第六話 決闘
何故か今回だけいつもの二倍になってしまいました・・・。
「久しぶりじゃのう、ナーシャ」
腰までくらいしかない少女が目の前に立っていた。この世界のオリジナルの服なのか変わった造形の和服を着こみ、腰に手を当てて帰り道をふさぐように立っていた。ヤタナーシャが緊張したように構えながら言った。
「ああ、久しぶりだな、タマモ」 「くくっ、あいかわらず可愛げがないのう。ふむ、そちらは見たことがないのう。城の新入りか?」
興味深げにこちらを見てくるタマモ。なんとなく視姦されている感じだ。ふつう逆だろう。
「いや、姫の客人だ」 「ほう、あの姫の客人とは。珍しい」
姫の客人というが城か国のじゃないのか?なんか特別な意味でもあるんだろうか。しばらく黙考していたタマモだったが、不意にこちらを見て、
「ふむ、少年、儂の情夫にならんか?いまなら特別に部屋を与えて飼ってやるぞ」
「いやそんな待遇でのこのこついていくやつがいるならぜひとも教えてくれ」
「いるぞ」 「いるんだ・・・」 「おぬしを含めればこれで78人じゃ」
なんかいやってるんだ・・・。そこでヤタナーシャが前に進み出てタマモに言った。
「悪いがこの少年は姫の客人。あなたに渡すことはできない」 「ふむ、交渉決裂か」
いつ交渉した。タマモが手を下すと同時に感じたことのない風のようなものが吹き抜けていき、タマモの下半身から大量の尻尾が出てきて、頭からは耳が出てきた。同時にヤタナーシャも背中と左の腰から剣を抜きこちらもまた妙な空気を流し始めた。まさか戦う気か?やるなら俺がいない時にやってほしい。止めようと口を開けた時にはもう遅かった。
「はっ!]
裂帛の気合いとともに駆け出すヤタナーシャ。速い、何とか目で追えるような速度だ。それに対したまもは尻尾で迎え撃った。そんな使い方すんのか。
「まだまだ甘いぞ!ナーシャ!今まで年上の騎士に守ってもらったツケが回ってきたのかのう」
「くっ、―あっ!」 「ふふっ、捕まえたぞ。さてどうするかいじめてもよいが、男の目の前でやられたいか?」 「なぁ!?」 「はっ!?」
大量の尻尾を使うタマモに吊り上げられたヤタナーシャに向かっていうタマモ。にやにや笑いながらヤタナーシャの服の中に尻尾を這わせる。
「くぁっ!?」
変なうめき声をあげるヤタナーシャを見てすぐに助けようと決め、大通りとは違い石畳で舗装されていない路地には拳ぐらいの石がまばらに落ちている。それを拾って投げつける。
「むっ!」
尻尾で弾かれた。その拍子にヤタナーシャから尻尾が外れる。まだ外すには拘束している尻尾が多いようなので三個連続して投げつけた。
「速いな!」
今度は尻尾ではなく魔法陣っぽいもので防がれた。石が粉々に砕け散る。
「魔力で強化してるのか?速いな!むっ!?」 「助かったシューリン!こっちだ!」
タマモが意識を逸らした瞬間に激しくもがき、拘束から逃れるヤタナーシャ。そのまま俺の手を引き、路地を複雑に曲がっていく。
「また会おうぞ。少年」
嫌な宣言を聞きながら走り去る。
「先ほどは助かった。礼を言うよ」 「いやまあ・・・、どうも」
結局その後タマモと遭遇することなく城壁の外で待っていた馬車に乗ることができた。馬車の中で頭を下げられた。ごまかすように疑問を口にする。
「なんで魔物が街にいるんだ?」 「ああ、あいつは魔物じゃなくて妖怪と言われるんだが・・・、いやいまはいいか。あいつは姿を隠して移動できるからな城壁はあまり意味ないんだ。・・・まあ普段何もしてこないからいいのだが、今の戦力で倒せないのもあるな」 「なるほど・・・」
妖怪と魔物ってどう違うんだ?まあいいか。どうせまた会うようなこといってたし。
城に帰ってからヤタナーシャはシャワーを浴びるといいどっかへいった。部屋でくつろいでいるが暇だ。
さっき服を着替えてみたが剣道着の着かたはあっちとほとんど変わらなかった。
「城でもみてみるか・・・」
独り言を呟き部屋を出る。通路を歩いていると中庭から声が聞こえてくる。近づいてそれを見ると、
「「「せい!!せい!!」」」
ああ、兵士の訓練中か。同じ素振りを続けている。面倒くさそうだな。と訓練をぼけーと眺めていると、
