(4)
伯母の言葉に甘えて
母を伯母に 頼み
私たちは駿のマンションへ向かった。
昨日は気が動転していたから
駿のマンションへ行く道のりも
部屋の雰囲気も
全く目に入らない常態だったが
今日は そんな事もなく 部屋を見渡した。
「男の人なのに、綺麗にしてるのね…」
「そうかな?物がないからじゃないか?
ほとんど、処分したから…殺風景だろ…」
「そんな事ないよ…」
「あっ、コーヒーか紅茶かミルクなら
あるけど 何にする?」
「あっ…私も手伝う…
紅茶でも良い?」
キッチンで 二人並んで 紅茶の準備をしていた。
「何か…こうしてるのが不思議だな…
夢 見てるようだ」
私は駿にニッコリ微笑んだ。
「私も…駿と同じ気持ち…本当…夢じゃないよね?」
駿が 背後から 私を抱きしめた。
「夢じゃない…夢なんかじゃないよ…
紗香 これからは…
どんな事があっても 離さない…
ずっと一緒にいような」
「ウン…」
笛付きケトルが ピィ~ッと鳴りだし
駿の回した腕がゆっくり離れた。
昨日まで 悩んでた事が嘘のような
今、駿の隣に居る事の幸せに
酔いしれていた。
温かい紅茶を飲み
駿が本棚の前に立った。
「あっ!これ…と、これと…これ…3冊…」
駿は 父 長岡哲朗の本を取り出した。
私は真剣な眼差しで 本を手に取った。
『ピリオド』『未来の政治』『引退』
私は恐る恐る 『ピリオド』の
タイトルの本の表紙を 捲った。
目次に目を向けると
恋愛物のような感じが浮かんだ。
「これ…借りても良い?
ゆっくり読みたい…」
「良いよ…そうそう…
それは 不倫のストーリーだったな…
あっ、未来の政治に
顔写真 掲載されてたような…?」
私は『未来の政治』の本の 後ろを捲ると
写真と簡単なプロフィールが掲載されていた。
写真の男性は 紳士的な感じだった。
「この人が…父?」
初めて見る 父らしき人の写真に目を注いだ。




