第14話
登場人物紹介
青山 輝樹 平凡な人生を歩んでいた社会人だったが
痴漢冤罪により人生が崩壊し、少年院の特殊な教育施設の教師になる。
進藤 傑 警察の人間で本人曰く上層部の人間らしい。
見捨てられたプロジェクトの後片付けとして施設の責任者になったが目的は謎に包まれている。
鮎川 茉莉 施設の生徒、未成年にして国内最強のハッカーにして重度のオタク。
堅剛エリカと仲が良い。
堅剛エリカ 施設の問題児、敵の組のヤクザ20人を殴り殺したヤクザの組長の娘。
学力が低く単純だが根は優しい、鮎川茉莉と仲が良い。
山本 椎 施設の生徒だが体調不良でほとんど休んでいた。罪状は毒物による大量殺人。
しかしそれは冤罪である事が判明した。
料理が得意で怖がりな性格
NO.7080 施設の生徒、自分の身元に関する情報を日本人である事と
(ユエ) とある組織にいた番号と愛称の「ユエ」しか分かっていない。
組織では殺し屋として数百人の人間を殺害したと思われる。
施設では他人と距離を置いている様子である。
青山輝樹に関する事件の登場人物
鰆田 桜 青山輝樹を痴漢の罪で告訴した人物で、豊鏡女子高の3年生。
バイト感覚で援助交際や痴漢の冤罪を着せる仕事もしている。
青山 美代子 青山の妻であったが痴漢の罪で逮捕をされた事で離婚。
大学のバトミントンサークルで知り合う。
現在古山と結婚して古山美代子となった。
古山 竜 青山と同僚で美代子と共謀して青山を痴漢の罪に陥れた。
山本椎に関する事件の登場人物
好村 香苗 椎と同じバイト先で働き、椎とは仲が良かった。
椎が冤罪を受けた事件の真犯人で
現在は行方不明。
鮎川茉莉に関する事件の登場人物
鮎川 憲吾 鮎川茉莉の父親、ある会社のデータを娘のウィルスを使い初期化し
その技術を海外に売ろうとした所国によって殺害される。
大木 保則 そこそこ名の知れた探偵で今年に入って大木探偵事務所を開業。
茉莉には恩があり父親の行方に関して無料で調査を行った。
事件・出来事
重罪少年・少女社会復帰プロジェクト
警察の上層部の間で計画されたもので
実験として40人の少年院の中でも重い罪を持つ子供たちを
森の隔離された空間でできるだけ現実の学校に近い様なスタイルで教育すると言った計画である。
しかし後述する事件により計画は凍結。
36人が辞退し、辞退しなかった4人については進藤傑氏が後片付けとして本来の予定通り1年間教育を続けることになった。
無法地帯化事件
最初の頃は真面目にやっていた40人の生徒も。
少年院より規制が厳しくなくなっている事に気づくと一部が調子に乗り始め。
生徒が教師に暴力行為を働き、それを上に報告するはずの警備員を口封じした事により。
事件の長期化と更に悲惨な事態になる事になった。
生徒同士の暴力行為が盛んになり。
喧嘩、虐め、略奪、強姦行為が当たり前の光景となる無法地帯と化した。
これにより34人の生徒が脱臼、骨折、ノイローゼ、性病感染等様々な問題を起こし
大きな問題のなかった6名の生徒の内2人もプロジェクトを辞退。
これにより警察内で上層部の管理能力の甘さと無計画さが露呈する事になるが。
警察は事件を隠蔽し、世間にこの事件が報道されることはなかった。
青山輝樹の痴漢
真宿駅行きの電車において青山輝樹が女子高生に痴漢行為を行った事件。
青山は逮捕され有罪判決を受けたがしかしそれは誤った判決であり
被害者は青山に痴漢の冤罪を掛け、賠償金を支払わせた。
被害者は真宿にある裏社会のグループの一員でグループのメンバーもサクラとして青山が有罪になる様な状況に仕向けた。
裏社会のグループは一連の犯行を依頼されてやったことが判明しており
その依頼者は青山 美代子と彼の同僚の古山と言う男であった。
第14話
「えー...次の問題堅剛さん
この式を積分してください」
「えっ......はっ....ごめんわかんね?何このdxって?デラックス?」
エリカは何をすれば良いのか分からなくなってるらしく
相変わらず飲み込みが遅いと思いながらも椎にフォローを頼む事にした。
しかし飲み込みが遅くても一応微分はできるようになったので
彼女なりには頑張っているのだろうとは思うのだけれど。
「.....山本さん彼女に今やってる事を教えてあげて
じゃあ鮎川さん...」
