第四話 モンスターとの遭遇
なかなか前に進みませんね・・・。次の次くらいで主人公も戦い始めます。
「そういえば他に服とかはないのか?」 「あっ」
どうするか、買うにしても金がない・・・。考え込んでいるとヤタナーシャがため息をついた。
「まあ記憶喪失だから仕方ないな・・・服程度ならまあ金を貸してやる。あと町も紹介しないとな」
「ああ、ありがとう」 「支度をしてくる。少し待ってろ」
そう言って去っていく。・・・さて、部屋の中身でも確認するか。といっても入った瞬間に寝室だったのであまり探索する意味はなかった。
「おっ?」
なんとキッチンがある。というか風呂まである。シャワー付きの。どうやって出すのかはわからないがありがたい。
「どうするんだろうなこれから・・・」
ベットに腰掛けながら考え込んだ。何の前振りもなくいきなり異世界に引き込まれたのだ、帰る方法どころかフリーシアに会っていなければ飢え死にしていたかもしれないのだ。
「まあ一応この城に住まわしてもらうんだ。有難く享受するか」
そう呟いて立ち上がりドアノブに手をかけ・・・たところでドアをノックされた。ヤタナーシャか。
「はい」 「準備はできたか?じゃあ行こうか」
城を正門から出て歩き出す・・・って遥か遠くなんだけど街が見えるの。えっ、まさか歩くのあそこまで。
「そう心配そうな顔をするな。馬車がある」 「あ、ああ」
落ち着いた声で言うヤタナーシャ。一瞬びっくりした。そう話しているうちに馬車が目の前にきた。
「へえ、かなり遠いんだな。街とこんなに離れていて良いのか?」 「ん?ああまあこの城は大陸のでっぱった場所に位置してるからな。城を攻めるには先ずあの街をせめないといけない。海から攻めようにも海沿いの大部分が断崖絶壁になってるから攻められないんだ」
まあ昔崖を登ってきた奴もいたがな。そういって話を締めくくり前を向くヤタナーシャ。馬車に揺られて1時間ほどたっている(こっそり時計で確認した)。街がやっとこの世界に来てから強化された眼ではっきり見えるようになった。初めてだったが馬車で酔わずに済んだらしい。すると初老の御者の方が、
「来ます」 「ああ」
そうヤタナーシャに告げ、彼女はうなずいた。何が来るのかと首をかしげるといきなり、
―ゴブリンが現れた!―
とか字幕が出てきそうな感じで側面の森からゴブリンが出てきた。実際に見たことはもちろんなかったがこれがゴブリンじゃなかったら泣ける。そのくらい緑色の体で粗末な服を着て錆びた斧を掲げていた。まさにゲームとかでみられるようなゴブリンだった。
「あれは?」 「知らないのか?ゴブリンだが。爺、そのまま直進してくれ」 「はい」
ゴブリンであっていた。しかし直進するのか。討伐する必要はないのか?疑問に思っているとそのまま馬車はゴブリンの方向へ、ゴブリンもその場に留まっておらず、走って向かってくる。緊張の一瞬、
ぐしゃっ
・・・・・・。馬がゴブリンを踏みつぶした。御者の方と馬でよく見えなかったが、確かに踏みつぶしていた。慌てて、失礼、と言ってから馬車のドアを開け、後方を見る。
嗚呼、そこには無残に馬の蹄に潰された元ゴブリンの姿が。うわぁ、すごい。頭が胸にめり込んでるよ。
少しだけ気持ち悪くなったがいくら目が良くても揺れている馬車からだとうまく見れなかった。ある意味良かった。落ち着いてドアを閉じ、椅子に座りなおすと、ヤタナーシャが、
「おどろいた、ああいうのを見て吐かないとは。基本みんな最初は吐くのに」
「ええ、珍しいです」
「はあ・・・」
笑いながらヤタナーシャと御者さんが言ってくる。かなり複雑だった。
しばらくすると街まであと一直線を残すのみとなった。街を囲うそれほど高くない城壁が近づいてくる。こちらの道は城以外何もないので、人通りはほとんどないようだ。これで一息つけると思った矢先に、
―スライムが現れた!―
とか出そうな感じでスライムが出てきた。いびつながらも人型の形をとっている。
するとすかさずヤタナーシャが、
「ファイヤッ」
と叫んでいつ抜いたかわからないような速さで剣を前に突き出す。すると剣の切っ先に炎があらわれ、人型スライムに激突する。スライムは一瞬で蒸発する。弱っ。へえ、この世界は魔法を使えるのか。剣を収めたヤタナーシャが真剣な顔で、
「ゴブリンはともかく、あのスライムには油断するな。剣が効かない上にあれに包まれたら精を搾り取られるからな」
「なっ!」
びっくりした。意外と厄介だな、剣が効かないとは。あと精を搾り取られるって・・・。
「着きました」
そう御者の方が言い、馬車を停める。 (面倒な入国手続きは割愛させてもらいます。)
がやがや、ざわざわ。
「へえ」
城壁の中をくぐると、かなり広い街の中で大量の人々で賑わっていた。中々活気のある街らしい。さすが城下町?
「さてまずは君の服を探しに行くぞ。それからいろいろ案内するよ」
そう言って手を握ってくる。思ったよりも柔らかい腕にどきっとしつつ、引っ張られていった。
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