第11話
何だかんだで完結までラストスパートに。
執筆欲がここで少々なくなってきたので誰かやる気をください。
何でもしますから(迫真
登場人物紹介
青山 輝樹 平凡な人生を歩んでいた社会人だったが
痴漢冤罪により人生が崩壊し、少年院の特殊な教育施設の教師になる。
進藤 傑 警察の人間で本人曰く上層部の人間らしい。
見捨てられたプロジェクトの後片付けとして施設の責任者になったが目的は謎に包まれている。
鮎川 茉莉 施設の生徒、未成年にして国内最強のハッカーにして重度のオタク。
堅剛エリカと仲が良い。
堅剛エリカ 施設の問題児、敵の組のヤクザ20人を殴り殺したヤクザの組長の娘。
学力が低く単純だが根は優しい、鮎川茉莉と仲が良い。
山本 椎 施設の生徒だが体調不良でほとんど休んでいる。罪状は毒物による大量殺人。
NO.7080 施設の生徒、自分の身元に関する情報を日本人である事と
(ユエ) とある組織にいた番号と愛称の「ユエ」しか分かっていない。
組織では殺し屋として数百人の人間を殺害したと思われる。
施設では他人と距離を置いている様子である。
事件・出来事
重罪少年・少女社会復帰プロジェクト
警察の上層部の間で計画されたもので
実験として40人の少年院の中でも重い罪を持つ子供たちを
森の隔離された空間でできるだけ現実の学校に近い様なスタイルで教育すると言った計画である。
しかし後述する事件により計画は凍結。
36人が辞退し、辞退しなかった4人については進藤傑氏が後片付けとして本来の予定通り1年間教育を続けることになった。
無法地帯化事件
最初の頃は真面目にやっていた40人の生徒も。
少年院より規制が厳しくなくなっている事に気づくと一部が調子に乗り始め。
生徒が教師に暴力行為を働き、それを上に報告するはずの警備員を口封じした事により。
事件の長期化と更に悲惨な事態になる事になった。
生徒同士の暴力行為が盛んになり。
喧嘩、虐め、略奪、強姦行為が当たり前の光景となる無法地帯と化した。
これにより34人の生徒が脱臼、骨折、ノイローゼ、性病感染等様々な問題を起こし
大きな問題のなかった6名の生徒の内2人もプロジェクトを辞退。
これにより警察内で上層部の管理能力の甘さと無計画さが露呈する事になるが。
警察は事件を隠蔽し、世間にこの事件が報道されることはなかった。
青山輝樹の痴漢
真宿駅行きの電車において青山輝樹が女子高生に痴漢行為を行った事件。
青山は逮捕され有罪判決を受けたがしかしそれは誤った判決であり
被害者は青山に痴漢の冤罪を掛け、賠償金を支払わせた。
被害者は真宿にある裏社会のグループの一員でグループのメンバーもサクラとして青山が有罪になる様な状況に仕向けた。
裏社会のグループは一連の犯行を依頼されてやったことが判明しており
その依頼者は青山 美代子と彼の同僚の古山と言う男であった。
第11話
「小瓶は持っているわね」
そう言うと椎はおそるおそる持ってきた小瓶を取り出しそれをユエさんに見せた。
「今は午前中で厨房に誰もいないわ
これで貴方も信じてくれた恩師に存分に死の料理を振舞えるわね........」
厨房に入ったことは初めてだが意外にも広く綺麗に使われていることが分かった。
この食堂は早朝・昼・夜と営業をしていて施設の生徒や教師はただでご飯が食べられる。
ただ施設の生徒と教師や警備員が同じ時間に飯を食べてはいけないと言うルールが定められている。
進藤さんによると理由は教師や警備員は罪を犯していないのだからある程度良い物を出しているが
生徒には特別な日以外は最低限の食事しか出していないらしく
食事の格差により何らかのトラブルに繋がったら困ると言う事で時間を定めている。
勿論ルールを語るなら勝手に厨房を使うのはイエローカードを通り越しているし
そもそも今は授業中だと言う事もあり確実にレッドカードが出る状況なのだが。
「私たちは表で待っているわ、皆が見ている状況じゃ毒を入れる確立が低くなっちゃう
皆が見ていなくて誰も毒を入れても分からない状況を作りあげなきゃね
食材は一通りあるみたいだしカレーでも作ってみたら良いんじゃない?