そう言った時今日彼女が休んでいる事に気づいた。
昨日あった事で相当ショックを受けているらしく彼女は学校を休んだ。
椎は恐怖で引きこもって休んでいたし、エリカも僕が来る前何回か授業をサボって怒られてるし
ユエさんはそもそも10日間自宅に軟禁されたり、進藤さんに呼び出されたりで
誰もが授業を休んだことはあるようだが。
エリカから聞いたところ自分の知ってる限り茉莉が学校を休んだのは初めてだそうだ。
なので彼女が休んでいると知ったエリカや椎はそれだけで彼女の事を心配していた。
「じゃあユエさん答えてくれるかな....」
「.....はい」
今まで授業で当てるのも少し避けていた事もあったが
あるきっかけでユエさんに当てた時ちゃんと答えてくれた事があって
最近はエリカ以外均等に全員が当たるようにしている、エリカは当てたりしないと集中が切れるから頻繁に答えさせているが
正答率は10%くらいだった。
放課後3人でこんどは新しくスピードと言うゲームをして遊んでいた。
一人が観戦してもう二人が対戦をする形式だ。
「椎にはまけねぇぞ!これは名の通りスピード勝負だからな」
「見てる感じどうせ私には勝てないけどやってみます...」
「何故.....負けた」
「勝っちゃった...」
相変わらずトランプゲームは苦手なようで最初は頑張っていたエリカも
見てるだけでコツを掴んだ椎に負けてしまったようだ。
最初に負けた人が抜けると決めていたのでエリカが抜け僕と椎が対決をしようとすると
エリカは一言煙草を吸っているおじさんが煙を吐き捨てるようにぼそっとつぶやいた。
「なんか足りねぇよな....」
その言葉だけで僕達は何が足りないのか理解した、いやさっきから皆が感じている事をエリカが初めて言っただけなのかもしれない。
茉莉はエリカが負けたとき皮肉を言って馬鹿にしてエリカが軽く怒ってふざけあったり。
そして茉莉は今まで色々な提案をしてくれたし彼女なりに皆を盛り上げてくれたのだ。
だから何時もどおり遊んでいるのに何故か活気がないように思えたのだ。
しかしこの後エリカは茉莉の事に関しては最期明日は来るよなあいつとだけ呟き。
椎はそれに大丈夫だと思いますと答え今日の放課後は終わった。
彼女は今何してるのだろう.......。
部屋にいるなら入ることはできないがもしかしたら日課のコンピューター室にいるかもしれない。
僕はそう思いコンピューター室へと向かう事にした。
思えば初めて茉莉と仲良くなったのはこのコンピューター室だった。
彼女の大好きな白テニの漫画で僕と熱く語れることを知り彼女は僕と仲良くなった。
それにより誤解が生まれてエリカに掴みかかられたけど最終的には彼女とも仲良くなれた。
そんな事を思い出しながらコンピューター室に向かうと電気がついているため
どうやら彼女は中にいるようなので入ってみることにした。
しかしそこには衝撃的な光景が飛び込んできた。
彼女はどこから持ってきたか知らないが脚立を持ってきており
それに上り延長コードを天井に固定し彼女はそのコードを首に巻きつけようとしていたのだ。
「やめろ!!!」
彼女のやろうとしている事を頭が理解する前に体が先に動き、大きな声をだしそのまま彼女の元に走った。
彼女は一瞬驚いて手を止めるがそのままコードで自分の首をしめようとすると
絞まる前に彼女に追いつきコードを彼女の首から払いそのまま彼女の腕を掴んだ。
「離して!!私はお父さんの所に行くの!!」
そう言って彼女は泣きながら反対の腕で僕の腕を振り払おうとするが力が及ばず
そのまま脚立の上から降ろし延長コードから遠ざけ壁に追い詰め逃げられなくした。
それでも彼女はしばらく抵抗したが抵抗しても無意味だと分かるとそのまま力をいれず
僕に対して語りかけてきた。
「どうして死なせてくれないの...
私はお父さんの元に行きたいのに.....今まで私のお願いしたこと聞いてくれたのに...
どうして意地悪するの....」
まるで死なせてくれない僕を恨むように虚ろな目でこう言った。
するとそのまま彼女はお父さんとの思い出について詳しく語り始めた。
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「お父さん今日私の誕生日だけど、何かプレゼントはないの......」
「誕生日だからなんだってんだ!!
