親愛なる相棒の墓標に花束を
———崖の上には一つの墓標が立っていた。
すぐ下にある浜辺の波の音がよく聴こえる。
その墓標には“名もなき旅人此処に眠る“と刻まれている。
そこにある男が花束を持ってやって来た。
男は花束を墓標の前に置くと煙草に火を点ける。
男は座り、煙草を吸った後に口を開いた。
「———ふーっ。
…お前が居なくなって結構経ったよな。
こっちも色々あってさ。
強敵と戦ったりとか、いろんな依頼こなしたりとかさ。
お前と一緒にいた時はうまいもん食ったりとか、同じ女に言い寄ったりとかしたりさ。
だからまたお前の所に来てまた色々話せてよかったよ。
そうだ、今日はお土産があるんだぜ。」
男はそう云って懐から取り出した酒を開け、墓標に掛けた。
「この酒、お前が好きな酒だったよな。
ちょうど醸造してる村に寄ってさ。
俺と一緒に呑もうぜ。」
男はそう云って瓶に残った酒を飲む。
「やっぱ酒と言ったらこの味だよな。
『おい。』
…なあ、相棒。」
『いつまでこんな茶番やってるつもりだ?
オレの相棒としてどうなんだよ?』
「…まあー悪巫山戯はこれぐらいにしとくかー」
そうやって立ち上がった男は振り返り、半透明の相棒に目をやる。
男の相棒は2年前に依頼途中で死んだ。
男は禁忌の術を使い、精神体だけをこの世界に繋ぎ止めたのだ。
『いつもこの茶番するよな。』
「折角近くに来たんだしいいだろ。」
『自分の墓の前で毎回茶番される身にもなってくれよ…』
「悪りぃ悪りぃ」
『全く…どうだか。』
二人の旅はまだまだ続く。