おあつらえ向きに米も炊いてあるみたいだしね」
「えっ!?....はっ...はい分かりました」
彼女はユエさんにカレーライスを作れと言われた事に動揺していた。
理由はよく分からないがもしかして彼女はカレーが嫌いだったりするのだろうか。
「それと青山先生、信じてくれて有難うございます
美味しいカレーを作りますからね」
彼女は最後にそう告げると僕たちは表で椅子に座って待つことにした。
料理ができるまで僕は彼女が毒をいれない事は信じているはずなのに
いてもたってもいられない気持ちになった。
そうした気持ちを見透かしているようにユエさんは僕を見て微笑を浮かべている。
他の2人もあの時椎の料理を食べると勇気を出して言えなかったにしても
きっと信じてまっているはずだ、エリカは目を閉じて瞑想をして席に座り。
茉莉は机の下で両手をこすり合わせそわそわしている。
そんな状況で1日を過ごしたかのような長く感じた時間の後彼女がカレーライスを持ってきた。
「青山先生...どうぞ」
僕の前にカレーライスが置かれる。
匂いとしてはとても食欲をそそるが、これには毒が入ってるかもしれない。
「言い忘れたけど山本椎が毒を盛った料理はカレーライスよ.....」
この娘は何故椎の事件を僕よりも詳しく知っているのだろうかと言う疑問もでたが。
彼女はそれを知っていてあの時彼女にカレーライスを作らせたのか。
あの動揺もそれを知れば納得がいく。
わざわざあの時の事件を再現するようにする事で僕の不安を増幅させようとする。
まるで人が怯えること、心の隙を知り尽くした様に彼女は僕らの心を翻弄してくる。
僕はスプーンを持ちそっとそれをカレーに近づける。
ここまでカレーを緊張して食べる事は今後人生に一度もないだろう。
やがてルーとご飯の境界をそっとすくい上げ僕はそれを自分の前に持ってきた。
「いただきます」
その言葉を言った瞬間僕はもし彼女が毒を入れたとしたら逃れられなくなった。
分かっていても信じていてもスプーンを持つ手が震える。
周りを見渡せば僕がそれを食べるのを息を呑みながら凝視されている。
でも僕はさっき彼女の料理を食べると言った時に言った言葉を思い出した。
裏切られる事より裏切る事のほうが辛い、生徒である彼女の涙はもう見たくない。
それに僕は元々自分の妻に裏切られ愛したはずの美代子を恨みながら死ぬはずだった。
そもそも青酸カリは即効性の毒物だし考える時間もないだろう、それならば。
裏切られて相手を憎みながら死んでいくより、僕は最期まで人を信じて死ぬ方が幸せだ。
僕はそう決意し、スプーンを口に近づけそのまま口の中に入れた。
「うっ..........」
「おい大丈夫か!しっかりしろ!」
「青山先生!しっかりして」
「うっ.........旨い!」
非常に美味しかった、僕はカレーは辛めの方が好きなのだが
このカレーは辛口とは言えず精々中辛程度の辛さしかない、人によっては甘口と言う人もいるかもしれない。
だが辛さの好み関係なく素材の味が生きたカレーで。
肉は口の中で旨みが溶けていくようで野菜も絶妙なハーモニーを奏でている。
僕は無意識でそのまま二口目に入ろうとすると。
「紛らわしいわ!漫才やってんじゃねーんだよっ!!」
カレーの旨みで忘れていた二人が僕の頭を殴ってきた。
そういえばあまりの旨さにうっ..としか言えなかったので勘違いされたのかもしれない。
「違うんだ食べてみなよ本当に美味しいんだよ!」
そう言うとエリカがそのまま僕のスプーンを奪い取って
僕が崩した所と同じところを救い上げて食べた、一応間接キスなんだけど彼女は明らかに気にしないタイプなんだろうな。
「うっ..........」
「えっ?嘘でしょエリカどうしたのっ?」
「うんめぇーーーー!!こんな美味しいカレーライス食べたの生まれて初めてだ!」
「だから漫才してんじゃないの!何で皆紛らわしいリアクションとんのよ!」
そういって茉莉は今度はエリカの頭を叩く。
「いやほほぉんと食ってみ.....うまぁいから」
そう言いながら彼女は二口、三口とどんどん食べているようだ。
茉莉は用意がよくスプーンを持っていたのかそのままエリカとは逆の方向からすくいそのまま口に持っていった。
「うっ.....あっ!?やばっ
美味しい!椎これ美味しいよ!おかわりないの!ちょうだい!」
彼女もあまりの美味しさに誤解されるリアクションを取りそうになったがキャンセルしたようで
エリカの突っ込みが来る前に素に戻った。
椎はその光景を見て物凄くニコニコした様子で厨房に戻りおかわりの準備をした。
「さてユエさん青酸カリはたしか即効性の毒だよね?
僕は生きているよ」
と何の達成感か知らないが僕はドヤ顔をしてしまうとそれを興味なさそうに見ながら
こう返した。
「当然よ、あれ青酸カリじゃないもの」
突然の告白にまた全員が驚く、そんな中ニコニコした椎が戻ってきて
僕たちに大盛りのカレーライスを振舞うと
「山本椎小瓶を出しなさい」
「はっ..はい」
そうすると椎から小瓶を受け取ると彼女は小瓶の蓋を念入りに調べ
そしてそれを見てまたあの彼女特有の笑いを浮かべると行き成り小瓶の蓋を天井に飛ばし
その小瓶の中身を飲み始めた。
「えっ!?」
「ちょっ!?貴方正気?」
「ふえっ?おふぇえーなみひゃってんだ!しぬけかぁ!」
僕と茉莉は純粋に驚き、エリカは食べながら驚きを表し彼女に話しかけたが正直伝わっていない。
椎はその様子を見て両手で顔を覆い後ろ見ていた。
ユエさんが小瓶の中身を飲み干すとその小瓶を地面に捨て、しばらく棒立ちした後
僕らをあざ笑うようにこう言った。
「残念、これはただの水よ.......
