(3)
リビングへ入ると
明らかに 生活感の漂う感じだった。
(慎太郎さん…?)
奥の寝室へ入ると
ベッドで絡み合う光景を目の当たりにした。
「…………………」
言葉が出ず茫然と立ちすくむ私。
「なっ何だよ!いきなり………」
慌てた様子の慎太郎。
女はシーツを纏い
慎太郎の背中に隠れるようにしていた。
私はその光景に
大粒の涙を流すだけで
言葉は全く 出なかった。
慎太郎は開きなおった態度に豹変した。
「お前とは子供 出来ないからな…
よその女と試しただけだよ…
出来たら…俺に原因はないだろ………」
慎太郎の言葉に
隠れていた女も身を乗り出して私に言った。
「この人が…子供の産めない奥さん?
慎太郎さんの子供…
私が代理で産んであげてもいいわよ………
奥さん………」
「酷い………」
私は泣きながら部屋を飛び出した。
慎太郎が半年ほど前から
家を空けていたのは
自分達のマンションで
あのような情事の為だったのだと分かると
悔しさで涙が止まらなかった。
人混みも気にせず 泣きながら街をさ迷う私。
雨が降りだした。
涙が雨のように流れ
心も体もずぶ濡れのまま
私は実家へ向かっていた。
「紗香っ…どうした の?
そんなにずぶ濡れで…中へ入って……
桜子~ 桜子~
バスタオル 持って来てちょうだい~」
「紗姉…っ…どうしたの?」
ただ立ちすくむを私を
母と桜子が必死で言葉をかけ
バスタオルで 髪や体を拭いていた。
「シャワーでも浴びておいで………
身体も 冷えてるし…
桜子のジャージ 脱衣場に置いとくから」
私は浴室に連れて行かれ
言われるがまま
シャワーで涙も全て
洗い流した。
用意された服に着替えて
居間へ行くと心配そうに
母と桜子が私を見ていた。
温かいコーヒーを桜子が用意し私に渡した。
「あ…り…がと…」
声を絞り出すよう言った。




