(3)
着替えて隣の診察室へ行くと
既に母親が椅子に座っていた。
「弘美…今 何ヵ月?」
「正確にはちょっと…最終月経がわからないし…でも…
多分…9か月…入ってるかな…」
「9か月???」
母は驚いた様子だった。
「9か月…何で、今まで気付かなかったんだろう………
中絶は…?」
「お腹自体は 一般の人より小さいし…
服 着てたら 気付かないかもね…
中絶は…無理だよ…
普通分娩のようにしなきゃ…
でも…そうなると母体も危険だし…
もう…9か月って
ちゃんと赤ちゃんの姿だからね…
超音波するから
向こうの部屋に入って…」
私と母は超音波がある部屋へ行き
お腹を出し 伯母が映し出した。
ボコッボコッボコッボコッと
鳴り響く音。
「これは赤ちゃんの心臓の音…元気だね…
これが手…
あっ…この子 女の子…」
モニターで説明する伯母。
私は何故かその画像を見て 涙が流れた。
「生きてるのに…見殺しには出来ないね…」
母はボソッと言った。
「そうだけど…中学生が出産…となると
ニュースにもなるだろうし…
相手とかは?」
「相手とはまだ話しもしてないよ…」
母の困惑した表情。
伯母の険しい表情。
私はど うしたら良いか 二人の顔を見ながら ただ泣く事しか出来なかった。
しばらく沈黙が続き
母は突然 伯母の両手を掴んだ。
「弘美っ!紗香の赤ちゃん…予定日がきたら産ませて…
紗香が産んだ事にせず
私が産んだ事にして!
あなたなら 出来るでしょ!」
「そんな…そんな偽装したら…バレたら私まで医師免許 剥奪されるわよ…」
「そこを何とか…弘美…一生のお願い…
もう、あんたにしか頼める所ないし…
赤ちゃんは私が責任もって育てるし…
紗香の将来もあるし…
お願い…助けて…」




