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第8話 貴族からの依頼


アランの工房に、思わぬ来訪者が現れた。

黒いマントに金色の刺繍を施した、由緒ある貴族の使者だ。


「錬金術師アラン殿、貴殿の技術を拝見したい」

言葉遣いは丁寧だが、どこか威圧感が漂う。

アランは背筋を伸ばし、剣を手に立った。


「……私の技術でお役に立てるなら」

そう答えるアランの胸には緊張が走る。

包丁剣の噂は街中だけでなく、貴族階級にも届いていたのだ。


使者は工房の中を見渡し、少し首を傾げた。

「なるほど……この剣は噂通りのものか」

剣を手に取り、軽く振る。

「だが、我々の望む条件は厳しい」


アランは警戒心を強める。

「条件……?」

使者は無表情のまま告げた。


「我が領地の騎士団に、この剣を量産してほしい」

さらに付け加える。

「魔力循環構造も完全に再現すること」


アランは息を呑む。

「完全再現……!? 無理です。偶然の産物ですから」

だが使者の目には、冷たい光が宿っていた。


「貴殿にしかできぬ技術だと聞いている」

その言葉は脅迫にも似て、アランの心を揺さぶった。


リカルドが工房に入ってきて、アランの肩に手を置く。

「落ち着け。君のペースでいい」

その言葉に少し勇気が湧く。

だが現実は甘くない。


「量産は可能か?」

使者の問いは、アランに大きな課題を突きつけた。

偶然の魔力循環構造を安定させ、量産する――

錬金術師としての腕が、試される瞬間だった。


アランは剣を握り、深呼吸した。

「……やってみます。条件は厳しいですが、挑戦してみます」

その決意に、使者は微かに頷き、そっと工房を後にした。


リカルドはアランの横顔を見つめる。

「君ならできるさ。俺は信じている」

包丁剣――失敗作の奇跡は、今や錬金術師の腕と知恵で本物の武器へと進化しようとしていた。


夜、アランは作業台に座り、材料と配合表を前に考え込む。

「これが、錬金術師としての現実……」

偶然の奇跡を必然に変える挑戦が、静かに幕を開けたのだった。


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