愛(1)
しばらく 桜子が下りて来ないか
待っていたが 桜子が下りて来る気配もなく
私も部屋へ戻り
私は読みかけていた父の本を 再び開けた。
本当に心底 愛し合ってる二人だったが
急に流れが変わり始めた。
(父には…六才の子が居たんだ…難病?)
父親の娘が難病を患い
父は母に全てを話し
母への愛と子への愛で
葛藤してる様子が鮮明に
書かれてるのを読み 私も心 打たれていた。
(どうして?人生は
こんなにも 狂い出すんだろう?
母は…何故?
妻子ある人を好きになったんだろう?
不倫でなければ
こんなに 苦しむ事なかった筈なのに…)
読んでる内に 恋愛観や
人生観を考えさせられていた。
また、続きを読み始めた。
父の娘が病気になったのと
同時期ぐらいに 母も妊娠に気づいた。
母は 最初から 産む決意をしていたが
父は 難病の娘の事を気遣い
母に中絶して欲しいと頼んだ。
母は父に言った。
「あなたにも 大切な子供が 居るように
私のお腹にも 大切な命がいるんです。
どんな事があっても
私は、この命を守ります。
あなたとは 今後一切関わらないので…
あなたは お嬢さんに
沢山の愛を注いで下さい。
私にはこのお腹の子が居るか ら
もう1人でも 強く生きていけるので…」
父はこの本の中で
初めて 後悔した様子が書かれていた。
人を愛する事は
その人を幸せにしなくてはいけないのに
自分は 愛した人を幸せに
出来なかった事を悔やんでいると
書かれていた。
私は読みながら涙が流れていた。
母が私たちを心から
愛していた事、
そして 私たち以上に
父を愛し 父への想いが
結果 別れという決断をした事に
母の愛の深さや強さに感動していた。
最後の章の前に 既に涙した私だったが
ラスト 私はまた号泣した。




