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ふとネタが浮かんだのでゲームの企画的な感じで纏めてたら
システムが上手く考えられなくて諦めたもの。
メリットとデメリットで上手くいけば面白そうなの浮かぶかもと思ったんですけどね。
残念無念。
目が覚めるとそこは異世界だった。
いや、流石にそれはどんなボケだと思うかもしれないが……。
非天然色な色合いの髪をした全裸に限りなく近い女性がすぐそばに居たら流石にそうだろうと思わざるを得ないだろう。
実際今もなお何度も見直しているが一向に姿が消える気配はなく、幻覚ではないと思い知らされている。
……あ、一応触って確かめておくか。
そう思うやいなや深く考えずに目の前の女性の手に触れてみた。
普通に触れることができる。残念ながらこれが幻覚である可能性がまた否定された。
……まあ、大穴で露出狂な髪を染めた女性という線もあるが。この周りの風景が俺の知っている世界を否定している。
……だって良く判らないものが空飛んでるんだぜ?
竜っぽいけど不細工な何かが。
まあ、挿絵とかだとカッコ良く描いてあるだけなのかもしれないけど。
恐竜とかとも違って、超ダサい。
「〇×□?!」
「ああ、すみません」
手に触れただけだというのに目の前の彼女はひどく驚いた様なリアクションをとった。
俺が謝っててを放すと慌てて飛び退いた。
……かなりショックだ。
まあ確かに、よくよく考えれば見ず知らずの男にいきなり手を取られるとか驚くに決まってるよな。
考えに耽っていた間ずっと触っていたし、一応謝っといた方が良いだろう。
「いや、ホントすみません。今、ちょっと前後不覚に陥ってまして。宜しければここが何処だか教えていただけません?」
「……?」
出来る限り紳士的に話しかけるように心がける。
手を話した後も暫くあたふたしていたのだが、俺が再び話しかけたら立ち直ったっぽい。
しかし、何故か俺の質問に対しての返答は無く、代わりに首を傾げて俺を上目遣いに見るだけだった。
……可愛いじゃねーか。
「いやね? 俺、ここがどこだか解らないんで、出来れば教えて頂けますと……」
「イヤ……ネ? オレコ、コガド…?」
なんか要領を得ていない反応が返ってくる。
……あれ? もしかして言葉が通じてない?
そう言えばさっき手に触った時に何か意味不明なこと言ってたけど、あれって奇声ではなくこの人たちの言葉だったり?
やば、やばい、やばいっすよ。生活範囲外の対話不能地域でもしサバイバルとかになったら死亡フラグしか見えてこないじゃねーか!
というか、この人たち人喰ったりしないよな?! もしそんなことがあったら俺今すぐ殺されて今日の夕食にされるとか? 可愛い顔してえげつないじゃない!
一気に妄想が膨れ上がる。服を剥ぎ取られ、木に手足を縛られ火に炙られる俺。
エロならまだしも猟奇は嫌だ。
『もしもし?』
マジでどうやれば生き残れるのかわかんねぇ……。
『ねえ、聞こえる?』
やべーいつの間にか無意識に現実逃避し始めてるのか変な声が頭に響いてきた。
しかし、この声結構可愛いな。……おおぅ、手が震えてやがるぜ。
『可愛いとかいきなり言われても困るけど、一応聞こえては居るみたいね。良かった』
おや、俺の思考に返信が来た。というか、素に戻っても聞こえてるってことは幻聴じゃないのか。
『幻聴って失礼ね! ……まあ、初めて「意識会話」をしたのなら戸惑うのも仕方がないかもね』
そう頭の中で言われると同時に目の前の女性が微笑んだ。
……もしかして、この声ってこの人の?