俺は忙しいんだ!とっととどっかいけ!」
それは4歳の誕生日の日の事、私はお父さんに誕生日プレゼントをねだったのだが
怒鳴られて結局プレゼントもなければお祝いの言葉もなかった。
お父さんは競馬や株が大好きでそれで会社も首になり借金ばかり作り
お母さんには愛想をつかされ出て行った。
「ったく....あいつの落し物の面倒をなんで俺がみんだ...くそがっ...」
そう言いながらもお父さんは私に最低限の食事や衣服、生活に必要な物を用意し、幼稚園に通わせてはくれたので
私はお父さんが大好き。
お酒を飲んで暴力を振るわれたり、今みたいに不必要に恫喝される事もあったが
私はそれはお父さんが悪くない、お父さんの周りにある物賭博や酒など
色々なものがお父さんを苦しめてるからお父さんがおかしくなるんだと思い
何時しか私はそういったものからお父さんを助けたいと思うようになった。
そんな中お父さんは新しい事を始めたのかPCを買って来て何やら本を買ってきたのだが
やっている内に頭を抱えたり、PCを叩いたりして結局続かなってしまった
私はお父さんがやっていた事に興味を持ちお父さんが競馬に行っている時だけこっそりPCを開き
本に書いてあるプログラミング入門と言う本の通りにプログラミングを覚え
それでは満足できない程知識を得たのでネットに繋ぎより高等な知識を知り
お父さんが無断で私がPCに触っていると気づいたのは6歳の時
何時もより早く帰ってきてプログラミングに集中していたため私は気づかなかったため
お父さんは無断でパソコンをしていた私を殴ろうとした。
「おまえ!人の物を勝手に触って.....うん?」
お父さんは私が作業している画面が彼にとっては異様である事に気づいた。
その時私は本に書いてあるレベルのプログラムより遥かに上のプログラムを書ける様になっていたので
振り上げた拳を降ろし、その画面をしっかり見ると私に対してこう言った。
「おまえ....もしかしてプログラミングの才能があるのか...
ならもっとしっかりやれ!こそこそやる必要はない」
勝手にパソコンを使った事よりお父さんは私の才能を感じて怒るのを忘れてしまったのかもしれない。
小学3年生の時私はついにお金がつくほどのプログラムを自分で作ることに成功し
この時初めてお父さんは私を褒めてくれた。
「凄いぞ茉莉!おまえの書いたプログラム色々な所に売ってきたが20万円儲けたぞ
おまえは自慢の娘だ!これからも頼むぞ!」
わしゃわしゃするぐらい頭を撫でて頬ずりまでしてくれた。
今まで私を怒鳴り散らしたり、殴ったりするお父さんはいなくなり
その数日後誕生日がやってくるとお父さんは何時もより上機嫌で帰ってきて
「誕生日おめでとう!
誕生日ケーキだ!この前は頑張ってくれたからな
後これは誕生日プレゼントだ!」
私は今まで誕生日プレゼントをくれないどころか祝ってすらくれないお父さんが
初めて誕生日を祝ってくれたのが嬉しくて涙を出しながらお父さんに甘えた。
私は後でプレゼントの中身を空けるとそれは緑色の綺麗な新品のUSBメモリだった。
私はそのUSBを一生大切にしようと思い、母親から唯一貰っていた熊のストラップをそこに付け
それをじっくり眺めてニコニコしているだけで数時間が過ぎてしまうほどだった。
それから時が過ぎ私は16歳になった。
私は色々な知識を身につけ、天才ハッカーやらウィルスや便利なプログラムを開発する技術士として知られていた。
私はお父さんからあるウィルス製作を引き受け、私はそれを開発し
お父さんにデータで渡すとお父さんに渡したデータによってある商社のデータが全てデリートされた事を知った。
「おまえのおかげで全て成功した!俺は今からこれを海外に売るつもりだ
そうすれば分かるか1億入ってくるんだぞ!借金どころかもっと大きな家に住める!
全部おまえのおかげだよ!本当立派な娘をもって良かった!愛してるぞ茉莉!」
それがお父さんとの最期の会話になった。
その後急に家に警察の人間が入ってきて私はそのまま任意同行を求められた。
警察の人間にはお父さんは逃げていると言われたので私はそれを信じて
昨日まで探し続けてきた......なのに......なのに........。
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彼女はそのまま黙り込んでしまった。
話を聞く限りは彼女の父親は駄目人間で。
茉莉を大事にするようになったのも娘だからではなく金の種になるから
と傍から見れば思ってしまうだろう。
でも彼女はそんな父親を本気で信じて敬愛し今も彼女はそのお父さんの事を好きでいる。
「お父さん、私に話しかけてよ....
