第七話 姫との会合
いつもより短いかもしれません。
「ああ、疲れた・・・」
部屋についてすぐにソファーに座りこむ。付いてきたヤタナーシャが椅子に座りながら言った。
「ふふっ、だが本当にすごいな。ゴドッロックはこの国では五指に入る強者なのに勝つとは」
「そんなに強かったのか・・・」
相手がキレててよかった。落ち着いてたらボロ負けだったな。
「ふん、まあ明日の試合は私が勝たせてもらうがな。同じ双剣として楽しませてもらうよ」
そう言って部屋を出て行った。まさかもう戦う羽目になるとは・・・。
「嗚呼、これからどうすんだ俺・・・」
なんかさっきもそんなこと考えていた気がする。この世界に来て力が強くなったのはいいが、誰かと戦って死にたくはない。さっきの決闘も殺すところまでありだったようだし。そこまで考えて考えるのをやめた。ソファーから立ち上がり、
「風呂でも入るか」
思考放棄した。
「シューリン殿、姫のお呼び出しです。晩餐の招待です」 「ああ、どうも」
こちらです、と言いながら前を進むメイドさんについていく。服はヤタナーシャに選んでもらったものだから問題はないだろう。下着は・・・、聞くな。
「ああ、シューリン。君もか」 「ナーシャもか」
扉の前にはヤタナーシャがいた。彼女も晩餐に誘われたらしい。
「じゃあ入るか」 「あ、ああ」
少し緊張しながらヤタナーシャのあとについて部屋に入る。
「お待ちしていました」
可愛い。
客間で別れてからの再会だった。数時間しかたっていないはずだがやけに長く感じた。
が、すぐにそんな感傷はなくなり、そう思ってしまった。
「シューリン?」 「あ、ああ」
ヤタナーシャに呼ばれ我を取り戻し慌てて一礼する。するとなんとフリーシアも頭を下げてきた。
「こちらも申し訳ありません。臣下が迷惑をかけてしまい、ゴドロックは騎士として誇りを些か傲慢に持っておりますので」
「別に問題はないですよ、怪我もしませんでしたし」
死ななければ問題ない。そう思いながら告げると、嬉しそうな表情で、
「ならばこの国の騎士になってもらえないでしょうか?」 「ゑ?」
変な声を出してしまった。いきなり騎士とは。
「騎士となればゴドロックも文句を言ってこないはずです」
「あいつは騎士以下の身分の者を徹底的に見下す。だから君も騎士身分になれば文句を言われないと思う。どうだろう?」
ヤタナーシャも言ってくる。そう言ってもいきなりどこの馬ともしれない者を騎士にしていいのか?
「そういってもいきなりというか・・・、良いのか?」
「まあとくに問題はない。かくいうこの私も孤児から騎士にならして貰ったしな」
「へっ?ナー・・・、ヤタナーシャさんもか?」
驚いた。まさか孤児だったとは、俺の驚いた顔を見てくすりと笑いながらフリーシアが言う。
「別に私の前だからと言って元に戻さなくていいですよ。それで、どうですか?」
「ああ、どうも。・・・でも騎士の件は・・・遠慮します」
二人とも驚いたように俺を見てくる。そばに控えているメイドさんは無表情だが。
「それはまたどうして?」
「あー、えっとだな、まだ記憶が戻ってないし、それに未熟だからな」
「なら私が付きっきりで鍛えてやる。それならいいだろう?」
「ええ、それならすぐに強くなりますね。今度の試合にあなたが負けたらそのようにするということで」
いきなり決められた。くそっ、断られた時を考えていたな。俺が苦虫を噛み潰したような顔をしていると、姫が笑って言うのだった。
「それでは食事にしましょう。これからのことは明日の試合で決めるということで」
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