『正解。ようやく気がついたのね』
「いや、はじめての経験で……」
そう俺が口に出して返事をすると、目の前の女性はワタワタと手を振りながら違うというゼスチャーをした。……ボディランゲージは似通っているらしい。
『あ、ゴメンなさい。この会話って喋ってる時の意識は伝えられないの。あと、私の声に返事をしようって意識してなくてもダメ』
『へー、プライバシーもちゃんと考えられてるんだこの会話方法って』
小説と違ってかなり使い勝手が良さそうだ。ただし、その分悪い事を企まれても知る事も出来ない。まあ、それはメリットにもなりうるが、簡単に悪事を暴くとかって事は出来ないっぽい。
とか余計なことを考えてしまう。
『そうねー。あとこの会話は意識での対話になるから言語が理解できなくても通じるし、お互いが知り合いなら遠く離れていても話し合えるわね』
『へー凄いな。そんな事が出来るなんてこの世界の人は凄いんだな』
全く、とても羨ましいなこの世界の人間たちは。俺も頑張れば覚えられるのかな?
『? 人? 何言ってるの、人にはこんな事普通できないわよ。出来ても精霊魔法を使える一部の人だけね。それも私たちの力が無いと無理だし』
……せいれい?
なんかいきなりファンタジーな単語が出てきたけど。一応聴き間違いの可能性もあるので確認しよう。
『私たちって言ってたけど、もしかして君って……?』
『そうね、私たちを人は精霊って呼んでるわよ。それにしても驚いたわ。まさか姿を見られるだけじゃなく、許可もしてないのに精霊に触れられる人間がいるだなんて。良く実体化していない精霊に触れるわね?』
『……は?』
『いやー、実体化もせずにお互い触れ合えるとか不思議だわ』
ペタペタと不思議そうにあちこち触ってくる女性。もとい精霊。
一体どういうことなんだ?
『ん? どういうことって……。普通は精霊魔法使いでも私たちを認識出来ても見ることは出来ないわ。見える人間でもほんの一握り。もしも姿を見せる事があったとしても、わざわざこちらが実体化してあげなければならないのよ』
『へーそうなんだ。でも俺は普通に触れるんだけど?』
『ホント、それが不思議なのよねー』
軽く触るだけでは飽き足らず後ろからのしかかって来た。そして今度は頭をぽふぽふと触り始める。どうやら色々な所の感触を確かめたくなったらしい。
しかし、女性とはいえ見た目はまだ十代半ばで胸は慎ましやかで服越しだとあんまり感触は伺えない。
知的好奇心を満たしたいのかもしれないが、多少なりともこちらに役得が無いと流石に鬱陶しくなってくる。
『いい加減触るの止めてくれないですか?』
『無理』
……即答だった。
イラっといたので押しのけて立ち上がると、今度はこちらが精霊の後ろに座る。俺と同じ苦しみを味わうがよい。
『うわわ、何するか』
『俺と同じく鬱陶しさを噛み締めるがよい!』
そう言うと俺は後ろから抱きしめて頭を撫でることにした。
精霊とはいえ女の子。肌で触れるとその柔らかさに感動を覚える。
本当に柔らかいんだな。
そう言えば俺って元の世界だと女性とこうしてイチャつく様な事は出来なかったしな。
……なんか俺今すごい幸せなんですけど。
『いや、全く鬱陶しく感じないぞ? ……むしろ気持ちいいというか、落ち着く感じがする』
目の前の精霊はそう言うと表情を緩ませてこちらに微笑んだ。
やばいな。動悸が激しくなりそうだ。
『それじゃあ、俺の気が済むまで撫でさせてもらおうか!』
『うにぇぁ~』
俺の気恥しさを抑えるための気合のこもった声をスルーして、精霊は返事なのか鳴き声なのか良くわからない言葉を返してきた。
こうして俺は現状を良く把握していないことを思い出すまでの間、心行くまでこの精霊を撫でまわす事にした。
……というか、日が暮れるまで気付かなかった。
それもこれもこの幸せそうに俺の膝で寝こけている精霊のせいだ。
そういうことにしておこう。
多分、タイトルとしては使われてないと思います。
似たようなの一杯ありますけど。
……真面目に考えるの面倒ですし。