(6)
母が 伯母の所へ移ったので
慎太郎と会った後 私は
伯母の所へ向かった。
母の為に 伯母は
広々とした空間の
設備の整った 個室を
新に作り
伯母は24時間体制で
母の側に居てくれていたので
私たちも 安心していたが、
それでも、母が 残り後 わずかな命と思うと
毎日 欠かさず母の所へ行く事が
日課のようになっていた。
母の所に着き
私は真っ先に
慎太郎と正式に離婚をした事を母に告げた。
「そう…慎太郎が…
何か、そこまで あんたの事
想って戻ってほしいって…
ちょっと、惜しい気がするね…
でも、まぁ…紗香の人生だから…
後悔のないように…
そう決めたのなら
母ちゃんからは 何も言う事ないよ…」
「慎太郎さんが…
慰謝料と言って 500万置いていったの…
こんな大金…慰謝料なんて
貰えないと断ったのに…
どうしたらいいかな?」
「慎太郎が 受け取って欲しいと
言ってるんだから
紗香だって
色んな屈辱もあっただろうし
慰謝料としては
妥当なんじゃないの…
まぁ、あんたも
高校生からだっけ?
菊松庵で働いてたし
慰謝料と言うより
退職金と 思えば…
気もラクなんじゃない?」
「退職金………」
母の退職金と言わ れた言葉で
本当に気がラクになり
慎太郎の好意を素直に
受け止めようと思った。
「母ちゃんとこうして話すと
魔法かけられたみたいに
何か…気がラクになるよ…
やっぱ、母ちゃんは凄いな…」
「何、言ってるの…
そんな誉めても
何も出ないよっ……
ウッ…」
「母ちゃんっ!」
母が急に踞り 苦しみ出した。
直ぐにナースコールのボタンを押すと
伯母が来た。
「伯母さん………」
「大丈夫…痛み止めがきれただけ…
和さん、もう少し辛抱してね…
今 痛み止め打つからね…」
(母ちゃん…)
母の苦しんでる姿を
ただ 見てるだけの私は
胸が痛む思いでその場に立ちすくんでいた。