今まで見たいに指令を出してよ...そうじゃなきゃ私どうしたらいいのかわからない....」
僕は涙を流しながら言う彼女に対してこう言った
「お父さんが死んで辛いのは分かるよ
君がお父さんの事を本気で好きだったのは君の口から伝わってきたよ.....
でも君の人生は君のお父さんだけのものじゃない!
エリカや椎だって今日学校に来なくて皆心配していたぞ!
君が好きな白テニだって死んじゃったら次回が見れないんだぞ!
確かに君の中でお父さんは大きな存在だ!でもそれだけじゃない!
ここにいる皆も茉莉の事が好きなんだ!死んだら皆ともお別れなんだ!」
僕は彼女の目を見て肩を掴みそういった。
すると今まで虚ろだった目が戻り、そのまま僕に語りかけているのか分からないけど
また言葉を発した。
「そう言えば、青山先生と初めて仲良くなったのもここだったなぁ.......
考えてみるとエリカとも仲は良かったけど毎日遊ぶほどの仲じゃなかったし
椎が学校に来て私達とちゃんと話せるようになって....仲良く慣れたのも
皆青山先生のおかげなんだよね....
ユエだって先生は気づかないかもしれないけど先生の事を少しは認めてるんだよあれでも
だってあの娘は昔先生に当てられても昔なら分かりませんと一言言って逃げてたもん.....
ここが変わったのは...先生のおかげなんだよね....」
そう言って彼女は今度は僕の方に向いてこう言った。
「青山先生、本当にどうしようもない願いだしそれでも聞いて欲しいんだけど
私のお父さんになってくれないかな.....変なお願いだって分かってるんだけど」
「僕は君のお父さんじゃない、君のお父さんみたいにはなれないよ...」
「そうじゃなくて.....お父さんの代わり
青山先生に私のお父さんの代わりになってほしいの.....」
そのお願いは彼女の人生をとても左右するお願いだった。
ここで安易に代わりになると言えば僕は彼女とずっと一緒にいる事になるだろう。
できる事ならここは断り彼女にお父さんがいない事を認めさせ
自分で生きていくことを促すのが教師としては正しいのだろう。
しかしそれはリスクの要る事でここで断ったら彼女はまた自暴自棄になって自殺してしまうかもしれない。
今彼女の申し出を断るのは苦しんでいる彼女を突き放す事にしかならない。
ある意味ここで引き離すのは将来的に見れば正しい判断でもぼくにはただの無責任な判断にしか見えなかった。
それに頭の良い彼女だ、何時かは父親の死を自分で乗り越え自分で生きるように気づく日が来ると思う。
僕はそんな事を考え答えが出なくて不安になってる彼女にこう言った。
「分かった君が必要ないと言うその時まで僕は君のお父さんの代わりになる。」
彼女は僕のその言葉を聞き今までの脱力していたのが嘘の様になり
僕に抱きついた。
「有難う!お父さん!
本物のお父さんは死んじゃったけど私勇気をだして生きるね!」
当たり前の事とは思うけど僕の呼び名がお父さんになるのか......。
流石にそれは皆の前じゃ不味いな。
後で彼女には皆の前では青山先生か先生で呼ぶように言っておこう。
進藤さんは確かに皆と親密になれと言った.......。
でも流石にここまで親密になる必要あったかな。
少なくとも彼女が僕をお父さんと二人きりの時呼んでいる間は一緒にいる事になるだろう。
でも椎にも怖くなったり、助けて欲しい時に守ってあげる事を約束したし彼女とも付き合いは当然長くなるだろうし
それに僕はその時こうした方が良いと思ってした事だ。
そこに進藤さんの意思はないし、僕がしてあげたい事をして進藤さんのミッションも達成したのだから一石二鳥なのかもしれない。
先の事なんて後で考えれば良い、今は残り2人と親密になる事を考えよう。
そう思って僕は一緒に遊んでいる最後のメンバーエリカと
茉莉の情報では少し僕の事を認め始めたユエさん。
二人と仲良くなるのは何時の事か考えながら僕はそのまま眠りについた。
続く