(3)
母は疲れたのか 直ぐに眠りについた。
伯母は 私たちに珈琲を入れた。
「和さんらしいね…いつも…
そう、かっこよすぎるよね…
和さん、男だったら
本当 惚れ惚れするだろうね」
伯母の言葉にハッと思い出した。
「伯母さん…私と優香の父親って…
政治家って言ってたけど
今も…?」
「今は…違うんじゃないかな?
名前は聞かないね…」
「父親の名前…教えて欲しい…」
「名前?聞いてどうするつもり?」
「一度…会えるなら会ってみたいの…」
「それは、止めといた方が…ルール違反だよ…
和さんは 今後一切 連絡 取らない約束で
あんた達を産んだんだから…」
「それは母ちゃんと父との約束でしょ?
私とは約束していないし…
お願い、伯母さん…
教えて…」
駿は何の話しなのか
全く解らず 二人のやり取りを聞きながら
珈琲を飲んでいた。
「まぁ…名前 教えても
居場所も分からないし
見つけるのも大変だと思うけど…
名前は長岡哲朗…
無茶な事はしないで
向こうには家族もあるし…」
「長岡哲朗?あっ!
その人…知ってる…
作家だよ…
何冊か本も出していて…
俺…読んだ事あるよ…
確か…家にまだあると思うけど…」
「作家?私は本とは無縁だから…
知ら なかったな…」
伯母も驚きを隠せない様子だった。
「駿…その本…貸して…」
「いいよ…確か顔写真も
最後の方に掲載されてたような?
出版社が分かるから
すぐ…調べたら 分かるんじゃないか?
けど…紗香の父親が
そんな有名人って…
ビックリだよな…」
「父の事は…大っぴらに出来ないの…
母ちゃんと事情があって
だから内密に…」
「そうか…分かった…
俺も情報集めるから
先ずは…その本だよな…」
私は 初めて
父親の正体を知る事ができるようで
ワクワクするような気持ちになっていた。
「今日、有給 取ったし…家に来るか?」
「でも…母ちゃんの事もあるし…」
「良いんじゃない?
今日は たくさん話したし…
和さんは 私が見てるから…
これからの事もあるだろうし…
今日は帰ったら…」




