第三話 トラステント城
「ではあなたがフリーシアを助けてくれたのですか?」 「ええまあそうなりますね・・・」
完全に星羅蝶?を仕留めた後、フリーシアの家へ向かうことになった。
「しかし星羅蝶をどうしとめたのですか?あれはこの辺りで一番厄介な敵だったはず・・・。」
いや最後に仕留めたのはあなたじゃ・・・。そこでフリーシアが口をはさむ。
「それがただの石なんです!!」 「石ですか?」 「ええ」
興奮したように言う。
「いったいどこの出身なのですか?いや出身は関係ないかもしれませんが・・・?」
「いやえっと・・・」 「この方はシューリンと言って、記憶喪失のようなんです」 「記憶喪失?」
ライトブルーの髪の少女は首を傾げる。
「じゃあどうやってここに?」 「いや起きたら森の中で寝ていて・・・」 「はあ・・」
しかしどうやってこの少女はあいつを倒したのだろう?何も持ってないし。首を傾げていると、
「着きましたよ」 「えっ?」
言葉を失うとはこのことか。いや見て見ぬふりをしていたのだが・・・。城だった、西洋風の。
「えっと君は?」
そうフリーシアに聞くとライトブルーの少女が、まだ名前を聞いていない。
「知らなかったのか?こちらはフリーシア・ベリアッド姫ですよ」 「よろしくお願いします」
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まさかの姫様ですか。俺が助けたのは。黙っているのを気にせず少女は続ける。
「いまは王と女王がいないのでこの国の最高責任者です。このたびは本当に助けてありがとうございます。それでは城、トラステント城に案内します」
そう言って城の裏門に入っていく。嗚呼、どうなるんだこれ・・・。
「お帰りなさいませ姫様」
城に入ると好奇の目をしながら恭しく礼をしてくる。まあ目立つというか見たこともない服装をしているからな。しかたないな。そして本当に姫様なんだな。そう思っていると、
「姫!!」 「あらゴドロック、お勤めご苦労様」 「はい、ありがとうございます・・・じゃなくて!またどこに行っていたのですか!」 「散歩ですが何か?」
ゴドロックと呼ばれた褐色の壮年の人はがっくりと項垂れる。どうやら勝手に出かけたようだ。まあ自分には関係ない。黙っているとゴドロックと呼ばれた人がにらんできた。
「貴様、何者だ!?」
いや、姫様と一緒にいるんだから怪しくはないと思うんだけど・・・、いや怪しいか。見たことない服着ているはずだし。
「このかたに姫を助けてもらったのです」 「シューリンです」
少女が助け舟を出してくれるたので自己紹介する。いや名前しか言ってないけど。するとゴドロックが、
「貴族でもない者が・・・死ね!」 「うわ!」
いきなり切りかかってきた。貴族でなければ入れないのだろうか、いやでもメイドいるし。そんなことを考えながらよけると少女が助太刀に入ってくれる。
「よさないか!」 「くっ、しかしヤタナーシャ親衛隊隊長!このように怪しげな者を!」
ふむ、この少女はヤタナーシャというのか。というか親衛隊の隊長なのか。怪しげですまなかったな!
「ゴドロック、下がりなさい。この方は私を助けてくれた命の恩人です。決して危険な人ではありません
」 「申し訳ありません」
そう言って引き下がるが微妙に睨んだままだ。しかしそのまま立ち去って行った。
「部下の非礼申し訳ありません」 「こちらからも謝らしていただきます」
そう言って頭を下げてくるがまさか姫に下げさしているままでは申し訳ない。
「いいですけど・・・これからどうすればいいのですか?」「えっとじゃあ客まで待っていてください」
そう言って客間の部屋まで連れて行かれてから二十分後、
「お待たせしました」
フリーシア姫が服を変えてヤタナーシャとやってきたかなり似合ったパーティドレス。これもピンク色でありとても似合っている。ヤタナーシャのほうは変わらず騎士服?のままだが。そこでフリーシアが口を開いた。
「それでですね、よければ記憶が戻るまで食客として滞在されるとうれしいのですが・・・どうです?」
「いいんですか?」
願ってもない話だ。危険人物はいるものの、城の食客待遇とは有り難い。もしかしたら誰とも合わずにのたれ死んでいたかもしれないのだ。こんなおいしい話はない。
「ええ、部屋の案内はナーシャに任せます。ああ紹介してませんでしたね。ヤタナーシャと言います」
「ヤタナーシャ・ノルンドですシューリン、ナーシャと呼んでくれ」 「ああ、よろしく」
そう言って握手する。やわらかい手にドキッとしたが顔には出さない。その後一人部屋に案内されるために連れて行かれたのだが、その途中で、練兵場を通った時にナーシャが、
「なあ、一戦交えないか?」 「えっ?いや戦い方を知らない・・・」
「大丈夫だ多分戦い方は体が覚えているはずだ」 「おい・・・」
なんという理不尽。ごまかすために早く部屋に逃げ込みたい。
「えっと部屋は・・・?」 「むっ、先に部屋を紹介してからでならいいな」
よくねえ、反論することもできずにそのままヤタナーシャについていくと行き止まりに部屋が見えた。
「ここが君の部屋だ」 「へぇ」
なかなか、というかかなりいい部屋だった。綺麗な部屋にやわらかそうなベット、調度品も価値こそわからないもののセンスの良さを感じる。かなりいい待遇のようだ。
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