(5)
この時 私は母親から
赤ちゃんを奪われた気持ちになっていた。
(母ちゃんは酷い…
私から赤ちゃんも
駿も…
私が妊娠したから?
母ちゃんを困らせたから
こんな酷い仕打ちをしてるの?
何で 私が産んだのに
一緒に暮らせないの?
優香は一緒に暮らせるのに
何故?
私だけ………)
嫉妬や憎しみのような
感情だけが込み上げていた。
結局、母親は私を残し
赤ちゃんと退院した。
そして…
私は、一人暮らしの
伯母の家へ…
「学校へは手続きも済ませてあるから…
産後だし 無理しないで
後 少し休んでから
登校したら良いから....
紗ちゃん、複雑な気持ちだと思うけど
和さんは 紗ちゃんの事も
赤ちゃんの事も
凄く真剣に考えてたよ…
和さんって、いつも…そう…
自分の事より…
人の為に考えて…」
伯母の意味深な言葉に 私は母の過去を
初めて 伯母から聞かされた。
「えーっ?伯母さんと姉妹じゃないの?」
母と伯母の父親は同じだが
母親は違っていた。
伯母の母親が本妻で
母の母親は不倫関係で母を産んでいた。
母が9才 伯母も同じ9才の時
運命が変わった。
本妻が病気で亡くなり
哀しみで心が折れていた伯母の所へ
母達 が
伯母の所へ移り住んだ。
最初は伯母も戸惑い
中々 受け入れなかったが
母は懸命に明るく
伯母を励まし
接していく姿に
伯母は 母に心を打ち解け
次第に本当の姉妹のように
なっていったと聞かされた。
「伯母さん…その…不倫とか…
同い年って…
お父さんに対してとか
お祖母ちゃんに対して
恨んだり 憎んだりしなかったの?」
「全てを知ったのは
そうね…
紗ちゃんぐらいの年だったかな…
普通なら許せないよね…
でも、和さんのおかげかな…
和さん自身、私と同じ…
それ以上 複雑な環境だったのに、
とにかく人の為に
思いやる心があったから…」




