第5話 再現失敗
アランは工房にこもり、包丁剣の再現に挑んでいた。
だがどれだけ材料を調整しても、あの切れ味は再現できない。
「どうして……!? 同じ金属、同じ配合……なのに!」
手を震わせ、アランは刃を握りしめる。
微細な魔力の流れが、どうしても以前の剣と一致しないのだ。
金属を叩き、溶かし、鍛え直す。
温度、魔力の注入量、冷却の速さ……
全てを完璧に揃えたつもりだった。
しかし、刃を振った瞬間に違和感が走る。
切れ味が鈍く、重心も不安定だ。
「偶然……あれは偶然だったのか……」
アランは肩を落とし、膝をついた。
錬金術師としての誇りが、音もなく砕けていく。
そこにリカルドが入ってきた。
「どうだ? 進んでいるか?」
その目は真剣だったが、どこか温かい光を帯びている。
アランは剣を差し出し、ため息をついた。
「……まだだ。再現は失敗した」
リカルドは剣を手に取り、軽く振ってみる。
「うん……でも問題ない」
アランは耳を疑った。
「問題ない……!?」
リカルドは笑い、剣を握りしめたまま言った。
「失敗作でも、俺にはこれが十分強い。君の努力は無駄じゃない」
その言葉に、アランの胸に少し光が差し込む。
「そうか……俺の技術が足りなくても、誰かがそれを活かしてくれる」
偶然の産物が、誰かの手で奇跡になる――
その可能性を、アランは初めて理解した。
だが、心の奥では悔しさが消えない。
「必ず再現してみせる……必ず」
アランは再び材料を広げ、実験台に向かう。
錬金術師としての現実――
偶然と必然の狭間で、彼の挑戦はまだ始まったばかりだった。
包丁剣――その失敗の陰に隠された可能性が、
アランの未来を静かに揺り動かしている。




