第4話 包丁剣の秘密
ある日の夕暮れ、アランは包丁剣を机に並べてじっと見つめた。
失敗作だと思っていた剣が、なぜあれほどの威力を発揮したのか。
「偶然……だけでは説明できない」
金属の冷たさ、刃の形状、重心……そして微かに流れる魔力の感覚。
アランは手に取った剣を軽く振り、空気の流れを確かめる。
すると、刃の中心部で微妙に魔力が循環していることに気づいた。
「これは……魔力循環構造……!?」
錬金術では非常に珍しい偶然の産物。
魔力が剣内部を巡ることで、通常より強力な切れ味と反応速度が生まれていたのだ。
アランは興奮と同時に背筋が冷たくなるのを感じた。
「もし他の誰かがこの仕組みに気づいたら……」
この剣は偶然で生まれた奇跡の一品。
同時に、狙われる危険も孕んでいた。
翌日、リカルドが工房を訪れる。
「包丁剣の改良は順調か?」
その笑顔にアランは少し安心するが、胸の奥はざわついていた。
「順調……と言いたいところだけど、偶然の産物を再現するのは難しい」
アランは説明すると、魔力循環構造の存在を明かすことはしなかった。
もし戦場でその秘密を知られれば、剣の価値が暴落するだけでなく、命の危険も伴う。
リカルドは小さく頷き、剣を軽く振る。
「偶然でもいい。俺にはこれが必要だ」
アランはその言葉に救われ、同時に強く決意した。
「偶然の奇跡を、必然に変えてみせる」
錬金術師として、自らの手で運命を切り開く――
アランはそう誓い、包丁剣の解析に本格的に取り組み始めた。
しかし、解析が進むにつれ、別の現実も見えてきた。
「これはただの偶然じゃない……材料や温度の微妙なバランスが全てを決めている」
ほんのわずかな違いで、剣はただの金属の棒にしかならない。
「つまり、完全な再現はほぼ不可能……か」
悔しさに拳を握るアラン。
だがリカルドの期待と信頼が、彼の背中を押した。
「よし……やるしかない」
アランは心を決め、作業台に向かう。
錬金術師としての現実――偶然と必然の狭間で、彼の物語はさらに動き出す。
包丁剣――失敗作の裏に隠された秘密が、
今後、アランの運命を大きく変えていくことになるのだった。