「貴様は姫の客分じゃないか、この穀潰しめ!」
いきなり罵倒された。振り向くと朝いきなり切りかかってきたゴドロックだった。
「なにか?」 「ふん!何もせずに生活しようとは腐っているようだな。貴様なんぞそこら辺の家畜よりも劣る!」 「はぁ、で?」 「貴様!おちょくっているのか!?」
いきなりキレられた、何故?こめかみに青筋を立てて睨んでくる。そして叫んできた。
「決闘だ!!その侮辱!剣での果し合いでしか解決できない!」 「はっ?」
「今すぐにだ!ついてこい!」 「ちょ待っ!?剣を持ってないから俺!」
「武器なんぞこの城の武器庫に大量にある!・・・それにその言い方、剣を持ったことがあるということを言っているようにも聞こえるしな」
そういいにやりと嗤うゴドロック。しまった、言い方がまずかった。しかしもう一階に降り、中庭に入ろうとしている。仕方なく覚悟を決める。
「ああ、もういいや」
壁に立てかけられた武器を物色する。一応戦わないようにヤタナーシャが来るように時間をかける。あいつならこの決闘を止められるかもしれないからな。
「早くしろ」 「へいへい」
無理だった。十秒も待ってくれない。なんて奴だ。壁に立てかけられているのは剣やら槍、斧、盾、矛やら戟が並んでおり、地面にもナイフやらが落ちている。まず矛と戟はなしだな。使い方が分からん。盾も力が強くなっているとはいえうまく使えなさそうだな。残りは剣か槍なんだが・・・、ゴドッロックのほうを見る。あいつの武器はあいつと同じ長さの大剣、たくましく鍛えられた腕からなんとなくあれを受け止めたら武器ごと切られるな、と分かる。つまり槍もなしだな。避けられない。
「仕方ない。剣か・・・」
そう呟いて剣をとる。そこでふと思い出す。ヤタナーシャは二刀使っていたな。まあ命までとらないだろうから使ってみるか。壁からもう一本掴む。そこでゴドロックが嗤った。
「ふん二刀なんぞ親衛隊長しか使えん。どうせ剣の数が多い方がいいと考えているのだろう」
吐き捨てるようにいい、中庭の中央に向かうのでそれについていく。中央に行くとゴドロックは何も言わずに剣を抜く。その動きだけで周りの兵士達が静まり返る。兵士を鍛えていた騎士も面白そうに見物している。仕方ないので二刀の剣を右手の剣を前に、左の剣を後ろに構える。これが一番構えやすい。
「はぁ!!」 「うわ!?」
剣を構えるといきなり切りかかてきた。身体能力が上がり、動体視力も上がっていたのでそこまで苦労せずに避けられた。剣を振り抜いてくれたのでがら空きの体に切りかかる。が、
「ふんっ!!」 「はっ!?」
薙ぎ払われた。完全に腕が伸びきった状態で。慌てて飛び退く。
「どんだけ力強いんだよ・・・」
ゴドロックはそのまま剣を後ろに構えるとかなりのスピードで迫ってくる。だが見えないわけではないので跳躍して避ける。そのまま背後に回り袈裟切りをしたゴドッロックの隙だらけの首に剣を突きつけ、
「これでいいか?」
と言う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
何で俺は相手をさらに焚き付けるようなことをいっているんだ・・・!?
「貴様・・・!」
いきなり剣を振り抜いてきた。気を抜いていたのでまったく反応できない。が、
ギインッ!!
「そこまでだな、ゴドロック」 「親衛隊長・・・!」
ヤタナーシャが弾いた。いつの間にか自分の横に立っていた。笑いながらこっちを向き、
「なかなかよかったじゃないか。決闘と聞いて心配したのだが・・・、逆に勝つとは」
そう言ってきた。
「ああ、まあ・・・」
そう言うことしかできない。今まで殺し合いをしていたのに恐怖よりも興奮というか楽しんでいた気がする。意外と戦闘狂の気があるかもしれない。そこで思いついたようにヤタナーシャが言った。
「そうだ、私と勝負しないか?」
笑いながら言ってくるので溜息をつきながら言う。
「少しは休ませてくれ」
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