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第10話 錬金術師としての矜持


翌日、アランは工房の作業台に向かいながら考えた。

宮廷の使者が去った後も、胸の奥には微かな緊張が残っている。


「俺は錬金術師として、何を守るべきなのか」

元宮廷魔術師としての矜持と、錬金術師としての自由――

二つの立場が、彼の胸の中でせめぎ合う。


その時、工房の扉が静かに開いた。

「アラン、今日は騎士団の依頼を断るんだって?」

リカルドの問いかけに、アランは軽く頷く。


「はい。俺の作る剣は、誰かの強制で生み出されるものじゃない」

その言葉には、強い意志が込められていた。

錬金術師として、自分の手で生み出すことこそが、誇りなのだ。


使者が求めた条件――量産、魔力循環構造の完全再現――

それは確かに錬金術師としての挑戦であり、腕試しにもなる。

だが、もしそれが強制されれば、アランの創作意欲は死んでしまう。


「偶然の奇跡も、俺の意思で形に変えたい」

アランは包丁剣を手に取り、軽く振った。

微かな振動と魔力の流れが、彼の指先に伝わる。


リカルドは笑顔で言った。

「君の作る剣なら、誰も文句は言わない。俺が証明する」

その言葉に、アランは小さく頷く。

錬金術師としての矜持が、胸の中で確かに燃えていた。


午後になり、街を歩くと人々の視線が集まる。

「包丁剣の錬金術師か……すごい噂だ」

人々の言葉に、アランは少し照れくささを覚えたが、

それ以上に、自分の道を選んだ誇りを噛みしめた。


夜、工房に戻ると、アランは再び作業台に向かう。

「偶然で生まれた奇跡を、必然に変えてみせる」

錬金術師としての誇りと信念を胸に、彼は今日も新たな挑戦を始めた。


包丁剣――失敗作の奇跡は、錬金術師アランの手で、

誰も見たことのない本物の武器へと変わろうとしていた。


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