第7話 最初の成功
翌朝、アランは早くから工房に向かっていた。
昨夜、リカルドの言葉で胸に灯った火が、まだ消えずに残っている。
「よし……今日こそ、少しでもあの剣に近づける」
手元には新たに調合した金属と魔力注入の材料が並んでいる。
アランは一つずつ工程を確認しながら作業を進める。
温度、配合、魔力の注入速度――すべてを慎重に調整する。
心の中で何度も試行錯誤を繰り返し、指先で微妙な振動を感じ取る。
「これなら……」
不安と期待が入り混じる中、アランは刃を完成させた。
手に取ると、確かに前回よりも軽く、バランスが良い。
切れ味も向上している気がした。
リカルドが工房に現れる。
「おお、もう完成か?」
彼の目が輝き、自然とアランの胸も熱くなる。
「はい……今回は少し改良しました」
アランは剣を手渡す。
リカルドは刃を軽く振り、空気を切る感覚を確かめる。
「うん……いいぞ!」
笑顔で剣を掲げるリカルドの手元を見て、アランは初めて実感した。
「俺の錬金術、誰かの役に立った……」
街に出てリカルドが試しに剣を振ると、町の人々は驚きの声を上げる。
「切れ味が違う!」「あの包丁剣、やっぱりすごい!」
アランの心に、誇らしさと安堵が同時に広がった。
しかし、ここで満足するわけにはいかない。
アランは気づいていた。
「偶然じゃなく、必然に変えなければ……本当の意味で強い剣にはならない」
その日、工房に戻ったアランは作業台に向かう。
「次はもっと改良してみよう……」
錬金術師としての挑戦はまだ始まったばかり。
包丁剣――失敗作から生まれた奇跡は、
少しずつだが確実に、錬金術師アランの手で形を変えていく。
夜空に浮かぶ月を見上げ、アランは小さく呟いた。
「これが、俺の道……錬金術師として歩む道だ」




