動揺(1)
「紗香は順調に卒業 就職 結婚したんだろ?」
駿の問いかけに 私は全てを話せたら…
そう思う気持ちと
今さら全てを話しても
駿は信じないだろうし
駿を困らせる事になると思うと
過去の全てを話す事は出来なかった。
「順調?あっ…うん」
「でも、あの時 突然…
病気で休んだ時は
俺も驚いたのと…
俺もいきなり転校させられて…
紗香の事も…何か、バイ菌?
感染症?みたいな言い方 親にされて
絶対 近付くなって言われて…
紗香?何の病気だったんだ?」
(酷い…そんな言い方されてたなんて…
何の病気………えっ……
何て言ったらいいの………)
「あっ…その…心の…心の病気…」
駿は不思議そうな顔で私を見た。
「心の病気?って…
前日まで 普通だっただろ?」
「あっ…あの頃は…
思春期だから…
女の子は 心の変化が…
乱れやすかったのかな………」
「そっか…何か わかんねーけど…
もしかして、あの約束が…
心の病気にさせた?」
「あの約束?」
「覚えてないか…
紗香に、ほら…
駄菓子屋で買った
チェーンで指輪
作っただろ…
将来…結婚しようって………」
私は当時の記憶を振り返っていた。
「あっ!………」
そう、私は駿から玩具の チェーンで
作った指輪をもらい
そんな約束を交わした事を思い出した。
「思い出した?あんな事したから
心の病気になったのかな?
けど、両親も酷いよな…
何が感染するやら バイ菌やら………
全然 違うよな!」
「駿のせいじゃないし…
駿の両親も悪くないよ…」
記憶が甦ると また心が痛んでいた。
「結婚生活は幸せか?
俺みたいになるなよ…」
「駿………」
この時ばかりは
嘘を隠し通せずにいた。
私の表情に 結婚生活が
あまり上手くいってないと察した駿だった。