本物はこっち、いくら私でも学校の中で人殺しが起きる状況作るわけないじゃない」
そう言うと彼女はさっきと同じ種類の小瓶をポケットから取り出した。
僕たちはあまりの事に言葉を失っていった。言葉を失うと言うよりまだ食べ続けている頭が残念な子もいるが.....。
「おいカレーが冷めるだろセンセー!食っちまうぞ!」
「あっ!それとさっき小瓶に私が見てから開けた跡があったか調べたのだけれど
開けた跡は.....なかったわ」
思考が追いつかなくなって何が起こったのか分からなくなっていたが。
小瓶を開けた形跡がなかった..........。
勿論椎もその小瓶を青酸カリが入っていると信じていたはず。
それならば.......。
「椎は無実って事ね!」
茉莉さんの言葉を聞いてエリカもカレーを食べる手を止めやったぜと叫んだ。
しかしその後ユエさんは鼻で笑いまたこう言った。
「馬鹿ね、今までのやり取りなんてここで毒を入れたら山本椎は殺人犯だって事が確定するってだけの話で
入れなかったから殺人犯ではないなんて事にはならないわ
異常者だからって理由も私の想像よ、もしかしたら理由があったのかもしれないわね
でも貴方たちの中では完全に山本椎は無実になったんならそれで良いんじゃないの?
一生友情ごっこでもやってなさい、私はもう飽きたわおかげで色々分かったし
じゃあね」
そう言うとユエさんは付き合いきれないと言う顔をしながら僕たちのもとを去り部屋に向かっていった。
それを何となしにみんなで見送ると僕たちは椎の作ったカレーを食べながら
さっきまでの事は忘れて椎の料理の腕や色々な事を質問して談笑をした。
今回の事で僕や茉莉、エリカ、椎に対するお咎めは何もなかった。
ユエさんは先に約束した通り全て私のせいにして良いと言ったことを守り
自分から進藤さんに自分が全て悪いと告げて1週間の自室への軟禁、食事も自室で取ると言う処置が取られた。
やっている事や言っている事は滅茶苦茶だけど最悪の事態も備えて
本物の毒物を椎に渡さなかった事もありもしかすると彼女は根から酷い娘と言う訳ではないのかもしれない。
最初椎を助けなかった事も常識的に考えればユエさんの行動は有り得なかったのかもしれないけど
別に彼女が僕たちに最初から意地悪しようとしてやったわけでもない。
ただエリカと喧嘩をして血が上っていたから何時も思っていた本音が出てきたのかもしれない。
何れにせよ僕は彼女の事が分からないままである。
また後ろの席に誰もいない授業が始まる。
こんな日が前にもあったな、前は椎が久しぶりに学校に来た日だったっけ。
いない人の事を気にしてもしょうがないので僕は何時もどおり授業を続けた。
放課後何時もの様に4人で遊びそれが終わると僕はコンビニでソックスコーヒーと週間少年JMSCを買い
この日はまだ少し仕事が残っていたので僕はソックスコーヒーを飲みながら休憩を取っていた。
すると恐る恐るゆっくり扉が開かれたのでこんな時間に誰かと思えば椎がこちらに近づいてきた。
「青山先生昨日は有難うございました.......」
彼女は昨日のお礼を述べたが僕は教師が生徒を信じるのは当然の事だから気にするなと伝えた。
「それも感謝しています!
でもそれよりも私....料理が好きなのにあの事件の犯人にされて
もう一生私の料理を食べてくれる人なんていないと思ってました。
でも昨日青山先生とエリカと茉莉が食べてくれて本当に嬉しかった
それに進藤さんにも好評で厨房の使用許可まで出してくれて.....
それも先生が勇気を出して最初に私の料理を食べてくれたおかげです
改めて有難うございました」
昨日のおかげで彼女のカレーは進藤さんにも好評だったらしく
彼女はカードキーを持っている人間がいるなら厨房を使って良い事になったのだ。
おかげで彼女は今日も遊んでいるとき何時もよりにこやかな様子だったので
本当の意味で元気になってくれて本当に良かったと僕は思った。
「それで私を信じてくれた青山先生だから
私先生には話したいんです、まだ誰にも話してないことなんですけど...
聞いてくれませんか?」
そう言われて聞かないと言う選択をする人間はこの世にはいないだろう。
僕は即答でこう答えた。
「僕で良ければ聞くよ、なんだい?」
「有難うございます、私が話したいのは私が犯人にされたあの事件の真相です。
そう私が毒を盛ったとされたあの事件.......」
「私.........見てしまったんです
_______親友が料理に毒を盛っている所を............」
続く