命令なら従うだけと言い
全員で脱獄をする事になり、僕は心配性なのでもう一度確認をしてみたが
その必要はなかったようだ。
僕らは茉莉がいつもいたPC室に待機している様進藤さんい言われており
しばらくすると脱獄の指示をしてくれる進藤さんが現れた。
「全員揃っているな!
それでは脱獄の説明をする」
進藤さんによればこのPC室は下水道に繋がっているらしく
そこに階段を降ろしてそこから脱出するらしい。
どこぞの暗殺組織の幹部がした事と同じような状況だな........。
そして彼が目印を付けた所の梯子を上りマンホールを出て
彼が手配したある船に乗り込み僕たちが世間を気にすることはないある場所へ行くらしい。
こんな事をして進藤さんは大丈夫なのかと最後に確認したが
進藤さんは自分の身は自分で守れる今は自分の心配をしてくれとだけ答えた。
「さてこれから下水道の扉を開錠する
ここから出れば君たちは自由の身だ!
それと.....ユエさん一言良いかな...」
進藤さんはユエを真っ直ぐ見つめてこう言う。
勿論ユエには進藤さんが父親であることは知らない振りをしてくれと言ってある。
それが進藤さんとの約束だから。
なのでお互い相手の正体を知りながら相手の正体について語ることはせず
ただ見つめあいそして最後に進藤さんはこう言った。
「幸せに生きろ!それだけだ.......」
「..........はい分かりました」
彼女たちにしか分からないやり取りを交わすと進藤さんは扉を開錠し
重い下水溝への扉を端に寄せ
そのままPC室の入り口で僕らを見守った。
彼女たちもこの学校での思い出を色々思い出しながら踏ん切りがつくと
一人ずつ一人ずつ階段を下りていく
囚われた少女たちが一人一人自由を手に入れる光景は感慨深いものが多く
全員が会談を降りると僕は進藤さんに一礼して
この学校に別れを告げ新しい人生への入り口に入っていったのだった。
エピローグへ続く




